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大切にできなかったもの

すっかり書くのをやめてしまっていた。
今読み返したら、昨年の夏に私はこんなことを書いていたのかと驚いた。そしてすぐ、確かにあんなことを思っていたと胸が熱くなった。やっぱり、日々の思いは書き記しておくものだと思う。

離婚からもうすぐ1年。相変わらず定期的に「元家族」の三人で会う日々が続き、恋人とも穏やかに付き合い続けている。

先日、机の引き出しの整理をしていて、ペンギンのかわいらしいブローチを見つけた。元夫が私にプレゼントしてくれたものだ。
5年ぐらい前になるだろうか。もらった時のことを今も覚えている。
私は「ありがとう」と受け取りながらも、内心では「また無駄遣いをして」と思ったのだ。

元夫は、このブローチを見かけてペンギン好きな私のことを思い出し買ってくれたのだろう。しかし私は一度も身につけることなく、引き出しの中にしまい込んでしまっていた。

あの日、確かに元夫が私のことを想い、くれたペンギンだった。

素直に喜んで受け取れなかった後悔と、引き出しの奥にしまい込んで取り出しもしなかったことへの申し訳なさが心に押し寄せる。

離婚前の話し合いで彼は「僕があげたものを、君はそんなに喜んでくれなかった」と話していた。もともと人にプレゼントをするのが好きな人だった。結婚してからは、そんなところさえ私は「家計が厳しいのに外にはよい顔して」「もらった人の気持ちも考えないで自己満足」などと思っていたのだ。

深夜に一人、このペンギンを掌に入れて思う。
あの日、元夫がくれた愛情を。
あの日の私に、足りなかったものを。

今の恋人とうまくいっていないわけではないし、元夫への愛情はすっかり薄れている。もはや、やり直したいとも、やり直せるとも思っていない。
だけど、あの日確かにあった愛を思い、何かを失った実感だけは得て、涙を流しながら、一度も身につけなかったペンギンを握りしめて眠った。

あの時大切にできなかったものを、大切にしていこうと思う。

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