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ロズタリア大陸2作目『その25』

『すったもんだの大立ち回り』

事態をうっすら理解したアーシュが先立ち、静止する執事を聞かず、ずんずんと部屋の中に立ち入り、当主の胸ぐらを乱暴に掴み、思いきり殴り飛ばす。
「てめぇ、やっちゃならねぇ一線越えやがったな!!!!」
激怒する理由が分からない一同は、ただただ異様な光景に茫然と立ち尽くすしかなかった。扉側に吹き飛んだ当主の身体を執事達が支え起き上がらせる。
都市間協定を持ちかけた責任者であるアーシュに対して、執事が真意をおっかなびっくり問いかける。
「あの……アイリッシュ様、主人は一体、何をなさっておられる……のでしょうか??
というか、なぜ……既に亡くなられているはずのタチアナ様が生前と変わらぬお姿で???」
まだ怒りが収まらないアーシュは頭をがしがし乱暴にかきむしり魔道都市でも【禁忌タブー】とされる冥府に関する秘術を行使したことを説明する。

「うちら魔道師と都市間協定を締結する前にあたしやフィンは、こう伝えたはずだ。
医療都市の性質上、どうにかして死者を生き返らせて欲しい!嘆願されるコトもあるだろう。
しかし、それは死んで肉体から離れて天国で暮らしている魂魄を無理矢理、この世、現世に引きずり戻して肉体に留める行為になる!
絶対にやってはいけないルール、制約だと……!!」
もし、どうしても死んだ人間を生き返らせるには、一日当たり、およそ百人程度の生きた人間の生命エネルギーを対価に肉体に注ぎこみ続けなければならない。
エネルギーが途絶えると肉体に繋ぎ止めている魂魄が離れて心肺停止状態に陥る。
一通り説明終えると、殴れた当主がゆらりと立ち上がる。
「くくく……だからなんだ?
再びタチアナに逢えたのだ。
貴様が魔道都市の責任者であろうとも、最早関係ない!」
疑問を抱いたシェドが協力者の存在を尋ねる。
「妹姫を生き返らせる為にわざと部下達など派遣して神器を破壊させて、死者復活の儀式を執り行ったのですか??
だとしても、協力、加担した魔道師達にはどのように説得なさったのですか??」
死者復活は魔道師達でも最大の規約違反!
発覚次第、資格剥奪の上、故郷である魔道都市に強制送還の手筈になっている!!
術の継続、維持が難しくなる。
手順や管理手段などを問われ、配置している衛兵達に居合わせた者達を全員、口封じする命令を下す。
「ならば、問題ない。
貴様ら一人残らず、生かして返さねば良いだけのこと!
愛するタチアナの生命エネルギーにするまで……
皆の者、殺れ!!!」
叔父の豹変ぶりに思わずシャールヴィが応戦すべく、聖剣を鞘から引き抜きつつ、声を荒げる。
「正気か!?」
戦闘に巻き込まれては堪らない!
執事達など非戦闘員達が慌てて不可思議な儀式めいた秘密の部屋から駆け足で逃亡する。
旅人に扮した近衛兵達も剣を引き抜き応戦し始めたのだった。

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