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ボカロとケモノが交差して

お久しぶりです。ウンヶ月ぶりにnoteにてペンを握った三日坊主免許皆伝、サクライアキと申します。

今回取り上げさせていただくのはサムネの通りで、sasakure.UK氏によって手掛けられたマジカルミライ2022のテーマソング「フューチャー・イヴ」、そして、同sasakure.UK氏がケモノ着ぐるみアイドルごっこサークル、プロダクション体育館のユニット「プライム」に提供された「ズットキット・プライマリ」です。
この2曲には、同じ作曲者であること以上の繋がりがあると個人的に解釈しております。

この記事では、その解釈を皆々様に共有させていただくような内容になっております。こじつけな上にクロスオーバー気味であり、完全にオタクの壁打ちトーキングとなっておりますが、よければ最後までお付き合い下さい。

ひどく拙いため、不快に思うかもです。少しでも「あ?」ってなった場合は早急にブラウザバックをお願いします。

前提

とりあえず、前提として僕が考えるこの2曲の世界観についてから話させていただきます。
根底に「同じ世界線の楽曲である」ということがあるので悪しからず。
まず、フューチャー・イヴの歌詞を抜粋。

―きっとこれは、少しだけ未来の話。

フューチャーイヴのイントロ

数えきれない昨日を追い越して
シンクなポップにトイをして
今日は今日は何処へ行くのだろう?

同じく、Aメロ

これらの歌詞から、「ミクが現代から未来へ投げかける」ようなものであると僕は考えます。

そもそも「フューチャー・イヴ」というタイトルですが、イヴというのはクリスマスイブのような「前夜」を表す言葉です。つまりフューチャーイヴとは、「未来の前夜=現代」ということかと考えました。
そして真っ先に綴られる「これは少しだけ未来の話」。
数え切れない昨日、要するに長く続いた過去。ボカロの歴史たち。それらを追い越して、今日はどこへ行くのでしょう。

半世紀前のヒューマン 反転した世界で
同じような夢を見てるの?

ズットキット・プライマリのAメロ

半世紀、つまるところ50年前の「人間」。そして反転した世界とは。これは「ケモノと人間の関係が入れ替わった」ということではないでしょうか。ケモナー誰しも抱える「ケモノになりたい」という気持ち。それからの引用かもしれません。
ケモノが人間のように暮らす世界からずっと前の人間の世界。そこで人間は今のケモノたちと同じように夢を見ていたのでしょうか?

という調子で「プライムの3人が未来から過去(現在)へ投げかける」楽曲ではないか、という結論に至りました。

それではこれらの前提を基に、2曲を絡めて掘り下げていきましょう。
ケモノたちが思う過去は「ケモノのいない人間の世界」、初音ミクが思う未来は「人間と機械/VOCALOIDたちが共に生きる世界」。共通点のひとつも見当たらず、見事にすれ違う過去/未来へのメッセージたちは、次第に絡まっていくようです。

ほんへ

(以下、フューチャー・イヴ→イヴ、ズットキット・プライマリ→ズキプラ)

マル、バツ、ステーション
「未だ拗ねてるの?」
虹、宙、セピカ
溢れるハレーション
亦此処で謳うよ
「ねえ、生きてるよね?」
本当はそんなこととうに知っている

イヴのBメロ

イヴではマルとバツが交差し、行き場のなくなってしまった思いに思わず拗ねている様子に疑問を問いかけます。「ハレーション」とは「光線が強すぎたために、被写体の周辺が白くぼやけて不鮮明になること」です。虹、空、スピカ(一等星)に続いてハレーションが溢れると書かれているのは、あまりにも輝かしい未来は不透明であり見据えられないということでしょう。少しマイナスなイメージですね。
続く歌詞も前提をもとに考えれば、分かりやすくなってきます。
ミクがイメージする未来では、どんなことになってもそこで歌い続けます。たとえ離れ離れになってしまっても、「ねぇ、生きてるよね?」と。
しかし、そこは少しだけ未来の世界。呼びかけた相手が生きている保証はどこにもありません。
ミクはそんなことはとっくに理解しているのです。

明日 明日がそっぽを向いたって
昨日 昨日の シッポが染みたって
しあわせの行方がヒトリボッチにならないように

ズキプラのBメロ

こちらも「未来から過去(現在)へ」という前提をもとにして解釈しましょう。
明日がそっぽを向く、というのはかなり難しいですね。「まともにとりあわないで無視する」ことだとすると、明るい未来、明日という近い未来から見限られ、希望を失うというようなことでしょうか(語彙力)。
昨日のシッポが染みる、という歌詞は尻尾に水分が染み込んで重くなると考えれば、過去の出来事、トラウマが重くのしかかる、と解釈できるでしょう。
重苦しい過去と未来に挟まれる歌詞の中でも、「しあわせ」が暗がりに投げ出されてしまわないように……というのがこのパートの結論になるでしょう。

