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【金字塔】第3部第3章 再会

金字塔
秋帽子

第3部 宙空の住居(承前)

第3章 再会

1 異界へ

 ―《首席出題者》トマルダかく語りき―
〔茶色、という色がある。辞書的にいえば、「黒みを帯びた赤黄色」に当たる。英語でいえばブラウンだ。
 しかし、お茶の葉は青いし、紅茶は赤い。抹茶は緑で、煎茶は黄色い。麦茶は茶色だが、あれは大麦や麦芽などで作った飲料である。つまり、お茶の木を使っていない。
 では、なぜあの黒っぽい色を「茶色」というのだろうか。色々理由は考えられる。一つには、焙煎などの加工法によるものといえる。現在のように煎茶が普及する以前は、茶葉を蒸すのではなく、炒ってから干すのが一般的だった。現代でも、中国の緑茶には釜炒りのものが多い。これだと、いわゆる京番茶の黒っぽい色になる。特に、緑の茶葉が変色するほど強い火力で炒ったものが、ほうじ茶となる。
 この黒っぽい色は、お茶に含まれる渋み、タンニンやカテキンといった成分によるもので、染料として使った場合もこの色が出る。お茶の葉で着物を染めた色が、茶色の語源というわけだ。
 つまり、青や緑に見える茶葉にも、茶色はちゃんと隠れているのだ。茶色はちゃんと…ウフフ。
 また、飲料としてのお茶には、たくさんの種類がある。その色彩も文字通り「色々」だ。一口には語りきれない。たとえば、烏龍茶は半発酵茶で、基本的には「青茶」に分類される。専門店の烏龍茶は、産地にもよるが、しばしば黄色か黄褐色である。しかし、お馴染みのペットボトルのウーロン茶は茶色であろう。緑茶も、本来の黄色や緑ではなく、茶色っぽくなることがあるので、業界は長年頭を悩ませてきた。現在では変色させない技術もあるのだが、いったん見慣れた商品の色が変わると、その違和感も無視できない。「緑茶」が緑色をしているのが、何だかおかしく思えるという、皮肉な状況が生まれてしまった。
 ところで、来客にお茶はお出ししたのか。久しぶりの候補者じゃ。歓待せねばのう。〕

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30周年で六角形に!?深まる秘密が謎を呼びます。秋帽子です。A hexagon for the 30th anniversary! A deepening secret calls for a mystery. Thank you for your kindness.