
術後90日目 化学療法3回目・19日目—信頼される仕事とは
復職してから、改めて感じることがある。
「この人なら」と、安心してもらえること。
それが、仕事のやりがいのひとつだと。
◆「どうされました?」——信頼の瞬間
今日、少し早い時間に取引先から電話がきた。
電話の向こうの担当者の声が、どこか緊張している。
——「どうされました?」
そう尋ねると、少し迷いながら説明が始まった。
「最後にいただいたデータの中に、新規の材料があったんですが…
見かけたことのない材質名で、処理できないようです…」
なるほど。
まずは状況を整理するため、「こちらで何をお手伝いできますか?」と確認した。
話を詳しく聞くと、私の職場内で登録材質名を変更したため、従来の名称と違っていたことが原因だった。
このままでは業務が滞ってしまう。
「元の材質名に戻して、データを再送しますね」
問題はスムーズに解決した。
担当者もホッとしたように、「助かりました、ありがとうございます」と声を弾ませた。
こういう瞬間に、私は仕事の意味を感じる。
単に作業をこなすのではなく、相手の困りごとを察知し、一緒に解決していくこと。
それができたとき、「この人なら」と信頼してもらえるのだと実感する。
◆病院では、まだ—
一方で、病院ではそうはいかない。
治療を受けるたびに感じる、微妙な距離感。
決して冷たいわけではない。
けれど、どこか「決められた手順」の中で、淡々と進んでいく感覚がある。
仕事なら、「この人に頼めば大丈夫」という信頼を築いてきた。
でも、病院では私はただの「患者」でしかない。
—こちらの思いは、どこまで届いているのだろう。
—どれだけの手応えがあるのだろう。
そう考えながら、いつも診察室を後にする。
仕事は、対価をもらって働くもの。
医療は、対価を払って受けるもの。
同じ「信頼関係」なのに、立場が変わるだけで、こんなにも感じ方が違う。
私が抱える葛藤は、そこにあるのかもしれない。
仕事では積み重ねた経験が信頼につながる。
でも、病院ではまだ、その「積み重ね」が始まったばかりなのだろう。
それでも、少しずつ、手応えを感じられる日がくるのかもしれない。
その答えを探しながら、私は今を生きる。
#がんと向き合う心の整理術 #子宮体癌 #卵巣癌 #重複がん #がんサバイバー #術後補助化学療法 #がん治療と生活 #働くがんサバイバー