3/4(土)社説
国が長崎県で実施した干拓事業について、諫早(いさはや)湾を閉め切った潮受け堤防の排水門を開けるかどうかの約20年にわたる法廷闘争が事実上決着した。
堤防が閉め切られてから四半世紀がたつが、有明海では赤潮が頻繁に発生するようになり、養殖ノリや高級二枚貝タイラギの不漁を招いた。そのため漁業者は開門を求めていた。一方で干拓地には野菜栽培のために大規模な区画の農地が整備され、営農者が定着している。当初開門を命じる判決と禁じる司法判断が割れていたが、今回、開門を命じた判決の効力をなくす判断が確定した。
漁業、農業それぞれに就く地元民には非がないにも関わらず、対立する状況に置かれ、自治体にも分断が生じた。政府は、漁業振興のための基金を創設し問題を解決したい考えだが、漁業者の反発が強く分断修復に至っていない。国策で生じた分断の修復は政府の責務である。政府はこの責任を重く受け止め、解決に向けた取り組みを主導しなければならない。
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