この2つを絡めて考えてみると、かなりスムーズになってきますよ。
「良いと悪いに板挟みにされて戸惑い膨れて明日に希望を持てなくなって、輝かしすぎて不透明な未来を見ようとして余計に過去か重くのしかかってきても、ずっと一緒にいられる保証なんてないから、自分が持つしあわせがヒトリボッチにならないように」

……ヘビーですね。
こんな重い思いは、サビで一気に晴れ渡っていくでしょう。
なにせ、アイドル/歌姫なのですから。

サヨナラと初めましての隙間繋ぐ愛を!
未来を!
シアワセもフシアワセも
全部抱きしめて、アイノウ 相追う
偽物でもいいよ 雨でもいいよ
夢がまだ「夢」でいられるなら
シニカルもラジカルも きっと きっと
魔法を信じていた

イヴの1サビ

アンナコンナソンナドンナ世界でもさ、
君が君で居られますように
暗な混な損な曇な事態でもさ、
“一緒”が一生、割れないようにー
相、prime プライドはあっち行って!
愛、prime ライトにもっと光って!
会い、prime クライのはちょっと待って!
アイ、prime サイコウはこっち向いて!

ズキプラ1サビ

この部分、マイナスなことやプラスなことが全て出てきていますが、それらに対する反応が変わっています。
イヴでは「シアワセもフシアワセも全部だきしめて」「偽物/雨でもいいよ」など、プラスもマイナスも等しく受け入れていますが、ズキプラでは「プライドはあっち行って」「サイコウはこっち向いて」と、マイナスを蹴り、プラスを享受しています。
そんな中に共通する言い回しである、「夢がまだ「夢」でいられるなら」「“一緒”が一生終わらないように」という言葉。
「夢が変わらないなら、どんなマイナスでも、どんな君でも肯定するよ」と寄り添うミクと、「一緒が一生終わらないように、今だけでもプラスを一緒に味わおう」と笑うプライム。

価値観の相違でしょうか、幼さや若さによる差なのか。
どちらにせよ、相手を最高に思う気持ちは変わりがありません。全く違う2つの世界でも、根底にある思いは一緒なのかもしれませんね。

ということで、ここからは2番です。ここから本格的に2曲が交わっていきますよ〜。

ずっと変わらない世界と変わってしまった世界と
「僕は、僕はどっちだっただろう」
幾つも幾重にも日々重ねた
「もっと近く」が遠かった
僕は僕はシンクなポップにトイかけるラジオ?
夢に夢みてるシナリオ?

イヴの2番Aメロ

2番からは、「未来」へ時間がが変わったと解釈しました。「人間とケモノの関係性が入れ替わった世界」に。そんな未来の中、ミクは立っているのです。
自分が思っていたよりも大きく変わってしまった世界。その中で、やはりいなくなってしまったミクのプロデューサー。長い時が流れて「善悪全て抱きしめた」のか、「善を強く享受していた」のか、分からなくなり「僕はどっちだっただろう」と自問自答。

30秒前のニューマン なんだかんだで不満?
終わりそうも無いストレス等
30年後の感情なんて分かんないけど
分かってしまう事もあってさ
転んでケンカして でもちょっと笑って
だって“思考と錯誤のモンスター…”
それ僕のこと? いや皆のこと!
一緒になって踊ろうよ、さ!

ズキプラ2番Aメロ

さらに絡めていきましょう。
ズキプラでは未来から過去、つまるところ現在にフォーカスします。(恐らく時間軸が変化しているわけではない)
未来の自分の気持ちは知りもしないけど、分かりきったことがあります。それは「ずっと一緒にはいられない」ということ。
それでも転んで、喧嘩して、笑いあって……。

そんな日々を重ねた先にある未来。プライムにとっての現代。そこにミクはいました。
過去の自分がしていた何気ない行為に疑問を感じているように感じます。MVの方でも、なんとなく自棄になってるように見えるかもしれません。

そんな思考と錯誤に陥ってしまったミク。しかしそのような葛藤を抱えてしまうのはミクだけではありません。ミク以外のみんなも一緒なのです。
ここでプライムの皆がミクに「一緒になって踊ろうよ」と手を差し伸べたように感じました。

誰も 誰もが そっぽを向いたって
消えない 消えない光はあるんだって
うれしいも かなしいも、
ヒトリボッチにならないように

ズキプラ2番Bメロ

ズキプラのBメロの歌詞に、少し変化が見られますね。
マイナスが重なっていた1番に対して「消えない光はあるんだって」と希望のある歌詞となっています。ハレーションのようになるでもないような、「皆が見向きしなくなっても、消えない光はある」という優しい言葉。
そして、「うれしい」も「かなしい」もヒトリボッチにならないように、と綴られています。
1番でマイナスを蹴っていたのに対して、イヴのようにマイナスとプラスを両方とも抱きしめようとしていますね。ミクに手を差し伸べようとしたことで変化したのかもしれません。

