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術後50日目-化学療法1回目・21日目 「3度目の入院 〜繰り返される痛みと気の重さ〜」


 今回は、お気に入りのかぼちゃ柄のパジャマを持参した。少しでも気分を和らげるために。
ケア帽子と毛付き帽子をかぶって病棟へ向かう。今の私にとって、帽子は身だしなみではなく、心を守る鎧だ。頭を隠すことで、何とか自分を保っている。

 病室に荷物を置いた瞬間、また「上げ膳据え膳」の生活が始まるのだと実感する。自由に動ける環境から、一日の流れが決められた病院の生活へ。治療のためとはいえ、ここにいる間は「患者」であることを否応なく意識させられる。

 そして、ポートの準備が始まる。針を刺される時のあの痛み……。どれだけ経験を重ねても慣れることはない。刺す瞬間の緊張と、刺さった後にじわじわ広がる違和感。痛みだけではなく、「また始まるのか」という気持ちの重さがのしかかる。

ふと、考える。
「私が気が重いように、主治医も毎日多くの患者を診る中で、どんなことを思っているのだろうか?」
私は、患者として治療を受ける側だ。でも、医療者は治療を提供する側として、数え切れないほどの痛みや不安に日々向き合っている。患者の私が痛みに耐えているように、医療者もまた、別の意味でこの時間を乗り越えているのかもしれない。

 職場でISO9001の内部監査をする際のチェックポイントの1つは、手順通りに進められていることの重要性である。それはミスを防ぎ、品質を守るために必要なことだった。医療も同じだ。決められた手順を守り、患者の命を支える。けれども、その手順の裏にある人間の感情はどうだろう。

 私は、対人支援の視点から、事象と感情を切り分けることも学んできた。でも今、自分が患者の立場になると、その切り分けがとても難しい。痛みがある。気が重い。でも、それを言葉にしたところで、何かが変わるわけではない。だからこそ、私は医療者に負の感情をぶつけることを意識的に避けてきた。

——けれど、それは「強さ」なのだろうか。

 自分の気持ちを抑え、ただ耐えることが本当に正しいのか。感情を飲み込み続けることが、心を守ることにつながるのか。
考えが堂々巡りする中、点滴の準備が進んでいく。

3度目の入院生活が始まる。これまでと同じようでいて、少しずつ、心の揺らぎが大きくなっている自分に気づいた。


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