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ロズタリア大陸2作目『その10』

『医療都市の異変』

足を組んだまま、けれど先程とは打って変わって神妙な顔つきで医療都市駐在中の魔道師の様子がおかしくなり始めている事を明かす。
「いま医療都市に駐在してる連中は、本来あたしに賛同してくれた魔道師達しかいなかった。
しかし、ここ数ヶ月ぐらいからか?
まるで別人が執筆しているかのような感じだ」
違和感を憶え、半月ほど前、密かに本部に設置してある転移部屋から医療都市の転移部屋に移動している。
見た目は以前と変わらない状態だが、自分とあまり会話したがらなかった。むしろ多忙を理由に距離を置かれる対応をされた。
仕方ないので、城下町などを散策、様子をみることにして夕方には公国に戻ってきたのだった。
そこでアーシュは、自身が立てた仮説を話す。
「城下町そのものは問題ねぇ、表向きはいつも賑わっていた。
やべぇのは駐在員に成り済ましてる連中だ」
そうしてキョロキョロ周囲を見回し医療都市の地図はないか?全員に尋ねる。
「医療都市や大陸の地図ねぇか?」
あらかじめ準備しておいたシェドが懐から二枚の地図を取り出し、みやすいよう机の上に並べる。
ぬかりなさにアーシュが呆れがちにぼやく。
「おめぇ、ホントあたしを巻き込む気満々なのな……」
自嘲気味に口元をわずかにひきつらせシェドが申し訳なさげに詫びる。
「なるべくなら私だけで事態を収拾したかったんですけどね……
先代国王に宮仕えすべく転生したものの道中で肉体を失ってしまい、役目果たせず一旦、受胎しなおす羽目になったんです。
その十年の間に連中、結構な勢力にまで成長、堂々と活動するまでになってしまいました」
風変わりな救援要請の手口にフィンが理解する。
「あぁ、だから一分一秒でも時間が惜しくて無理矢理、宝石泥棒働いてでも僕らに接触してきたんですね」
ふと浮かんだ疑問をシェドに尋ねる。
「もしかしなくても前国王の急逝は【想定外】なんですか?」
顔をあげてハッキリと肯定する。
「ええ、十年前のあの日、溺死せずに無事に国王の側近になっていればクラヴィスを密かに討ち倒すことすら【可能】だったと推測しています」
因縁ともいえる人物の名前を聞き、レイドルフがわずかに眉をはねあげる。
アーシュが軽く咳払いして、医療都市の地図を指差しながら説明し始める。
「医療都市が受け継いでいるのは女神アイラが授けた【女神の鏡|《ガレス・スフィーゲル 》】だ
こいつは死んだ者の魂を正しく『あの世』に導く光を放つ」
ごくり……
大きく息を飲み、推測を述べる。
「もし、この神器がうちらが知らねぇ間に密かに破壊されている!としたら……
駐在派遣させてる魔道師達もヤベェ!!」
医療都市に派遣中の魔道師達は戦闘向きではなく、主に医療技術の発展に貢献する為に【人体の仕組み】や【薬学】【治療魔術】に特化している非戦闘員達だった。
シェドがしれっと別の理由と危険性を指摘する。
「【生と死の境】があやふやになっている……!としたら、あるいは駐在魔道師達の豹変ぶりも納得出来るのでは??」
言われてアーシュがハッ!とする。
「そうか……冥府に落ちた連中の憑依をくらってるのかもしれねぇな!!!」
アーシュは自身の拳をぎゅっと強く握った。

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