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アメリカで起こった6日の出来事:歴史が繰り返されることがあってはならない。ミュンヘン一揆がのちのヒットラー支配へと続いたあの出来事
マルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」に次の一節があります。「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的な事実と世界史的人物はいわば二度現れる、と述べている。彼はこう付け加えるのを忘れた。一度目は偉大な悲劇として、二度目はみじめな笑劇として、と。」
マルクスがナポレオン・ボナパルトの甥によるクーデターを実際に目の当たりにしてその出来事を分析したのがこの書です。衝撃的な出来事を前に、「新しい出来事だ」と驚愕し、興奮する前に、私たちは歴史を振り返ること、その中に原因があることを見抜き、将来予測を立てる必要がある、そのことを教えてくれる短編です。
今日、書いておきたいことは、私たちもその手法に基づいて、「デモクラシー」を体現する国(そうなのかどうかは別にしておいて)アメリカ」の議会開会中に起こった衝撃的事件、それも現大統領が扇動し、議事堂の破壊行為や死者まで出す事態に発展した事件を「歴史が繰り返す」視点で見ると、さらに戦慄を覚えるという話です。
1923 Munich Beer Hall putschと呼ばれる、1923年の11月9日にヒトラーらナチス党が引き起こしたクーデター未遂事件です。3名の警官が犠牲となり、ナチス党員にも死者が出ました。すぐに鎮圧されましたが、その後10年ほどしてヒットラーが政権を掌握したことはご存知の通りです。この事件でヒットラーも逮捕、収容されましたが、のちに保釈されました。
日本でも軍国主義の色が濃くなってきた1932年に起きた5.15事件、そして1936年に起きた2.26事件です。5.15事件の時は犬飼首相が海軍将校らによって惨殺されました。2.26事件でも高橋是清大蔵大臣をはじめ、多くの犠牲者が出ました。こうした一連の事件はすぐに鎮圧されますが、これらの出来事はその後の歴史を見ても明らかなように、軍の政治的発言力を強め、文民政治の萎縮をもたらし、そしてこうした事件が起こった背景が残存する中で、当然のごとくあの侵略戦争へと繋がっていきます。
今回のことは単一事件として見るのではなく、これから10年後、あのヒットラーが最後には政権を握り、悲劇を引き起こしたことを忘れず検証していくことが必要です。
(これは夕焼けではありません。ルンドの冬の夜明けです。トランピズムの終焉となるか、それが民主主義の夜明けとなるか・・・)