Day.13 ギア効果
ボールフライト、スイングトゥルー(スイング統計データ)に続いて、次に押さえておきたい知識は、「ギア効果」です。
みなさん、ゴルフ場や練習場で「バナナフック」を見たことありませんか?
バナナを吊るすフックの方ではなく、ゴルフボールの飛び方に関する用語です。
バナナフックの秘密
とあるゴルフ場にきたAさん。
そのAさんの1番ホール、ティーショット。
後ろの組の視線も感じるなか、握りしめたドライバーで放つ第一打。
「ナイスショット!!」
打った瞬間、ボールが真っ直ぐ方向に飛んでいくのが見えた。Aさんは一瞬、「ヨッシャ」と心の中でガッツポーズ。
しかし、次の瞬間、真っ直ぐ飛び出したはずのボールは急激に向きを変え、左の林のなかへ…。
チーピンは主に、左方向に飛び出して左に曲がるような球筋を指しますが、今回は真っ直ぐに飛び出た球が、急激に向きを変え、左に曲がってしまったようです。
”バナナフック”とも表現されるような、鋭く左に曲がっていく弾道です。
一体、何が起きたのでしょうか?
ボールフライト(弾道)で説明してみる
まずは、これまで学んだボールフライトで分析してみましょう。
Aさんの弾道は、真っ直ぐに飛び出して、左に曲がる球でした。
ボールフライトとしては、「ストレートフック」と言えます。
ストレートフックということは、インパクトでは、
フェースの向き:真っ直ぐ(ストレート)
クラブ軌道 :インサイドアウト
ということが逆算できます。
ただ、ストレートフックで、今回のような極端な曲がりを実現するには、かなり無茶なインサイドアウト軌道が必要です。
しかし、Aさんはそこまで過度なインサイドアウトではありません。
どうやら、ボールフライトでは説明できないようです。
ギア効果で説明してみる
「ギア効果(Gear Effect)」という現象があります。
非常にシンプルに説明するとすれば、「クラブヘッドの芯を外してショットしたとき、ボールにフェース向きと反対方向の回転が加わること」と言えます。
Aさんのインパクトでは何が起きたのか
ボールフライトでは説明がつかなかったものが、「芯を外した感触」をヒントにして、ギア効果だと説明がつきそうです。
推測できる結論は、次の通りです。
下図のように、Aさんのティーショットは、”かなりトゥー側(ヘッドの先)”でヒットした。
打った瞬間は、勢いもあるので真っ直ぐ方向に飛び出したが、ギア効果が強くかかっており、すぐに左に曲がり始めた。
Aさんコメントの、”フェースが開いた感触”というのは間違いではなく、むしろフェースが開いてしまうぐらい先に当たり、より強いフックボールになってしまったと考えられます。
各社のドライバーは、ギア効果を意識している
ギア効果は、皆さんが使っているクラブでも”ひっそり”と役立っています。
例えばドライバーフェース面をよく見ていただくと、フェース中央付近を中心に、全体的に少し丸みがあることが分かります。
これは、芯を外した時のギア効果を上手く使って、曲がりや方向性を補完することに役立っています。
また、メーカー各社のPRにおいて、「ドライバーの重心の位置を深くしました」というような説明をよく見かけます。これも、ギア効果を活用する仕組みであり、ゴルファーにとって曲がりづらい、飛ばしやすい、というメリットになります。
Aさんの課題は?
今回は、極端な例を用いてギア効果を説明しましたが、実は、最近バナナフックを見る機会は減っています。
なぜなら、ドライバーが進化し、過度なギア効果が抑制され、曲がりづらくなっているためです。(一方で、フェアウェイウッドやユーティリティでは、バナナフックを見ることはあるかもしれません。)
ヘッドの芯付近で捉えられているとき、「ボールフライト」からインパクトを逆算することは有効です。
一方で、芯を大きく外したときは、ギア効果の影響を大きく受けます。競技の世界では、あえて芯を外してギア効果を利用する、という技術もあります。
今回のAさんであれば、クラブ軌道の修正ではなく、打点のブレを減らすことが課題と言えそうです。
どのようなスキルのゴルファーであっても、インパクトを分析することで、改善すべきことや取り組む優先順位が明確になる、面白い事例でした。
上達に悩む方は、ゴルフコーチに相談されると良いと思います。
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自分自身のボールフライトやミスの傾向を当てはめていただき、上達のヒントになれば幸いです。
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