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穴掘り探検ゲーム『テラリア』(Terraria)の背景世界

「Terraria Lore」:開発者から8周年記念のプレゼント

2024年1月27日
秋帽子

テラリアはいい!

 現在の地球で最も成功している陸棲の生き物は、アリだそうです。彼らのバイオマス総量は、陸棲の哺乳類と鳥類を合わせたよりも多いのだとか。
 皆さんもご存じのとおり、アリたちは地下に長いトンネルを掘り、倉庫や育児室を設け、1億年にも及ぶ長い繁栄の時代を築いてきました。
 しかし、私たち人類も負けてはいません。
 この世界のどこかに、今日も夜な夜な地下に潜り、ツルハシでカンカン、ドリルでウィンウィン、ダイナマイトでドカンドカンと、長いトンネルを掘り進めている人々がいます。
 それが、『テラリア』のプレイヤーたちなのです。

テラリアのプレイヤーは、住民たちの安全を確保するため、進んで地下に潜り、アリのように曲がりくねった巣を掘り進めてゆく

テラリアとは

 『テラリア』は、Re-Logic社(公式サイト)が開発したコンピューターゲームです。PC版、コンソール(ゲーム機)版、モバイル(android、iOS)版が存在しています(近い将来、クロスプラットフォームプレイに対応予定)。
 プレイヤーは、未知の世界にある小さな森に降り立ち、謎めいたガイドの導きを受けて、この不思議な世界を探検し、様々な謎を解き明かしていきます。
 ゲーム中にプレイヤーがやるべきことは大体3つ、「掘る」(Dig)、「闘う」(Fight)、「建築する」(Build)です。
 探索を進めていくうちに、次第に住人たちが集い、凶悪なモンスターが現れ、謎の古代遺跡が発見されます。入手できるアイテムは数えきれないほどで、中にはレトロゲームやポップカルチャーに由来する、遊び心満点のものもあります。

元ネタとしての採用率の高さから、日本のゲーム機やソフトウェア、キャラクターデザインなどが、海外のゲーム制作者に与えた影響の大きさを実感できる(マニアックすぎて、言われないと気付かないものも…)
知っていると思いますけども、「エドガー・アラン・ポー」ですからね、これは(夢枕獏〈談〉)

 また、ゲーム実況や配信者の間でも人気の作品であり、近年では特に、マルチプレイや長時間のライブ配信が注目を集めています。ゲームをプレイしたことがなくても、その特徴的な画面をご覧になったことがある方は多いのではないでしょうか。

テラリアの背景世界

 この記事では、普段、あまり紹介されることの少ない、テラリア世界の設定についてご案内しようと思います。
 今を遡ること約5年前の2019年に、テラリアの8周年記念イベントが開催されました。その際、開発元Re-Logicのスタッフより、『テラリアの伝説』(Terraria Lore)という記事が公開されたのです。
 以下、公式フォーラム(リンク)のコミュニティマネージャーである「Safeman」さん(注1)の投稿を基に、テラリアの伝説を読み解いていきましょう。

(※ 以下、メッセージの日本語訳および注釈[☆印]、画像の挿入は、秋帽子の文責にて行いました。誤訳・誤記に気付かれた方は、お手数ですが当方までご教示くだされば幸いです。なお、ゲームの仕様や訳語などは、基本的にPC版を基にしています。)

8周年記念「伝説」イベントについて

2019年5月16日 セーフマン

 皆さん、テラリア8周年おめでとうございます!
 8年という歳月は実に長く、山あり谷あり、喜びあり挑戦あり、そして私たちが愛してやまないゲームへの追加要素ありのワイルドな道のりでした。
 スケルトロンで終わるゲームとして始まった本作[☆1]は、複数の多様なバイオームにまたがる広大な冒険へと発展し[☆2]、恐るべきムーンロードとの壮大な戦いでクライマックスを迎えます[☆3]!

☆1:バージョン1.0では、ハードモードが実装されておらず、スケルトロンが実質的なラスボスだった
☆2:アンダーワールド(地底世界)バイオームのボスはバージョン1.1で、ジャングルバイオームのボスはバージョン1.2で追加
☆3:ストーリー上の最終章にあたる連続イベント(通称:ルナイベント)は、バージョン1.3で実装された

最強のモンスター(※リリース当時)を倒せるほどに成長したキャラクターは、その実力にふさわしい「伝説の武器」を手に入れる…なぜここにムラマサがあるのかわかったかね?

