息子ががんになった⑤
4週間が経った。
ゴリラ、また太っている。人はこんなにいきなり太れるのか。自由自在か。
おまえ、治っても走れねえよ。
注射の効果はあるようで、すこし骨が増えてきているようだ。先生は相変わらず淡々と、急がなくていいんです。と優しく息子を諭している。座ってできる筋トレのレクチャーもしてくれる。はっきり言っていいよ先生、おまえ太りすぎだろバカかって。
小さな娘が2人いて共働きの我が家は往復700キロの通院で疲れからの喧嘩が増えていた。
自分の子供じゃないから。
真ん中の子は産まれたとき少し弱くてNICUに長い事お世話になった。
自分の子供ならやるくせに。
傷付ける為の言葉しか出てこない。
最悪だ。
まてよ。あれ?どっかで見た。
実家だ。
私の兄は産まれつき体が弱く、今夜が山田が幾度もあり、母はいつも兄につきっきりで不在だった。
私と姉は、飲んだくれのばあちゃんに毎日喫茶店でご飯を食べさせられていた。
父は兄の病気から全力で逃げていた。
当然家は緊張感満載。親子の会話なんてなくて、全てをお金で解決していた。私達はお金をかけて放置されていた。
稼ぎがあるだけ父はマシだ。
ふわふわのホットケーキも、母には到底作れない歯が溶ける程甘いフレンチトーストも、それはそれで楽しかった。
思い出して自分が嫌になる。
娘達はどう思っているんだろう。
ごめんね。あなたたちは何も悪くない。
我慢させてごめん。
ゴリラは相変わらず注射に文句。
今までで1番痛い。ボジョレーか。
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