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罪と飲み干す シャノアール調布店@調布

京王線地下化以前のこの界隈を知っている者としては、調布駅はいつ降りても「抜け感」がある。「江川亭」は既になく、「坂内」もやや移転した。

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「シャノアール」がチェーン店だからといって、「純喫茶コレクション」に入る資格がないなどと考えるのは狭量だろう。というか、私にとって「シャノアール」は、喫茶店の何たるかを教えてくれた存在である。この調布店にももちろんこれまで何度も足を運んだ。最近になって、この店には調布在住のあの伝説的漫画家もしばしば訪れていることを知った。

この日は調布での急な仕事が入った。調布駅は京王線の特急・準特急だと府中駅の隣なのだが、実は普段はあまり来ることがない。早めに着いて、「シャノアール」で仕事の準備をすることは予め決めていた。

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で、入口階段下に「ビッグパフェ」の看板が!「ビッグパフェ」は、今さら説明するまでもないが、かつての「シャノアール」の看板メニューである。私が最後に食べたのはまだ消費税が5%だった時のはずだ。「ビッグパフェ」がメニューから消えた時は、ああ、日本社会はついにここまで来てしまったのだな、とおおげさではなくそう思った。「ビッグパフェ」すら許容されない、そこまで貧しい社会になってしまったのかと。

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数年ぶりの「ビッグパフェ」はパッと見は以前と変わらないが、細部が少しずつ違った。コーンフレークは薄片ではなく粒状になっていた。刺さっているものもポッキーではなくなっていた。でもそれが何だというのだ。とにかくあの「ビッグパフェ」が帰ってきてくれた。それだけで十分じゃないか。値段だって580円のままだ。帰ってくるに際して、どうしても変わらざるを得ない部分があったのだろう。そんなことはわかりきった話だ。

俺は「ビッグパフェ」に謝らねばならないことがある。「ビッグパフェ」について友人が「でもアレってただデカいだけでしょ?」と笑ったとき、俺は何の反論もしなかった。ただ薄く笑うだけだった。あれほどお世話になっていたのに。そう、俺のそういう態度が、言うべきときにそれを軽く流し続けたこの姿勢こそが、この日本社会を衰退させた。

正直に言うと、これを食べきるのは今の自分には厳しかった。が、最後まで食べきった。グラスを傾け飲み干した。自分のこれまでの罪とともに。

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木を基調に各所に絵を配したこの広い店は、チェーン店でありながら十分に「純喫茶コレクション」に加えるに値する。「シャノアール」は私が愛した国分寺店を始めとしてその数をどんどん減らしているが、どうか末永く生き残ってほしいものだ。日本社会の多様性の証として。

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