 私たちがここまでやってこられたのは、皆さんの素晴らしく、揺るぎないサポートがあったからです。私たちは、そのことを決して軽んじたり、当然だと思ったりすることはありませんし、これからも決してするつもりはありません。ありがとうございました!

 その記念として、この偉大なるテラリアの冒険の「何が」「なぜ」「どのように」作られているのか、カーテンの裏側をちょっと覗いてみるのも一興ではないかと思い立ったのです!
 なぜ世界の物事はこのようになっているのか?
 ドライアドは一体何者なのか?
 読めば、皆さんの熱い疑問に答えが得られるように...、そしてさらに、深い疑問が浮かんでくるかもしれませんね...結局のところ、この冒険は皆さんの冒険でもあるのだから!

◎◎◎◎ 以下、本文 ◎◎◎◎
[羊皮紙に書かれた古文書を模した、画像5点が示される]

◎1ページ目

[テラリアのシンボルである「木」のアイコン]

 テラリアの世界へようこそ。神秘と驚きに満ちたこの土地は、その成り立ちの多くが荒唐無稽な想像に委ねられてきました...けれども、いくつかの古き言い伝えが現代に伝わっています。
 ガイドの一族(オーダー、騎士団)が幾世代にもわたって語り継いできたこのわずかな情報は、あなたの旅を導き、影に潜む脅威を克服するのに役立つでしょう。
 この知識は今、勇敢な冒険者であるあなたへと受け継がれることになります。
 あなたがこの世界を救うための探求の助けとなることを願いつつ...。

謎めいたガイドの一族、その誕生は神秘のベールに包まれている…ゲームの開始直後にプレイヤーがするべきことは、彼らのために安全な住まいを建ててあげることだ

◇◇◇[太陽と惑星…宇宙の創造]◇◇◇

 はじめに、神々はすべての生き物の公正を保証するためにバランスを確立した。
 このバランスは最も重要なものであり、その成就を求めるためにはいかなる代償も惜しまないものであった。
 神々が公正の実験のために生命の複雑さをテストし始めてから、長い年月が過ぎた。
 この過程で、無数の生ける世界(ワールド)が創造され、今日のテラリア宇宙の中に存在している[☆4]。
 テラリアの各ワールドは、すべての状況を把握し、すべての生き物の思考を感じることができる知的存在である。その唯一の目的は、望ましいバランスを確実に維持することであり、しばしば暴力的なまでにそうである。
 ワールドは、あらゆる犠牲を払ってでもバランスを維持するために、多くの防衛機構を採用しており、その一部は「聖域」、「不浄」、「真紅」として知られている。

☆4:ワールドは複数生成・保存し、互いに行き来することができる

各ワールドには多種多様な生命が繁栄し、生態系のバランスを保っている

[不浄や真紅の浸食を退ける力を持つ植物、「ヒマワリ」]

◎2ページ目

[真紅に点在する「クリムゾンハート」]

真紅(ザ・クリムゾン)
 
「真紅」は各ワールドと直接つながり、集合意識を共有し、どんな犠牲を払ってもバランスを回復することだけに集中する、単一の創発的進化生物[☆5]である。
 あなたが今立っているワールド以前にも、何千もの世界がこの存在に吸収されてきた。多くの愚かな人々が、「真紅」を神のレベルまで高めるという恐ろしい過ちを犯した。怪物をなだめたり、その寵愛を求めたりするために、「真紅」に人間の生け贄を捧げたのだ。
 「真紅」は喜んでこれらの肉体を消費し、それらと一体化しておぞましい存在、意思能力を失い、盲目的に集合意識に従う者たちを生み出す。

☆5:複雑なプロセスから生まれてくる、新しい形質を持った存在(例:脳と手を働かせるだけでなく、複雑な文化・文明の発展を経て自動車や飛行機を発明する「人間」)

◇◇◇[真紅と不浄に属する2種の祭壇、
「クリムゾンアルター」「デーモンアルター」]◇◇◇

汚染地帯とつながっているらしい謎の祭壇は、強力で(…おおむねは)神秘的なアイテムを制作するための作業台でもある

[不浄に点在する「シャドウオーブ」]

不浄(ザ・コラプション)
 
「不浄」はテラリアの世界に住む人々の罪によって引き起こされる癌である。
 すべての生き物に存在する下劣な行動や思考は、各ワールドに容赦なく広がる「不浄」の成長の糧となる。
 「不浄」は触れるものすべてを蝕み、しかる後に、生きとし生けるものが味わった分不相応な快楽への罰として苦痛を与えるためだけに存在する、恐ろしい憎悪の生き物を残すことしか知らない。
 「不浄」は生命にバランスを取り戻させた後、ワールドを生命のない寂寞たる深淵に変えることを目標に、それを破壊する。

