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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その26

その25→https://note.com/akihi_gfl/n/nc812d18f72da

『それぞれの思惑』

あらかじめ招待状を送っていた廃太子宣言を立ち会う大司教、そして王都から本当に辞めるのか!?立ち会うためにやってきた招待客。
今後、王国はどうするつもりなのか?
知りたい貴族や有権者達、その他、噂を聞きつけてやってきた野次馬的な人々で商業都市の宮殿、大広間はごった返しになっていた。

軽くニ百人はいるだろうか?
薄桃色のドレスを着たローザが隣にいるマリーに話しかける。
「ものすごい人数ですね……」
「皆さん、それだけ殿下の今後が気になっていらっしゃるんでしょうねぇ~」
私はローザ様が故郷に帰ることで賃金が以前の値段に戻ることが不満だと冗談混じりに答える。

アンジェリカ公女は脚線美をあらわにしたドレスをまとい、大きな竪琴をご機嫌な様子で【大陸一の竪琴弾き】の才を存分にふるっていた。
仮に婚約破棄するにしても、自分が納得いく相手を見つけた時に、私のほうから一方的に破棄する。その条件をシャールヴィに確約させたことで『上々』だった。

大司教並びに招待した貴族達の目の前で、シャールヴィは正式に【王太子】としての権利を永久に放棄する宣言を行った。
その後は遠方から、訪ねてくれた労いや久しぶりの再会などを祝うパーティーで賑わいをみせていた。

「して、殿下……この後はどうなさるのですか?」
身を案じる問いかけをしてきた貴族にシャールヴィは笑って「もう殿下じゃない」快活に笑って返してみせた。
「ローズテリア王国ならばクラヴィスとかいう男が民衆やそなた達に良くしていると聞く。
任せても問題ないと俺は思ったからこそ今回、思いきった決断が出来たんだ」
その後、彼が国王を名乗るか?認めるのは王国内の貴族や学術都市の大司教、そして他国の大公当主達自身だと考えを述べた。
そうして、自身は商業都市に駐在続ける気もない。今まで真面目にコツコツ誠実に商いに励んでいた商工会所属の青年を紹介して、ひとまずの次期会長に譲るとも明かした。
老獪な貴族達は表向きにこやかに、そして和やかにパーティーはつつがなく終了した。

たった一人、ローザがいつのまにかいなくなっていることに気がついたのは深夜二時……
皆、酔って寝静まった時刻。突然、大きく地面が突きあがり、グラグラと激しく横に揺れだしたあとのことだった。
続々と被害状況の報告や負傷者が宮殿内に運び込まれてくる中、医師の一人が真っ先に駆けつけるであろう「彼女が医務室にこない!なにかあったのでは?」
そう不安げにシャールヴィに行方を知らないか?相談しにきて初めて把握したのだった。

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