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原点にして頂点:劇場版名探偵コナン『時計仕掛けの摩天楼』

毎年この時期になると今年の映画の情報がどんどん公開されていきますね。
今年は長野県警がメインとのことですが、メインビジュで安室さんがいるのは意外でしたね。
年々酷くなるメインヒロインへの扱いが通常化してきてる気がします。

さて今回は原点にして頂点:『時計仕掛けの摩天楼』についてお話ししていきます。

登場キャラクター

毛利家
・江戸川コナン
・毛利蘭
・毛利小五郎
警視庁
・目暮警部
・白鳥警部補(本作にて作品に初登場)
少年探偵団
・歩美
・光彦
・元太
その他
・鈴木園子
・阿笠博士

上記の中でもメインで描かれていたのは、やはり毛利一家。
園子にいたってはデパートで蘭が新一へのプレゼントを選んでいる時くらいにしか描かれていない。

主人公とヒロインの役割

今回の映画において、各キャラクターにはそれぞれ役割が与えられている。
主人公であるコナン・新一は、犯人である森谷帝二との推理対決。
「モリアーティー教授」を連想させる名前を持つ森谷帝二は、視聴者からすればどうみても犯人だが、私たちには彼が犯人である根拠を探すことができない。
どうやってコナンが彼を犯人だと名指しするのか、彼の仕事である探偵の腕を見ることができる。

対してメインヒロインの毛利蘭。
彼女は呑気に新一の誕生日を祝うべく、最初こそはコナンと行動を共にして森谷帝二のパーティに参加しているが、それ以降はコナンがプラスチック爆弾で入院しようが登場すらしない。
しかし、物語の後半、最高のクライマックスを演出するために彼女は何も知らず映画館へ向かう。

原作者の遊び

古畑任三郎シリーズ「最初から犯人がわかっているが、トリックがわからない」
原作者がたびたび古畑任三郎のネタを漫画でも引用していることから、彼が古畑任三郎が好きなことは明白である。
さらに自身初の映画化される作品に、オリジナルキャラクターとして白鳥警部補を登場させている。
彼の見た目は古畑任三郎役の田村正和そのものであり、白鳥警部補の下の名前は任三郎だ。

名探偵コナンファンには、ライト層から熱狂的な層までミステリー好きが多い。
そんな彼らが「森谷帝二」と「白鳥任三郎」という二つの名前を聞けば、すぐにどういう展開になるのかが予想される。

しかし、それでは二番煎じ。パロディと言われればまだいい方だが、下手したらパクリ映画とまで言われそうだ。
『時計仕掛けの摩天楼』がコナンファンの中で今も愛されている理由は、クライマックスのあのシーンしかない。

原作者の強いこだわりを見事に反映させる本作

探偵として仕事を全うする主人公と、彼の帰りを健気に待ちそれゆえに犯人に目をつけられてしまい狙われるヒロイン。
あまりにも美しすぎる対比で素晴らしい物語展開である。
基本的に名探偵コナンという作品は、昭和気質で、今の時代では男尊女卑と捉えられそうなセリフの登場や、男と女を明確に分けている節がある。
そのため、名探偵コナンという作品は、「ヒーローは江戸川コナン・工藤新一であり、ヒロインは毛利蘭」と断定された役割が存在しており、他作品で見られる誰がヒロインになるかわからないというファンが面白おかしがる状態がない。
後に登場する灰原哀についてはラブコメ好きな原作者が登場させたラブコメのスパイスに過ぎない。
(正直サブマリンについてはやりすぎでは?と思ったが、あの原作者だったら「あんまり気が進まないけどまあいいんじゃない?キスくらい。新一知らないし」というテンションでOK出してそう)

初めての映画作品であり、原作者が目指す「ミステリー✖️ラブコメ」を実現させるためには、ヒーローが探偵があるゆえに狙われてしまうヒロインを何がなんでも守る展開を作る必要がある。
似たような展開だと『迷宮の十字路』が挙げられるが、登場キャラクターが絞られているおかげか、あの作品よりもこちらの方が完成度が高い。
これほどシンプルでわかりやすい二人の役割が明確化されている作品を、同じこだま作品でもみたことがない。

そしてあの扉越しに蘭が新一に誕生日を祝うシーン。
新一は爆弾を解除し助かる方法を模索する中、蘭だけはずっと新一のことを考えていることがわかり、いつもひとりで真実や正解を突き止めようとする新一が、そんな蘭に全てを託そうとする
これぞ原作者が理想とするカップリングのように私は感じる。

赤ではなく青を切らなくてはならないことがわかり、慌てて新一は蘭に伝えようとするが、ビルは崩落を続けさらに救助隊員によって引き離され、ここで新一はコナンに戻る。
最終的に蘭は自らの選択で青を切り、二人は無事に地上で再会するが、蘭は再会してるとは思っていない。
それがとても切ないが、蘭の行動によって「愛は勝つ」というシンプルで非現実的な理想論がこの事件を終幕させたのだ。
この様子では新一は一生蘭に敵うことはないし、蘭も蘭でそれに気づくことはない。

この映画の後半は、もはや二人がお互いのことを信じお互いを愛してることを証明するために作られている。
とても今風の恋愛ではないし、どうみたって効率も悪い

だがこれが名探偵コナンにおける「ラブコメ✖️ミステリー」の定義であり、原作の漫画でもずっと変わらないスタンスのように感じる。

今後の映画について

キャラクターの増加に伴い、キャラ人気ゆえの映画制作になっていることも重々承知だが、名探偵コナンの1ファンとしては、どうかこの定義をずっと守って映画制作を進めてほしいと思う。
そして絶対に忘れないでほしいのは、名探偵コナンはミステリーも面白いということ。
ラブコメやキャラ人気のある作品はいくらでもある。
この作品にはミステリーがなくてはダメだ。ミステリーとラブコメを並列させて初めて名探偵コナンは出来上がるのだ。

長野県警。
なんだか最近急に人気になってきて嬉しくもあり、また空虚な気持ちでもある。
とても楽しみにしている。


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