2/17(金)社説
経済産業省によると、米国の要請を受け、先端半導体の製造に不可欠な装置の中国向け輸出が規制される見通しである。そもそも輸出規制の始まりは冷戦終結後に遡る。主要国は軍事転用可能な技術の拡散を防ぐため、輸出管理の枠組みを構築してきた。しかし、米欧日と中露などの対立が強まっている現在、貿易の枠組みが機能しにくくなってきている。
日欧米が懸念しているのは、AIの性能向上により中国の軍事技術が高度化することである。現在のデジタル社会では多くの先端技術が民生、軍事区別なく使用されている。
もちろん、安全保障上の理由という明確な根拠を持ち、自由貿易の規範に則って行われることが前提であるが、中国はこれを不当としてWTOに提訴している。
一方で日本から輸出される製造装置の約3割は中国向けであり、輸出規制は日本の企業や投資家への影響が大きい。経産省はどのようなタイプの装置を規制するか今後詰めるようだが、保護主義への懸念を拭うには国民への説明と透明性が欠かせない。
米中のはざまにある日本に求められるのは、通商秩序を再構築する重曹的な戦略を兼ね備えた姿勢である。
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