[真紅と不浄に生える植物「デスウィード」]

◎3ページ目

[聖域に登場するモンスター「ピクシー」]

聖域(ザ・ハロウ)
 
一方、「聖域」はまったく異なる性質を持っている。
 それぞれのワールドには、その世界のマスターであり核となる守護者がいる[☆6]。
 このクリーチャーが破壊されると、世界は光と闇の古代の精霊を解放し、新しい守護者を見つけるプロセスを急がせる。
 ここで「聖域」が創造され、過剰補償[☆7]的に、清浄さを極限まで高めたものとして機能する。
 「聖域」は生命の重要なバランスを侵害しようとする危険を取り除き、まるで感染症を治療するかのように、敵であれ味方であれ、中立の立場であれ、行く手にあるものをすべて殺す。
 最終的に、「聖域」は、絶え間ない侵食に対抗する役割を果たす。

☆6:残念ながら、重大なネタバレ(初見殺しともいう)になるゆえ、その正体は言えぬのだ(ヒント:人形)
☆7:欠点を克服しようとして、他の特性を過剰に高めること(精神医学用語)

ハンターチャンス!(ムテキハンマーを手にしたプレイヤーが、カメラ目線でニッコリと微笑む)
聖域は他のバイオームを浸食し、既存の生態系を上書きしてしまう危険な領域だが、一部の住民には割と好評である
新しい守護者たるもの、住民の幸福には最大限の配慮をすべきだ(危険なモンスターが多数徘徊する汚染拡大後のワールドでは、パイロンが使えると何かと便利なので)

◇◇◇[太陽]◇◇◇

 この生命、荒廃、苦痛のかけがえのないバランスを背景に、伝説の大バトルや、私たちの時代の冒険が繰り広げられるのだ。
 宇宙の無名地帯に、かつてない可能性を秘めた惑星が存在する:それがあなたのワールドだ!

さあ、冒険にでかけよう!

[クトゥルフの目]
 あなたの物語は、クトゥルフ…計り知れない力を持ち、その起源が不明なクリーチャー…が、あなたのワールドに繁栄するすべての知覚ある生命に破壊の雨を降らせ、支配することだけが唯一の目的であるかのように、はるか昔にやって来たところから始まる。

[ジャングルに生える「ムーングロウ」
…夜になると花開く、月と関係の深い植物]

◎4ページ目

[四角い頭蓋骨の形をした罠、「ダーツトラップ」または「スーパーダーツトラップ」(ジャングルにあるリザードの寺院に設置されている)…ワールドの各所に点在する罠は、過去の住民たちによる抵抗の遺物かもしれない]

 クトゥルフの進撃には誰も立ち向かえなかった。テラリアそのものが破滅の淵に立たされているようだった。
 すべての希望が失われたとき、ついに古代の種族ドライアドが、クトゥルフとの戦いに立ち上がった。
 惑星との比類なきつながりを持つドライアドは、すべての生命を滅亡から救うために団結し、テラリアの真の最後の希望となった。

謎の石像を調査したメカニックは、過去の抵抗組織が女性たちを避難させるために作ったシェルターではないかと推測している

[ハードモードの地下ジャングルに生える命の実、「ライフフルーツ」]

 ドライアドは残念ながらクトゥルフを殺すことはできなかった。
 しかし、ドライアドの力を合わせると、クトゥルフの目、骨格の一部、脳の塊を引きちぎって、クトゥルフがテラリアにさらなるダメージを与える能力を麻痺させることができた。
 最終的に、この大きなダメージによってクトゥルフは月の裏側に退却せざるを得なくなり、現在に至るまでそこに棲息し、さらなる完全征服の試みに向けて力を蓄えている[☆8]。
 ドライアドについては、悲しいことに、一人を除いて全員が死んだ......そして唯一の生き残りは、何年も何年も行方不明になっている。

☆8:ムーンロード/傷ついたクトゥルフの化身ムーンロードは、バージョン1.3で追加された公式ラスボス(まだ完全に力を回復していないため、見かけ上の巨体のほとんどの部分に当たり判定がない)

ドライアドたちに引きちぎられたクトゥルフの目は、ライフの最大値をむやみに上げる食べごろの犠牲者を探している
真紅に隠れている脳の塊をおびき出す方法を見つければ、強力な武器(設置型魔法の杖がお薦めだ)だけでなく、待望の高級なツルハシに手が届くようになる
惑星との比類なきつながりを持つドライアドは、戦闘時に防御力を8ポイントも上げてくれるばかりか、小粋なパーティージョークも使いこなす!