ここからサビに入り、再びミクが立ち上がります。

アアダコウダナンダカンダあがいてもさ、
みんなみんなで居られますように
嗚呼だcoda難だ咬んだ叫んでもさ、
“一緒”が一生、終わらないように

ズキプラ2番サビ

ズキプラでは1サビと同じように、どんなマイナスな事態になっても一緒にいられるように、と綴られます。

サヨナラと初めましての隙間繋ぐ愛を!未来を!
ガラクタも枯れた惑星も
全部抱きしめて、アイノウ 相追う
エゴでもいいよノイズでもいいよ
君がまだ「君」をやめないなら
ロジカルもミシカルもきっときっと
魔法を信じていた

イヴ2番サビ

それに対してイヴでは1番と変わってマイナスが占めており、「マイナスは全部受け止めるよ」というような印象になっていますね。
そして「君が「君」をやめないなら」という言葉。自分をやめる、というのは「自己の主張をやめる」ということでしょうか。自分が思うセカイをボカロたちと共に展開するボカロP。それが主張をやめるというのはミクにとっても大問題でしょう。
そして1番にもあった「魔法を信じていた」という言葉。「シニカル(嘲笑的)/ロジカル(論理的)な言葉も、マジカル(魔法的)/ミシカル(神話的)な言葉も、魔法(=音楽の可能性)を信じていたから夢が変わらず、自分を投げ出さずに綴られた」ということかもしれません。

独り法師を超えて 背中合わせのイヴ
流れ星逆さまの音がする
「行かないで!」
手を伸ばすゼロを刻む、夢から覚めた、けれど

イヴCメロ

恐らくここは回想シーンでしょう。
独りを超えて、イヴ(人類最初の女性=最初に大ヒットを博したミク)と隣り合わせの「君」。流れ星が逆さまという歌詞は「願いが失われる、終わる」という意味だと解釈しました。「行かないで!」という歌詞も一緒にして考えると「君」とミクがお別れしている描写とも見て取れます。
ここで回想から帰ってきて、ラスサビへと繋がるようです。

君が隣にいて、隣にいない世界の続きを
愛しさも絶望も全部抱きしめた感情を、もう一度!

イヴラスサビ

「君」が隣にいて、隣にいない世界。「君」の存在を回想することはできても、実際にはもういないのです。そんな愛しさと絶望がごちゃ混ぜになった感情を、「君」がいたときのように、もう一度歌います。

プラス マイナス どっちでも
ライト ディライト みんなも
イマだけ“クラヤミ”もトモダチ
ムテキの世界を、シリタイ シンジタイ ユメミタイ

ズキプラCメロ

同時にプライムの感情も強く変化しています。「イマだけ“クラヤミ”もトモダチ」という歌詞などからわかるように、ミクと同じようにプラスもマイナスも等しく抱きしめ、最高な世界を見ようと腕を振り上げるのです。

サヨナラも初めましても一緒に謳おうよ
未来を!
トンデモ宇宙も終末も
全部抱きしめて、アイノウ 相追う
虚無でもいいよ闇でもいいよ
夢が、まだ「夢」が愛せるなら
間近に在る、初まりはずっとずっと
魔法を信じていた

イヴのラスサビ

サヨナラも初めましても、無限に広がる宇宙も終末も、全部抱きしめ、プライムのように「一緒に謳おう」と歌うミク。ただ抱きしめ、受け入れるだけでなく「一緒に謳う」という選択肢が現れたのは大きな変化と言えますね。
思っているよりもずっと近くにある夢の始まりと、そこから始まった夢。それを愛し、信じられるのは音楽という魔法があるからなのかもしれません。

アンナコンナソンナドンナ世界でもさ、
僕が僕で居られますように
暗な混な損な曇な事態でもさ、
“一緒”が一生、割れないように

アンナワンダーソンナアンサーまだまだ!
サイコウな最高を、“またあした”も
アンナワンダーソンナアンサーまだまだ!
“一緒”が一生、終わらないように

ズキプラのラスサビ

これまでと全く同じように、どんな暗い事態になっても、自分としていられるように、一緒にいられるようにと歌い、踊るプライム。
あんなワンダー(=驚き、好奇)、何通りものアンサー(=答え)、サイコウをまだまだ見たい、明日もみんなと一緒に見たい、一緒にいたい。
「もっとみんなと一緒に未知を体験したい」という思いがとても強く表現されています。

「君」がいなくなっても、新たなる世界で一緒に謳おうと未来に向けて笑うミクと、この先どんな事になっても一緒に色んなことをしようと過去へ向かって笑うプライム。
これが、1つの歌と1つの舞踊が交わった末に出たそれぞれの答えだと考えました。

まとめ

ここまでいろいろと解釈してきましたが、いかがだったでしょうか。
フューチャー・イヴとズットキット・プライマリを「同じ世界線の楽曲」だとしてこじつけつつも考えてみたら、かなり力強くも共通したメッセージが結論として現れました。

少し暗がりがありながらも希望に満ち溢れた未来を見せてくれるこの2曲、ぜひ聴いてみてはどうでしょうか。
ケモノもボカロも、とてもオススメです。「フェチ」という要素も「機械」という要素も抜きにして、オススメです。

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