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ロズタリア大陸2作目『その30』

第四章   【統治者達の見解】

『大捕物劇』

賢者達が立てた作戦はこうだった。
たまたま偶然、医療都市視察にきていた。ところが路地裏で平然と人体解体作業がなされている事に疑問を抱き、詳しく取材していたところ黒幕は大公家当主自ら違法な手段や手口で多くの罪なき人々の生命を奪い、私欲を満たしていたことが【発覚!】
ローズテリア王国元王太子にすら巨額の借金をでっちあげて請求!
その莫大な資金で未知の理論や技術を用いて、にわかには信じがたい【死者蘇生】実験を密かに行っていた!!
必要な道具などを転移の魔術で取り寄せた取材一行が魔術を駆使して各都市に生放送、中継!!
医療都市の当主自身や視聴中の大陸中の民達に善悪を問おう!という内容だった。

魔道師数人が、医療都市から遠く離れた人々が見聞出来る音声道具や映像を手に持って現場の状況を中継、配信する。
刀を持って襲撃してくる衛兵達は旅人に扮した近衛やシャールヴィ達が護り、応戦して撃破していく。
「僕達はあるがままをお伝えしてるだけです!!」
シェドが子供の姿をうまい具合に利用する。
「皆さんに問いかけます!
ご自分のお子さんが無惨に殺されている光景を想像出来ますか?
僕は絶対にイヤです!
その為に産まれてきた訳ではありません!!」
「このクソガキ!!!」
激怒した衛兵が黙らせようとシェドを捕まえようと試みる。アーシュがさせまい!と衛兵の横腹を勢い良く蹴り飛ばす。
「自分達に都合悪いからって子供に乱暴するよう命じてる現当主の有り様ってどうなのよ?」
ド正論に見聞中の医療都市住民達がどういう事なのか?続々と当主の屋敷に押し掛け始める。
「亡くなられたはずのタチアナ様が生き返ってる!って本当ですか!?」
「というか、大陸中で行方不明となった人達ってまさか人体実験の犠牲者ですか!?」
「旅行客が神隠しにあっていた噂も!?」
民衆達が集まり「犯罪者ー!」などと叫び始める。

バチーーーン!!
人体蘇生を行っている秘密の部屋の引戸をアーシュが勢い良く叩き開ける。
「さぁ、当主さんよぉ~!
いよいよ答えて貰うぞ!
魔道師と都市間協定を締結する前にきっちり説明して【死者蘇生】は非人道的だから絶対にやらない!!技術や知識も提供しない!!
そう伝えて合意しているはずだ!?」
コンシュテール公国の駐在本部で厳重に保管していた協定文書の写しを手に持ち、違反した事実を突き詰める。

「…………」
常時、生命エネルギーを注ぎこまなければ肉体に魂魄が繋ぎ止められない。強引な蘇生によって復活したタチアナは変わらず、ぼんやりどこともなしに虚空を眺める。そんな彼女を決して離しはしない!!
ぎゅうと力強く、けれどタチアナが痛みを感じない程度に加減して当主が誰ともなしに観念気味に【実行した動機】を白状し始める。
「お前達には居ないのか?
どんな事があっても決して失いたくない人の存在。
突然、死神によって引き離されてしまった悲しみを……
本当に理解出来ない!!
そう言い切れるんだな!?」
後半は金切り声で泣き叫び訴える当主に対して、音声と映像魔術で執務室から中継、視聴していたコンシュテール公国現当主のレイドルフ大公が冷静に反論する。
「だからといって、やって良い事と悪い事ってあるよね?」
そうして、自分ならば……と前置く。
「フジハナ卿のいう最愛の女性を突然、喪ってしまった嘆きと悲しみ……
当然、僕も最愛のエレナを失ったら……と思うと夜も眠れないし、考えたら恐ろしくて生きた心地がしないから、理解出来るよ?
ただ……それでも、僕は公国民や他国民の生命や財産を引き換えにエレナの蘇生の依頼は絶対にしない!!!
もしも、技術的に可能ならば、正式に後継者を指定した後、僕自身の死を魔道師達に請い願い、実現して貰う!!!」
統治者としての自身の信念をキッパリ断言してみせたのだった。





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