◇◇◇[氷の結晶?]◇◇◇

 クトゥルフ大戦から多くの時が流れた。
 しかし、ある熱狂的な狂信者(狂気の崇拝者)が率いる邪教カルトが、クトゥルフをかつての強大な力へと復活させ、世界の終末をもたらそうと計画的に動いているという噂がある。
 その努力の一環として、有名な天才…単に「メカニック」として知られている…が誘拐され、クトゥルフを再び完全なものにするために必要な部品を製造させられている[☆9]。
 この実験の成果物たちのことは、ひそひそとささやかれている:クトゥルフの臓器の恐ろしい機械的模造品であると。
 「メカニック」は彼女の仕事をほぼ完了させ、クトゥルフの破壊力を完全に回復させるために機械の脳を完成させるだけになっている[☆10]。

☆9:メカニックの救出後、世界の守護者を倒してストーリーの後半(ハードモード)に移行すると、プレハードのストーリーボスがサイボーグ化された、3体のメカボスが来襲する(ゲーム攻略上、この時期が一番きついとされる)
☆10:「クトゥルフの脳」の強化版にあたるメカボスは存在しない/真紅が追加されたのはバージョン1.2から

太陽の聖像ゴーレムを破壊することで、邪教の崇拝者たちが公然と姿を現すようになる(トラちゃんがうっかり体当たりしないように、ダンジョンの別な場所に裏口を設けておこう)
メカニックを救出すれば、もうタチの悪い罠に泣かされることはなくなる(んじゃないかな…たぶん…まちょっと覚悟はしておけ)
メカニックの天才をもってしても、「画面いっぱいを覆う巨体」という最大の弱点(いやあ、貫通武器って本当に素晴らしいですね)を持つワームの王に、無敵の力を与えることは難しかった

◎5ページ目

[ダンジョンに登場するモンスター「カースドスカル」]

 道行く旅人たちは、「ダンジョン」から漏れ聞こえる工事音や悲鳴を耳にする。
 そこは邪悪で悪魔のような死者の要塞で、「メカニック」はそこで囚われの身となり、仕事を続けているはずだ。

助け出されたメカニックは、相思相愛のパートナーと、一つ屋根の下に住まわせてあげよう!(海賊たちを自宅に招待できるようになるまでは、リフォージには金、いやとんでもない大金がかかるのだ)

 テラリア中の多くの人々が、カルト集団の虜になっている。
 ダンジョンを監督する慈悲深い「老人」もその一人で[☆11]、かつては活気に満ちていたこの街も、呪いによって全ての住人が狂い始めた…肉体が腐り落ちて、邪悪の、意思を持たない不死の下僕となった後も、生き続けることを余儀なくされたのだ[☆12]。
 何らかの介入、この流れを食い止める力、窮地を救うヒーローがいなければ、テラリアの破滅は目前に迫っている![☆13]

☆11:ダンジョンの入口で門番をしている呪われた老人は、ダンジョンガーディアン=スケルトロンのことを「私の主人」と呼んでいる
☆12:ダンジョンの下層では、多数のアンデッドモンスターが登場する
☆13:太陽の力をもつ守護者ゴーレムを破壊することで「狂気の崇拝者」のカルトが姿を現し、彼らを倒すことで始まるルナイベントの結果、ストーリー上最後のボスであるムーンロードが召喚される

中南米風の陽気なボスが、老人に見当違いの相手を見張らせている
アンデッドモンスターの全てが敵対的とは限らない(なお、テラリアの日本語化についても、プレイヤー有志の大きな貢献があったことを銘記したい)
クトゥルフの骨格から解放された老人は、慈悲深いことに今までのことはすっかり忘れ、女性好きの仕立屋として、穏やかな第二の(モテない)人生を歩む

 これが私たちの冒険につながる。私[☆14]はあなたとともに旅立つ…つつましやかな幕開けでは、忠実で神秘的なガイドによって、あなたの道が示される[☆15]。
 この世界の代理決闘者(チャンピオン)として、あなたは、その使命を果たす助けとなる、ワールドからの接触を経験することになる[☆16]。
 ワールドは、この特定の時間に、この特定の場所にあなたを連れてきた。 あなたは、差し迫る破滅の影に対して立ち上がり、テラリアのために戦うことができるか?

