Veronicaのモモチについて
※この記事はディア❤︎ヴォーカリストEvolve発売時にSKiT Dolceにて限定販売された紅蓮心中リリース記念❤︎SPECIALセット Veronicaに付属する書き下ろしSS小冊子『月刊CLIMAX-特別増刊号-』についての感想になります。
シリーズ開始から早4年、満を持してのバンドメンバー情報解禁!なのに300限ってどういうことじゃ!と界隈のオタクを様々な感情で支配したSPECIALセット(以下スペセ)の小冊子について語ろうと思います。受注生産分すら届いて1ヶ月経ってる。亀より歩みが遅い。
皆さんは2019年11月20日、オタクの感情を散々かき乱した後バンドメンバーのことは名前のみが明かされ、あとは小冊子を読むしかないという絶望的状況になった事件のことはまだ覚えていらっしゃるでしょうか。
モモチという男の性質上、他のバンドのようにTwitterのアカウントを貸して仲良しこよし♪するはずがないとは思っていましたが、まさか
これで済まされるとは。解釈一致だけど不完全燃焼というか、直前の誤爆の件で広報のPCを使っているという描写もあったので、それを活用するもできたのではないかな…?と疑問に思ってしまいました。
まあ少し不満に思う部分は置いておいて、そんな全オーディエンスの心をめちゃくちゃにした男であるモモチの所属するVeronicaのメンバー特別座談会が収録された小冊子についての感想になります。
Veronicaのメンバーといえばこれまでは個人的にWiredでモモチと揉めるエピソードが印象的でした。
「お前らみたいな顔だけの三流ミュージシャンと組まされて、オレが満足してるとでも思ったわけ?」というモモチの言葉に激昂したメンバーの一人がモモチの顔を殴り、それが原因でモモチが一人でもやっていけると言い出し――という話がWiredでは繰り広げられます。
Wiredを聴いた当初は、メンバーがモモチを殴ったのはVeronicaの功績は全部自分のおかげだと豪語するモモチの態度が気に食わなかったのだと思っていました。自分たちもミュージシャンとしてそれなりにプライドを持って活動しているのに、それを全て自分の手柄だとのたまうモモチに怒りを覚えたのだと。しかし今回スペセ小冊子に存在するある対談部分でその印象が大きく変わりました。
それはスペセ小冊子対談の最後、モモチがいつもの通り別の仕事があると理由を付けてメンバーとの交流を避け一足先にその場を離れた後、残りのメンバーによるやり取りの部分です。
オーギ、アマ、シズル、ヤマトの四人は「世間から自分たちがモモチのワンマンバンドだと言われていることも知っている。だけどそれの何が悪いのか」と言います。自分たちはモモチという光を引き立たせるための陰でいいと。想像していたのと違い、Veronicaがモモチの音楽で染め上げられていることをメンバーは受け入れるどころか開き直って自分から口にしました。
Wiredの印象が上記のようなものだったから最初はその言葉に戸惑い衝撃を受けましたが、それと同時に深く納得もしました。このメンバーだからモモチはこれから先もVeronicaのモモチとしてステージに立つことができるのだと。モモチを光、自分たちを陰だとし、Veronicaを彼の作る音楽のためにある場所だと言う彼らは、モモチが音楽を続けていくために最も都合の良い人間たちだと思いました。
Wiredでは旧VeronicaのメンバーたちがWiredと似た状況になった際、彼らはモモチの音楽が自分たちに必要なものだと気付くことができなかったとモモチ自身の口で語られていました。スペセ小冊子を見るまでそれは自分の傲慢によって旧メンバーから見限られたモモチの虚勢なのか、それとも真実なのか私には判断ができませんでした。しかしスペセ小冊子を読んだ今、モモチの言っていたことが本当だったのではという気持ちになりました。旧メンバーたちはモモチの才能を認めることが出来ず彼から離れたのだろうと。現メンバーたちは初めからモモチの持つ才能を認めたうえでVeronicaに加入し、モモチの音楽のためにVeronicaで演奏をしているのだろうと。それ故にWiredでの騒動が起こったのはモモチの言葉を受けたバンドマンとしての彼らのプライドの問題によるものでしかなく、頭を冷やした彼らはモモチの必要性を再確認し、必死で謝罪しようと家を訪れたり電話を掛けたりと手を尽くします。
Wiredでバーで彼の才能を目の当たりにしたカノジョはモモチの言葉を信じ込んでしまいました。モモチは神様で、まばゆいほどの光で、本当に他の人間など必要としないのだと。それと時を同じくして、モモチのいなくなったVeronicaで演奏するメンバーたちもモモチがどれだけVeronicaというバンドに必要だったかを痛いほど実感したのでしょう。Wiredでモモチのことを神様だと再確認したのはカノジョだけでなく、Veronicaメンバーも同じだったのだと思います。
しかしカノジョとVeronicaメンバーたちには決定的に違う部分があります。それは彼らはVeronicaというモモチの支配する場所じゃなくても生きていけるということです。彼らにはもともと個人でやっていた仕事があり、Veronicaでなくても彼らの居場所はあります。モモチとの繋がりに固執する必要は彼らにはなく、だからこそVeronicaはモモチのための場所だと割り切れる部分もあるのでしょう。対するカノジョは何も持ちません。モモチとの繋がり以外に縋りつくべきものも、必要なものもない。
その関係性の違いが、モモチとカノジョの世界をさらに二人だけのものにします。モモチをVeronicaの中心としながら、モモチだけが彼らの全てではありません。彼らがモモチに求めるのはあくまでモモチの音楽の才能だけ。Veronicaメンバーとモモチの関係は、音楽における宗教じみた崇拝心とそれ以外のことにおける淡泊さで成り立っています。そうしたメンバーたちだから、Wiredでモモチが本性を垣間見せても和解することが出来たのではないでしょうか。だって彼らはモモチとの心からの繋がりなんて必要としていないのだから。
長々と書きましたが、この私の感想は今回発売されたたった数ページの小冊子にあることに対しての感想でしかなく、今後シリーズが続いていくうえでVeronicaメンバーの実態が明らかになればまた感じ方は変わってくるでしょう。カノジョ以外との関係性に踏み込んだ今後のディア❤︎ヴォーカリストの展開が今からとても楽しみです。