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なぜなぜ木


僕に家の庭には小さなリンゴの木がある。
いつから生えているのかわからない不思議な木だ。季節に関係なくふとした時に大きなりんごがまるまると実っている。
僕がわからないこととか、なんでか知りたいことがある時に限って実ができている。
お母さんに、どうして空は青いの?と聞いても答えてくれなかった。けれど、その時についていた身を採って一口かじると、頭の中に声が聞こえてきた。
「空が青いのは、人が上を見てくれるように綺麗な色になっているんだ」
僕はびっくりと、どきどきと、わくわくが止まらなかった。このリンゴの木は僕の知らないことを教えてくれるのかもしれない。
それからいくつもりんごをかじった。その度にりんごは答えてくれた。りんごの木が僕の1番の友達だった。

小学生になって、初めてできたクラスメイトにうちのりんごの木のことを話したら笑われてしまった。
「そんなのうそだよ」
「なんでりんごがしゃべるんだよ」

僕は家に帰り、ひとつだけ実っていたか細いりんごを採って、ひとかじりした。
「どうして君はなんでも答えてくれるの?」
りんごは何も答えてくれなかった。
それ以来りんごは実らなくなり、最後には木が枯れてしまっていた。

半年後、りんごの木のことも忘れかけていた頃、お母さんから、弟ができたよと言われた。
僕は驚きと、興奮と、期待に溢れた。
お母さんは優しく微笑んでいて嬉しそうだった。

なぜだか弟にあのりんごの木のことを教えたくなった。庭を見ると、枯れた木のあった土から小さな芽が出ていた。

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