☆14:最初のガイド=このワールドの×××(公式設定)
☆15:ゲームの開始時には、プレイヤーとガイドの二人しかいない
☆16:ガイドと話すことで、ゲームの進行に関するヘルプメッセージが見られる/ガイド(彼は自分の正体を知らない)は、なぜ自分がそんなことを知っているのか不思議がっている

ガイドはこの世界の意思に通じており、その情報はまじめに傾聴するだけの価値はある
要するに、プレイヤーがこの世界のチャンピオンだ、やったね!

[プレイヤーの能力を恒久的に高めてくれる
「マナスター」と「ライフクリスタル」
…このアイテムでライフ上限を高めることで、
最初のストーリーボスである
「クトゥルフの目」が登場する条件が満たされる]

結論:ガイドの惑星、テラリア

 以上、ご紹介した公式情報からうかがえるように、テラリア世界の特徴は、有機体的な宇宙観にあるといえるでしょう。
 各ワールドは一個の大きな生物であり、全ての生物・環境のバランスを保つことを絶対視しています。自らの意思を持ち、バランス回復のためなら皆殺しも辞さないという、攻撃的な生態系です。
 また、汚染バイオームの一つである真紅も、全てのワールドにまたがる、一つの巨大な集合意識を形成しています。マップ上で、真紅が、大きな口を開けてプレイヤーを飲み込もうとする巨大な生物のように描かれているのは、このためだったのです。
 ムーンロードをはじめとし、オールドワンズアーミーや火星人など、強大な侵略者が外宇宙からやってきても、テラリア世界の免疫機構を出しぬくのは、容易なことではないでしょう。

 そして、これらの謎を語り継ぎ、世界の守護者を導くのが、神秘的なガイドの一族(騎士団)です。ゲーム中では、「苦労して最初に建てた家を即座に乗っ取る」仕様が災いし、便利ながらも、なんとなく軽んじられている彼ですが、実に大きな使命を背負っているようです。
 しばしば「2Dのマイクラ」と紹介される本作ですが、このガイドの存在一つをとってみても、マインクラフトとは全く別のゲームではないかと思います。分厚いガイドブック(注2)をひもとかなくても、彼に一言話しかけるだけで、テラリア世界の探検に必要な知識は十分に手に入るのですから。
 言ってみれば、テラリアとは、唯一無二の「ガイドの騎士がいるゲーム」。これからは、テラリアを他人に紹介するときには、まずそのように告げていただければ幸いです。

プレイヤーの基本的な行動は「掘る」だが、致し方無い事情により地下の閉塞感を嫌う、一部の住人の幸福度に配慮するため、空中に都市を建設するのも良い行いである(ワイバーン?知らない子ですね…)

おわりに

 いかがでしたか。
 テラリアの攻略情報や建築術に詳しい方は、たくさんおられると思います。しかし、この記事でご紹介した背景世界については、ご存知ない方も少なくないのではないでしょうか。
 すでにテラリアを遊びつくされた方も、人気Vtuberの配信で興味を持った方も、テラリア世界の成り立ち、そして「ガイドの騎士団」の神秘に触れることで、ゲームの裏に隠されたさらなる謎に思いをはせていただければ幸いです。
 私はすでに、ゴブリン軍団の東と西に意味はあるのか(注3)、はたまた地下鉄はどこから入れるのか、考え始めると夜も眠れなくなっているのです…。

【注】

1 Safeman氏の「中の人」はRe-Logic社のサイトでスタッフリストにある、Amanda Powellさんだと思われる。ゲームのエンディングに流れるスタッフロールでも、Public Relations担当としてクレジットされている。
2 マインクラフトには、冒険の心得や各バイオームについて詳しく紹介する、ハードカバーで画像も満載のガイドブックが出版されており、洋書店の棚にワンコーナーを得ている。大型書店の攻略本売り場で青春を過ごした世代の筆者としては、大変うらやましい限りである。
3 時間の経過と共に、太陽と月が画面の左から右へと横切っていくことから、プレイヤーは、テラリア惑星の北半球において、南の方向を眺めているという説がある。この説によれば、マップの右が西で、左が東ということになる(多くのプレイヤーが直感的に思うのとは逆になる)。非常に興味深い説だが、肝心のゴブリンたちは、残念ながらこうした事柄にあまり関心がないようだ。

おしまい


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秋帽子
30周年で六角形に!?深まる秘密が謎を呼びます。秋帽子です。A hexagon for the 30th anniversary! A deepening secret calls for a mystery. Thank you for your kindness.