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【元夫のこと③】変わってしまった関係

元夫とは、息子を産んでからすぐにセックスレスになった。恥を忍んで私から声をかけても「疲れているから」と断られてしまう。

ありがちな話ではあるが、断られた翌日、そうした映像を見ているところに居合わせた時はショックだった。息子を習い事に自転車で送り届け、忘れ物を思い出し、大急ぎで帰宅した時のことだった。疲れてセックスはしたくなくても、そういう映像は見たいものなのか。ある種の諦めとともに、それ以来、私から声をかけることはしなくなった。たまたまその時期は、お互いの気持ちのタイミングが合わなかっただけなのかもしれない。しかし、断られるかもしれない恥ずかしさに堪えて声をかけることも、相手の申し訳なさそうな顔を見ることも、もう、辛かった。

先日、元夫は優しい人だ、と書いた。

「もし、私があなた以外の人を好きになったらどうする?」と何度か冗談のように聞いてみたことがある。その度に「自分が身を引くよ」「好きにしたらいいよ」と言う夫。「もし離婚したいって私が言ったら?」「しょうがないよね。この結婚は、君が頑張ってくれたからできたんだし」。

そんな優等生のような、飲み込みの良い返答がほしいのではなかった。
「この先、自分以外を好きにならないでほしい」「そんなことは悲しいから言わないでほしい」。冗談でもそう言って、駄々をこねてほしかったのに。

相手に疑問を投げかけて愛情を測るなんて面倒くさい女だと思う。

しかし結果的に、その言葉たちはその後の私の行動の根拠になっていく。夫の本当の性格について考えたり、その時の心情について想像したりせず、普段のそっけない態度やセックスレスであったこともあわせて「夫はもう私に興味がない」と思い込んだ。

昨年の春に書いた日記。

「食卓の椅子に足を立て、出たお腹にスマホを乗せて動画サイトを見ている彼を見てため息をつく。昔はおしゃれなフランス映画や単館系の映画を教えてくれていたのに、今は下世話なYoutubeチャンネルを見て大笑いしている。一緒にベッドに入ると、いびきがうるさく、酒くさくてたまらない。汗をかいてもなかなかシャワーを浴びないから、臭いがきつく、近寄るのもつらい。もはや、彼が私のことをどう考えているかはわからない。息子の話や仕事の話をしても上の空だし、これでは家庭内別居だ。私が彼に対して思っているように向こうも私のことをただの『おばさん』だと思っているだろう。そして、もう女としては見ていないだろう。あんなに情熱的な恋愛の末に結婚をしたのに、この10年で変わってしまった関係が、思いが、本当に悲しい。」

中学に進学した息子が友達の大学生のお兄さんに影響を受け、一人暮らしに憧れるようになった。そのためにも地方の国立大学へ行きたいのだという。夜、息子が寝た後、元夫にその話をしながら、もし息子が大学で一人暮らしをするのなら、それを機に別居したいと打ち明けた。
その言葉を聞いた夫は、笑顔を浮かべて穏やかにこう言った。
「それがいいね。こんなに気が合わない二人だから」。

その日以来、私は夫との別居を心の支えに生きていくことになる。


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