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術後55日目、化学療法2回目・5日目 「孤独じゃない——病室で出会った“戦友”と語った日」
退院の日。
ベッドから立ち上がると、手足のしびれ が広がっていた。
「やっぱり……」
前回は5日ほどで治まったが、今回は違う気がする。
ネットで調べ、これが長く続く可能性があることは知っていた。
でも、知識と現実は別物だ。
自分の体でそれを感じると、不安がじわりと湧き上がる。
治療はまだ続く。
このしびれとも、これから長く付き合っていくのだろう。
そう思うと、気が遠くなりそうだった。
「同じ痛みを知る人と」
そんな中で、今回の入院は特別なものになった。
入院中、初めて「同志」と呼べる人 に出会えたのだ。
彼女も私と同じく、手術を終え、化学療法に挑んでいた。
ネットで同じような境遇の人の話を読むことはあったが、
実際に顔を合わせ、声を聞き、心の奥にある本音を交わす 機会はなかった。
だからこそ、この30分間は貴重だった。
病棟のラウンジで、私たちは静かに語り合った。
「副作用、どうですか?」
「やっぱり、つらいですね……」
食欲がなくなること、吐き気との付き合い方、脱毛、
退院後の生活への不安、そして未来のこと——。
お互いの経験を話すことで、「わかる」と共感し合える時間。
それが、どれほど心を軽くしてくれたか。
励まし合うでもなく、気の利いた言葉を掛けるでもなく、
ただ「同じ経験をしている」ことが、すべてだった。
彼女は、私より一足先に週末退院。
私は、週明けののんびり退院。
けれど、この時間があったから、私は退院を前向きな気持ちで迎えられた。
病院から持ち帰る薬の量は増えていく。
眠剤、血圧の薬、そして副作用対策の薬——。
薬漬けの日々に、ため息が漏れそうになる。
でも、今回の入院で得たものは大きかった。
「また話しましょう」
そう言って、私たちはSNSの連絡先を交換した。
同じ経験を持つ人が、すぐそばにいる。
それだけで、ひとりじゃないと思えた。
手足のしびれはまだ残っている。
でも、心は少しだけ、温かくなっていた。
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