活動開始1年で初ワンマン。KuruMilk生誕ライブレポート2023.11.30.
繊細なレースのドレスアップと、耳元で揺れるキラキラ。Roland FA06が鳴らす表情のある音。ライトアップされた透明感のある白い指が、鍵盤のうえで心地よく踊る。すべての光景が彼女の存在と声を引き立てる。彼女のための空間。性別関係なく、惚れてしまいそうな魅力を持っている人だった。
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駅から徒歩7分ほど歩く、ライブハウス浅草メタフォラ。
2023年11月30日、個人での活動を開始して約1年で初のワンマンライブをしたKuruMilkさん。
音楽に触れ始めたのは2歳のとき。その後は、エレクトーンの大会やKey.&Vo.担当でバンド活動を経験した。そして2022年9月から、アーティストKuruMilkとしての活動をスタートした。
初ワンマンライブの日は、彼女の誕生日だった。立ち見客が出るほどの満員。彼女の記念すべき日を、僭越ながらレポートさせていただきます。
写真のように、思い出に残ることを祈って。
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19:30。
浅草メタフォラの階段を降りると、落ち着いたライトアップが印象的な空間が広がっていた。年代は様々。けれど共通していたこと、お店の方とお客さんの雰囲気が、彼女への愛で溢れているのが一目でわかった。
ひとりひとりを出迎えて、みんなに声を掛ける。KuruMilkさんの芯と明るさを感じる話し声と立ち居振る舞いだけで、なんだか気になってしまう人もいるのではないだろうか。
ドリンクが行き渡ったのを確認してから、お客さんと会場への感謝をはじめとしてライブが始まった。
ホワイトのキーボードとマイクとMacbook。たった一人で演じてしまうには贅沢すぎるほどの音と安定感。紫と赤の照明が彼女を照らす。妖艶なドレスとアクセサリーが煌めく。その空間のすべてが引き立てるのは、彼女の艶やかな声だ。普段の明るい声とはまた違う、ドキッとしてしまうような声。最初の歌い出しで、大人な雰囲気の曲が似合う艶やかな声が特徴の方だと感じた。
会場を一瞬で惹きつけてから始まった1曲目、「Yurari」。
伏線回収がはやい、と思った。オリジナル曲ですでに、彼女の魅力が最大限に引き出されるテイスト。Macbookから流れる音源と、キーボードで奏でるリアルで均整のとれた音。リズムキープのない本番で、ずれることなく、単調にならずに聴かせる。余裕を感じる声。
「お酒のあるあるを歌った曲」と話すKuruMilkさん。聴いているだけなのに、金曜の深夜のバーでいるような、ふわふわとした感覚に包まれる。ライブが始まる前までのちょっとした緊張感も、すっかり解けるようなリラックスした感覚に包まれた。
曲が終わりMCに切り替わると、また親しみやすい雰囲気がぱっと現れる。かっこいいところは一貫してかっこいい。音楽に対してしっかりと向き合う、演者である大人の女性の魅力。
その後は、3曲続けてカバー曲が続く。
2曲目は宇多田ヒカルの「Automatic」。原曲を聴いているときとはまた違った感覚で、夜や雨の景色が浮かぶ歌声とキーボードの音色で、名曲の新しい聴き方ができたような、嬉しい感覚になる。聴けてよかった。
拍手の後には、「残酷な天使のテーゼ」が続く。ハリのある低めの声とサビの力強い高音が響く。中森明菜の「DESIRE」では、聴いている人の存在を忘れずに、会場をのせてくれる。客席からは応えるように、合いの手が入る。その場にいる人々が楽しんでいる。曲を通して会話するような空間。ライブのいいところだ。
盛り上がりは最高に達して、5曲目KuruMilkさんのオリジナル曲「四角関係」が始まる。キラキラと、シンセサイザーの音が散りばめられる。昭和の雰囲気を残しつつも、今らしい音の細かさやカチッとした機械音も。
年代幅広く刺さる曲と、オリジナル曲で最も引き出される彼女自身の美しさが、年代を問わずに愛される理由なのかもしれない。
椎名林檎の「ギブス」、X JAPANの「Forever Love」では、またこれまでとムードの違う繊細な声が響く。強さもありながら、優しい小雨のような音色が心地よい。グラスの中の氷が溶けてカランと落ちる音まで、曲に馴染んで雰囲気を作る。彼女のライブはぜひ、その場でお酒を飲みながら見てほしい。とっておきの贅沢な時間を過ごせるはずだ。
つい演奏が終わった後に、会場からは感嘆の息が漏れる。続く中島美嘉の「GLAMOROUS SKY」では、キーボードの跳ねるリズムがグルーヴを作り出す。Macbookからの他音源と一緒に演奏される曲は、バンド演奏に負けないほど生きていた。歌うときにオーラを纏う彼女の魅力に、つい間奏で拍手が起こる。白黒の鍵盤の上を、綺麗な手が音と一緒に跳ねる。リングが映える。キーボーディストの魅力は、生で演奏姿を見るときの美しさにもあると思った。
最後を飾るのは、オリジナル曲「第三者」。
「第三者でいいから私を満たして」と、素直に歌われる曲。なかなか気持ちを表しがたいシーンを、代弁してくれる歌。つい歌詞を聴いてしまうストーリー性と、どこか懐かしいメロディ、だからこそ大人っぽさを感じる曲。夜の浅草メタフォラの空気感との相乗効果で、気を抜くと魅了されてしまう。そう思っているときに囁かれるセリフと、Cメロの畳み掛ける気持ちの吐露で、虜になるには十分だった。
アンコールでは、「丸の内サディスティック」が演奏される。一瞬の夜を締め括るエンドロールのように、惜しまれながらも初のワンマンライブが終わった。
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最後に、KuruMilkさんに感想を伺いました。
近日、彼女自身初MVとなる「第三者」のMVも発表されます。ぜひライブやMVを通して、彼女の大人らしさ溢れる魅力を体感していただけたら嬉しいです。