【金字塔】第１部第４章　土竜作戦

金字塔
秋帽子

第1部　見つけられない女（承前）

第４章　土竜作戦

１　古代の塔

　―《首席出題者》トマルダかく語りき―
〔馬や牛、犬、猿、鶏など、人々の身近に暮らし、家畜やペットとして人間社会の一角にその住処を得た動物は多い。中には、盲導犬や競争馬、芸猿などとして、職業を持つものまでいる。通信会社のＣＭで顔を見るタレント犬（複数名により演じられているらしい）に至っては、そこらの勤め人よりも、はるかに社会的存在感が大きいのではないか。
　しかし、牛馬と同じくらいに身近な動物でありながら、基本的に家畜化されず、ペットとしても一般的でない、野生の隣人にとどまるものも存在する。たとえば鹿である。
　鹿には立派な角があり、古来神聖な生き物として尊ばれた歴史もある。顔立ちも愛嬌があり、小鹿のバンビは世界的人気者だ。しかし、養鹿は一部の国以外では普及せず、「害獣」と見られがちである。牛や山羊に比べると、人類との仲良し度が不足気味ではないか。
　例外もある。「馴鹿(じゅんろく)」すなわち人に馴れた鹿、トナカイである。サンタクロースの橇を引いて颯爽と空を駆ける、あの雄姿は、トナカイが家畜化できる鹿だから生まれたのだ。〕