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術後99日目 化学療法4回目・1日目 外来治療のはじまり―"旅気分"で向き合う化学療法


今日から、残り3回の化学療法は外来で受けることになった。まずは血液検査を受け、結果を待つ間に歯科診療へ。その後、主治医の診察。

「このあと化学療法ですね。」
その言葉を聞いた瞬間、私は尋ねた。
「ということは、検査結果、大丈夫でしたか?」

化学療法は血液検査の結果が基準を満たさなければ実施できない。その前提を知っていれば、医師が「問題ありません」と言わなくても、会話の流れから察することができる。私は対人支援の講座で、会話の意図を読み取る技術を学んだ。その経験は診察でも活きる。

必要以上に言葉を交わさず、必要なことを確かめる。それが、お互いの負担を減らすことにもなる。

診察と治療スケジュールの確認
「手足のしびれはどうですか?」
「続いています。寒くなったせいか、ポートの傷も痛みます。」
「見せてください。」
素直に見せると、胸の内出血がきれいになったことも伝えた。
「別人のようですね。」

そう言われ、ふと考える――あれほど長く内出血の跡が残ったのはなぜだったのか? そういえば、あの時、医師からちゃんと説明があっただろうか。

看護師さんたちは「痛みはありませんか?」と何度も声をかけ、「少しずつ良くなっていますね」と寄り添ってくれた。医師の言葉は事実を伝えるだけかもしれない。でも、その言葉の裏にある「意識」は伝わってくるものだ。「気にかけている」のか、「ただの業務」なのか――その違いは小さいようで大きい。

「睡眠はどうですか?」
不意に医師が聞いた。私は一瞬考え、答えた。
「時々眠れないこともありますが、薬がなくても、なんとかなると思います。」

無理に新たな処方を増やす必要はない。病気と向き合う中で、こうした小さな選択の積み重ねが、自分の意思を確認する行為にもなっている気がする。

外来治療に切り替わったことで、職場に伝えるため治療スケジュールを確認した。
「次回以降の予定も知りたいのですが。」
主治医はカレンダーを見ながら日程を伝え、「書きますよ」と血液検査結果報告書の余白に記載してくれた。ありがたい対応だった。

外来化学療法の様子
化学療法室にはリクライニングチェアとベッドが並んでいた。私は5時間の長丁場、ベッドへ案内される。

「においの強くない飲食物を持参するように」との指示があったため、私は駅弁とお茶を用意した。なぜ駅弁なのか? それは、初めての外来治療に対する不安を紛らわせるためと、化学療法後に訪れる味覚障害の前に「ご褒美」として、少しでも美味しいものを食べておきたかったからだ。コンビニ弁当ではなく、旅のワクワク感を味わえる駅弁を選んだ。

新幹線の改札内で購入し、東京で講座を受けていた頃を思い出す。治療の日を少しでも前向きにしたくて、「今日は特別な日なんだ」と自分に言い聞かせた。

米沢牛すきやきと鮭はらこめし



夕方、ふと気づくと化学療法室には私ひとりだけ。看護師さんと入院と外来の違いについて話す機会があった。
「入院のときは心電図モニターをつけられて、すごく大ごとでしたが、ここではそんなこともなくて。トイレに行こうとすると、すぐに看護師さんが来てくれるんですね。」

前回の入院での化学療法。本来ならヒューバ針は主治医が刺すはずだったが、直前になって「今回は当日、看護師がやります」と言われた。「予約が取れなかったから」とのことだったが、本当にそうだったのか――何か別の理由があったのかもしれない。

入院治療から外来治療へと環境が変わったことで、むしろ私は「見守られている」という安心感を得られるようになった。トイレに行こうとベッドから降り、靴を履こうとすると、すぐに看護師さんがそばに来てくれる。その細やかな気遣いが、入院時とはまた違う形での「支え」となっていた。

そう感じたせいか、5時間の点滴は思いのほかあっという間だった。

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