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超えてゆくもの 瑞笑@国分寺

背脂煮干しラーメンといえば、いわゆる「燕三条系」。東京でもよく見かけるようになった。新潟県央地域出身の私も、「ふるさとの訛なつかし」みたいな感覚で、話を聞くたびに食べに出かける。が、どうも満足度はいまひとつで、「ああ、ちなみにさ、『燕三条』って名前の町はないからね」って言いたくなるような店が多い。

が、国分寺「瑞笑」の「特製背脂煮干しらーめん」には驚いた。ラーメンを食べて、久しぶりに眉間に電気が走った。

まず丼が美しい。金縁に、ほう、と感心した。スープを一口啜って、つ、燕三条……!と感動した。これですよ!燕三条!

ちなみにご主人はいわゆる「燕三条系」での修業経験はないようだ。調べたところによると、多摩地域の生んだ調布の名店「たけちゃんにぼしらーめん」や「麺屋武蔵」グループで修業したそうな。だから、ご主人はいわゆる「燕三条系」についてはもちろんご存知なんだろうけど、それをそのまま再現したようなラーメンではない。

麺も、いわゆる「燕三条系」のような極太麺ではなく、中細である。が、「燕三条系」が極太なのは、工場への出前時にのびないようにしたためといわれている。店で出すことが前提ならば、極太である必要はない。ご主人がこのスープに一番合う細さを選んだのだろう。そしてその意図は成功していると思う。すばらしい。

具もいちいち良い。チャーシューは肉々しくも柔らかい。煮卵も良い煮加減だし、メンマも、メンマ好きの私を大満足させる味と歯応えだった。ネギは、普段は青ネギも乗るそうだが、この日は青ネギ切れということで、タマネギのみ。が、そこがまた私に「ふるさとの訛」を感じさせた。

全体のバランスを最初から重視しているというよりは、麺も具もスープも、一流のactorがそれぞれに能力を発揮して全体のレベルを高く引き上げている感じ。スープを飲みすすめると柚子がけっこうあからさまに現れるが、この個性派集団の中なら、このくらい主張があった方がむしろ良い。

3日前、健康診断で、ラーメンのスープは飲むなと医師に注意されたばかりだったが、完飲してしまった。むしろそうせねば後悔しただろう。

19世紀フランスの思想家アレクシ・ド・トクヴィル大先生は、『アメリカのデモクラシー』の冒頭、「私はアメリカの中にアメリカを超えるものを見た」と書いたが、私も、「瑞笑」の背脂煮干しらーめんに燕三条系を超えるものをみた。

これはぜひ他のメニューも試してみねば。

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