ESSMA SUMMIT 2020 レポート
1月21日(月)-22日(火)にハンガリーはブダペストのGrupama Arenaにて開催されたESSMA SUMMIT 2020に参加してきましたので、レポートします。
ESSMAはスタジアム・アリーナビジネスの知見をESSMA会員向けにシェアするプラットフォームを運営する会社です。ヨーロッパの名前を冠していますが、北米のスポーツビジネスも網羅する、欧米の最新のスポーツビジネス情報が詰まっています。最新のスタジアム・アリーナビジネスの事例やテクノロジーをシェアし、同時に協会、クラブ、スタジアム・アリーナ、スポーツ関連会社のネットワークを構築する「SUMMIT」を年に1回開催しています。
ここでシェアされる情報は日本のスポーツビジネス、スタジアム・アリーナビジネスにおいて”有益情報”が詰まっているので、是非スポーツ関係者には知ってもらいたいです。
ESSMA会員はスポーツ組織運営会社、協会、スタジアム・アリーナ運営会社、スポーツビジネス関連会社等、年会費を払えば参加可能になっています。
ESSMAとは?
簡単にESSMAについて説明させていただきます。
ESSMAはthe European Stadium & Safety Management Associationの略称です。
現在ヨーロッパ、アメリカのスタジアムやスポーツクラブ、スポーツ協会、スポーツビジネス関連会社が500近く加盟する情報サイトです。
特筆すべきは、サッカーに関しては5大リーグ以外のヨーロッパの各リーグとも提携していることで、上位~下位に至るまでの情報をラインナップしていることです。また、サッカー以外のスポーツにも対応しています。
代表的な加盟組織
協会組織:ブンデスリーガ(ドイツ)、リーガエスパニョーラ(スペイン)、ジュピラーリーグ(ベルギー)、エールディビジ(オランダ)等
クラブ・スタジアム・アリーナ:レアルマドリード、バルセロナ、ユベントス、パリサンジェルマン、アーセナル、アヤックス(ヨハンクライフアレナ)、アントワープ、コペンハーゲン、STVV、オリンピックリヨン等
https://essma.eu/members/stadiums-and-clubs
こちらから加盟組織を確認いただくことができます。
充実の会員専用サイト
(ESSMA knowledge platform・・・会員専用サイト)
この会員専用サイトでは毎月最新のレポートがアップデートされたり、ESSMAで企画されたスタジアムツアーのレポートや、最新ニュースを詳細にまとめてくれています。そこでは、
-スタジアム・アリーナの建設・開発計画の情報
-スタジアム・アリーナの運営サービス、システムの情報
-スタジアム・アリーナのチケットシステムの情報
-スタジアム・アリーナのITシステムの情報
-スタジアム・アリーナのファンサービス・ホスピタリティの情報
-スタジアム・アリーナのピッチ・コートマネジメントの情報
を見ることができます。
スポーツジャンルも、主にはサッカーですが、それ以外でも
ラグビー(ヨーロッパ)
野球(アメリカ)
バスケット(アメリカ)
アメリカンフットボール(アメリカ)
アイスホッケー(アメリカ)
など、取得可能な情報は多岐に渡ります。
下記にESSMAのHPのnews記事の翻訳をまとめています。
充実のイベント・ワークショップ・スタジアムツアー
ESSMAではスタジアム・アリーナビジネスに関するワークショップや、スタジアムツアーを定期的に開催しており、ESSMA会員であれば申し込めば誰でも参加することが可能です。
また、協会関係者、コーポレートパートナーは自分たちでESSMA会員向けにワークショップを開催することも可能です。
特筆は「ESSMA SUMMIT」と呼ばれる、年に一回開催されるイベントで、ここにはESSMA会員が一同に会して、最新のスタジアム・アリーナビジネスの講演や情報交換、ネットワーキングが行われています。今回こちらをご紹介しています。
ESSMAスタッフへの質問
このESSMAサービスのすごいところは何と言っても、ESSMAスタッフへスポーツビジネスのナレッジについていつでも質問ができることです。自分たちが知りたいスポーツビジネス、スタジアム・アリーナビジネスの情報を質問すれば、彼らの持つデータベースを参照し、1週間~2週間で回答をもらえます(もちろん質問によります)。
ESSMA SUMMITレポート ①概要
