苦しみを生み出す人間の脳のはたらき〜無(最高の状態)〜
苦しみは消すことができるのか?ってことを「無(最高の状態)」から学んでいまして,今わかっていることをまとめますと,以下のようになります.
人間が苦しむのはなんでなの?→ 自己があるから
自己ってなんなの? → ”私”という感覚. 脳科学的に見ると,機能の集合体にすぎない
苦しみの原因である自己は消すことができるの? → 自己は消えたり,生まれたりしているので消すことができそう
前回までの記事はこちらを御覧ください!
前回までで自己を消すことができそうっていう話になったんですが,その方法について具体的に考えるために,今回は自己が何からなっているのかを書いていきます.
参考文献は前回と同じく,「無(最高の状態)」です.
自己はなにから作られるのか
私達は自分自身を”私はこういう人間だ”と,どのように決めているのでしょうか?
実は,これには私達の脳がもつ,物語をつくる機能が関わっていたんです.
*ここでは,物語機能と訳します.
物語機能とは,入力された情報に対して,過去の記憶からイメージをつくり,次にどのような物語が展開するか考えるというものです.
物語機能が起きている例を紹介します.
学校に行くために玄関のドアノブに手をかけたときを想定します.
ドアノブに手をかけた瞬間,脳は「扉の向こうには階段がある.」「ドアノブは普段どおりに開き,自転車に乗って学校に行くだろう」などの物語が作り出されます.
ドアを開くと,目や耳から入ってきた情報と物語データの比較が行われます.
現実世界から得られたデータと照らし合わせ,物語データに間違いがないかチェックされます.
ここで,物語が現実の情報と同じならば,外界から取り込んだ情報を使わずに,脳が作った物語を採用します.
つまり,目や耳から入ったデータをほとんど使うことなく,脳が作った物語を”現実”として体験するってことです.
ちなみに,この物語機能が人間に生まれたのは,私達が日常をスムーズにおくるためです.
物語機能がないと,初対面の人に合うたびに,「この人には挨拶をすべきか?」などと考えないといけませんし,信号を見るたびに「赤信号は渡るべきか?」と迷ってしまいます.
では,この物語機能でなぜ自己ができるのかについて,次に話していきます.
自己ができるメカニズム
自己は自分を”私”だとする機能の集合体に過ぎない.
その機能には,人生の記憶,性格の要約,感情の把握などがあります.
どれも自分だと思う原因です.
これらの機能がすべて物語機能によるものだということです.
人生の記憶
「高校受験に受かった」や「3年前に遊園地に行った」など,私たちの脳に保存された出来事のことです.
この機能のおかげで,私たちは過去と現在の自分が同じ”私”だと認識できています.
性格の要約
「私は内向的だから大勢のパーティは苦手だ」や「私は大雑把なので締め切りを破る」など,私たちは過去のデータから自分の性格を判断しています.
そして,そのデータをもとに,「”私”はこういう人間だから,こういう行動をとる」といった物語を作ります.
感情の把握
「私はプレゼンで答えられなくて恥ずかしい」や「シャワーを浴びたら気持ちいいい」というストーリーを作ります.
このように,私たちの自己は,脳が持っている物語機能によって作られていたのです.
物語は消せるのか
私たちはなにかを感じたり,もしくは何もしていないときでも自動的にこの物語機能がはたらきます.
そして,私たちは脳が作った物語を唯一の現実だと思い込み,それに気づくことなく生きているのです.
現実だと思いこんでいるんだから,物語を消すのはむずかしいのでは?とおもうんですが,実は穴があったんです.
それは,物語は正しくなくても,かんたんに塗り替えらることです.
もし自分ではいいと思っていた服について,友達に「ダサいよ.」と言われると,「この服はダサいんだ.もう買わない.」ってなりますよね.
この簡単に塗り替えられる(柔軟性が高い)ってのが,物語から苦しみをうまないヒントになりそうです.
その具体的な方法については,さらに読み進める必要がありそうです.