テレビ

 リビングにある6人用のテーブルを僕、父母、祖父母で囲い、夕食が始まった。姉が大学の近くに下宿しているため、僕の左の席は空いている。親は共働きであり僕は部活や習い事をしているので夕食の時間が合わないことが多く、そのため家族が揃うのは久しぶりのことであった。この一家団欒の機会を逃さないように4人は話してばかりいる。僕は会話に入らず食事を優先し、質問されたときには適当に相槌を打った。
「ごちそうさま。」
1人だけ夕食の済んだ僕は食器を流しに持っていき、リビングを出て祖母の部屋のテレビをつけ、畳の上に寝転んだ。19時過ぎ、この時間帯は面白いバラエティー番組が多い。ザッピングをして見る番組を決める。迷った末、雑学を紹介している番組を見ることにした。選んだ理由は雑学を知りたいからではなく、好きな芸人が司会を務めていたからだ。しかし、番組が進んでいく中で興味を引く雑学が出てきた。それは「耳垢が湿っている人は腋臭である」という雑学だ。半信半疑ではあるが、自分が腋臭なのかを調べるために耳の中を恐る恐る触ってみた。湿っていることに気づき、不安が押し寄せ、額から薄っすらと汗が出始めた。脇を嗅ぐかどうか迷っていると、デオドラント製品のCMが流れた。「自分の臭いは自分ではわからない。」と言う俳優が、僕をさらに動揺させた。臭いが気になり、学校に行くのが怖くなった。居ても立っても居られなず、テレビを消して、急いでリビングのテーブルに戻り、何食わぬ顔で自分の席に座った。さっきと変わらない家族の様子に心が安らいだ。

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