ESSMA SUMMITの概要をご紹介します。こちらのドキュメントは、サイトからダウンロード可能です。スライドで共有もしておきます。
ESSMA SUMMITレポート ②スタジアムツアー
21日の午前中はGrupama Arenaのスタジアムツアーが開催されました。
Wikipediaの日本語情報はあまり充実しておりませんが、ハンガリーの首都であるブダペストに2014年に建設されたスタジアムです。首都をホームタウンとするハンガリーリーグの名門、フェレンツヴァーロシュTCが本拠とするスタジアムで最新の設備を備えたスタジアムの1つとなっています。
まずは、ピッチレベルの見学を実施し、現職のグリーンキーパーのマネージャーからピッチコンディションの維持について説明がありました。
コンサートも実施するこのスタジアムの芝の管理は、寒冷な気候も相まって非常に難しいものとなっているようです。
メインエントランスの中には、トロフィーなどを飾ったミュージアムも設置されています。
ピッチはこんな感じです。スポンサーボードが全部緑色って所がどうやってるのかちょっとわからない。
また、最新のオートメーション化された芝生の養生・管理機器の製造会社から機器についてもプレゼンがありました。この機器はLEDライトの色相や強さを芝生毎に調整可能で、一度セットしてしまえばオートメーションで芝生の日照管理を行ってくれるものです。
次に、ロッカールームとアップルームが紹介されました。
ちょっと見にくいですが、ピッチ上にアルミニウムの板を敷き詰めてコンサート会場にするという説明です。
2階には大きなラウンジがあり、今回のようなイベントを開催するのに十分なスペースが用意されています。ここで、スポーツビジネス関連会社の各ブースが出展され、ネットワーキングが活発に行われていました。
最後に4階では、最新の顔認証によるチケットゲートの紹介が行われていました。GDPRの対応ももちろん考慮しています。3階・4階はVIPエリアになっていて、BOX席が設置されています。
最後にスタジアムの地上階のフードショップでのオペレーションの説明と、テロ等の犯罪対策のための移動式バリケードの説明がありました。
ESSMA SUMMITレポート ③キーノートプレゼンテイション
スタジアムツアーと昼食のあとは、参加者全体に向けたキーノートプレゼンテーションがありました。
-ESSMA代表からESSMAの概要と成長についての説明
-ハンガリーサッカー協会の国際部責任者からの挨拶
-ESSMAのマネジメントディレクターから最新のスタジアムマーケティング事例等の説明
-LEGENDSのディレクターから今まで手掛けた世界中のスタジアムビジネスの紹介や未来のスタジアム建設計画の紹介
-Tomorrow landのリスクマネジメント責任者から、巨大なコンサートイベントの運営の裏側の説明
-ESSMA SUMMIT 2021の開催地の予告(ユベントスのアリアンツスタジアム)
特に印象的だったのは、LEGENDSの説明とTomorrow landの説明でした。
LEGENDSからはアメリカのSOFI Stadiumの将来設計の説明があり、その規模の大きさや巨大なインフラ投資の概要について情報がシェアされ、特にアメリカにおけるスタジアム投資の大きさの一旦を垣間見ました。
Tomorrow landは世界最大級の音楽イベントで、その巨大イベントをいかにして運営するか、ということについてリスク管理の観点からナレッジのシェアがされました。巨大な会場を借りるための自治体や警察との連携、統制された監視体制、騒音対策など、多岐に渡るトピックが話されています。
ESSMA SUMMITレポート ④個別セッション(スタジアムオペレイション)
夕方最後のセッションは選択式の個別セッションで、私はスタジアムオペレイションのセッションを選びました。そこでは主に、「スタジアムビジネスにおける持続可能なビジネスモデル(環境配慮の運営事例)」についてのナレッジシェアとなりました。
-Grupama Arenaの運営担当者から、スタジアムの太陽光発電の利用や、リユースカップの導入について説明
-LIFE TACKLEより、環境配慮の取り組みの推進事例について説明
-24/7 Softwareというスタジアムセキュリティの開発・運営会社より、自社システムを用いたスタジアムセキュリティの事例紹介
UEFAやFIFAなどもスタジアムやクラブ運営における環境配慮を推奨しており、ヨーロッパの各国自体でもリサイクルへの意識の高まりや法律の制定など、環境に配慮した持続可能なビジネス運営が求められるようになっています。
ESSMA SUMMITレポート ⑤個別セッション(ホスピタリティ・チケット)
最終の22日は午前中の個別セッションの選択となりました。私はホスピタリティ・チケットのセッションを選択しました。
-フランス1部クラブのオリンピックリヨンからの事例紹介
∟試合当日前後からのマーケティング戦略とそれを支えるシステム紹介
-フランス1部クラブのFCメスからの事例紹介
∟スタジアムのリノベーションプランの説明
∟スポンサー向けのVIPエリアのプランで、商談利用の重要性に応じてVIP席のランクをフレキシブルに変更可能にする新システムについて説明
-iXpoleからVIPエリアの決済・経理システムの導入事例の説明
∟ホスピタリティエリアのオペレーションの効率化・質の向上について自社サービスを説明
-Otto Beisheim School of Managementより、ブンデスリーガにおける観客のNo show behaviorについての調査結果について共有
ESSMA SUMMITレポート ⑥ネットワーキング
ネットワーキングもこういったイベントの魅力の一つです。出席者名簿は参加者には公開されているので、こちらから目的をもって特定の人にアクセスすることもできますし、先方からアプローチしてくれることもあります。今回、お話をできたのは下記のような会社やクラブ関係者でした。
-顔認証システムによるスタジアムセキュリティ会社
-顔認証システムによるチケットアクセスコントロールのシステム会社
-中国の大手通信会社
-VIPエリアの経理システム提供会社
-スポーツマーケット分析のコンサルティング会社
-フランスの1部クラブ
-スペインの建築事務所
スポーツ関連会社側はクラブや協会関係者への売り込み、クラブや協会関係者は今持っている課題を解決できるようなテクノロジーやサービスソリューションを持っているスポーツ関連会社とのリレーション作り、という形でお互いにとってWin-Winなビジネスマッチングが可能になっています。
最新の知見を入手するだけでなく、実際にビジネス上の課題解決のパートナー探しという側面も、こういったイベントは持ち合わせています。
また、ビジネスを抜きに、初日にドリンクセッションが夜に設けられているので、そこで飲み二ケーションから交流を図ることができます。オランダ人、イギリス人、イタリア人、イラン人、ベルギー人など多種多様な人々とスポーツ談義ができたことは非常に有意義な時間となりました。
まとめ・所感
ESSMA自体が素晴らしいサービスで、世界のスポーツビジネスの知見の共有が可能です。現状は欧米に限られていますが、これからアジアにもネットワークは広がっていくでしょう。特に、日本の観点から見ると欧米の事例を即座にリーズナブルに参照できるのはかなり大きいですし、実際にビジネスパートナーを探すことも容易です。わざわざ欧米への出張を企画する必要性が減りますし、直接のネットワークがなくともESSMAを通じて欧米の知見・技術をすぐに取り入れることが可能です。さらに、ここからネットワークを構築していくこともできます。
欧米ではいくつかこういったスポーツビジネス関連のサミットが開催されています。日本でも「ナレッジシェア」を行うカンファレンスやイベントもでき始めており、スポーツビジネスの知見をよりグローバルに共有できる仕組みがもっと広がっていけば非常に有意義であると感じます。
前回記事で書いたWFSはよりマーケティング・競技に特化したイベントですが、ESSMAはセキュリティ・ファシリティにより特化したイベントになっているので、仕入れたい知見やテクノロジーに応じて使い分けるというのが良いように思います。
こういったイベントに日本から参加する人は少ないので、「世界にキャッチアップする」のであれば、積極的にこういったイベントには顔を出していきたいと、この1年で学びました。
ここの橋渡しなんかができると良いなと思っています。
ESSMAに興味のある方・仕事依頼のある方はこちらへ
ESSMAについてのより詳しい情報やお問い合わせのある方は下記までご連絡をお願いいたします。またその他に、スポーツ全般のビジネスについてもお手伝いできる範囲でお手伝いさせていただきます。
Office KOOU
代表:飯塚晃央
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