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【シンガポール 14日間ホテル軟禁日記】#10_愛と、愛が故の決断篇

2020年8月17日、シンガポールに5ヶ月ぶりに入国。

入国後14日間はシンガポール政府指定ホテルでの滞在が義務付けられている。その14日間+前後数日で、起きたこと、思ったこと、考えたことの記録。

※誤った情報が含まれる可能性、個人の思い込みや考えが多分に含まれていることはご容赦ください。

【Day 6】 ~こんなに非摂取が連続した日々はあっただろうか?

現在、8月22日の23時半を回ったところ。この生活も6日目が終わり、1週間が経過しようとしています。

僕は何時に仕事が終わろうと、たとえ朝方までかかってしまう仕事があった日でも、仕事が終わったらケジメとしてビールを飲んでから寝ることにしているくらい、ビールを愛しています。

「食事ってお酒を美味しく飲むためのものだなー」という考えに数年前至っており、それからというもの、基本的に朝食・昼食は食べない生活を送っています。

そのため、軟禁生活の唯一の楽しみは夜の晩酌だろうなーと思っていたし、「ビールはホテルで簡単に手に入るが、アテがなくて困っている人、多数」という情報を出国直前に耳にしたので、パンパンだったトランクに最後に押し込んだのはこいつらでした。

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■「日本人代表」としての意識は突然芽生える

そしてホテルに到着した夜、ホテルからの案内には「質問があればWhatsapp(LINE的なチャットアプリ)でいつでもどうぞ!」とあったので、「ビールはどうしたら頼めますか?」と送ってみました。

するとさっそく、とても丁寧な口調で返事が。

「シンガポール政府はSHN滞在者(Stay Home Notice = 軟禁者のこと)のアルコール飲酒は制限しているんですよ…。大変申し訳ないです…!」

例の政府系からの各種文書で「酒飲んだら、ぶっ飛ばす。」的な文言は見た記憶がない。そんな大事な文言なら絶対覚えている自信もありました。

さらにネット上を洗ってみても、「アルコールを禁じる」とはどこにも書いておらず、おそらく、ホテルが言う「制限している(原文 : restricting)」というのは、「ホテルが提供すること」を「制限している」ということなのだと思います。
(英語得意な方、もし間違ってたら教えてください)

そのため、別途入手する方法を確認するか、デリバリーを頼んでフロントに渡してもらえば、問題なくビールにありつくことはできるのだと思います。
(デリバリー利用は許されており、頼んだものはフロントに渡されて、ホテルスタッフがドアの前に置いてくれる仕組み)

ただ、ホテルの方がさらに、

「本当に申し訳ないです…!この事実を受け入れるってことが、とっても大変なことだってことは、よーくわかります。でも14日間の辛抱なので、頑張って!応援してます!Do your best!」

と畳みかけてきまして…。

ここまで言われて、それでもなおビールの入手方法を模索したら、

「そんなにビール飲みたいのかよ。やっぱり日本人て…。(笑)」

「感染してるかもしれないのに、酒飲んで体調悪くなったらどうすんだ。緊張感がないったらありゃしない。これだから日本人は…。」

と思われ、ホテルスタッフ中に共有され、僕のせいで「日本人=意志の弱いアル中」というレッテルを貼られてしまうかもしれない…。この突然芽生えた日本代表意識で、この日にビールを頼むことは断念しました。

■「美味い」へのあくなき挑戦

そして2日目の朝、起きて思います。

前の日にメッセージを返してくれた人とフロントの担当はさすがに別の人間だろうし、連携も取っていないだろう。午前中にデリバリーでビールを頼んでおいて冷やしておいて夜飲もう。とりあえず6缶でいいかなー、一気に12缶くらい頼んどくかなー…。

そんなことを考えながらシャワーから出て、昨晩寝る前に冷蔵庫に入れておいた水を取り出し、飲んで、気付きます。

冷蔵庫がまったく効いていない。

洗面台の下に設置された小さめの冷蔵庫。上部の洗面台にはしっかりと熱を発してる割りに、どんなに奥に手を入れても冷気を感じない。温度設定は何度見てもマックスになっています。

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シンガポールとはいえ、ここは東南アジア。ビールが冷たい状態で運ばれてくる可能性は皆無です。

冷蔵庫内部の温度感は「クーラーボックスの中」程度のもので、ここにビールを入れたところで、缶の側だけ気持ち冷やされた状態にしかできないでしょう。

ぬる〜いビールで1日のケジメをつけるってどうなんだ。1日の楽しみをぬる〜いビールに託して良いのか。そもそもビールを愛するものとして、その飲み方はビールに失礼なんじゃないか…。

■いったん距離をおこう、という愛

というわけで、僕は14日間、ビールを摂取しないことを決めました。

今、ぬるいビールを飲むのではなく、軟禁解除後に最高の状態のビールを最高に枯渇した身体に注入しようと心を決めたのです。

「いったん距離を置いて関係を見直す」という類の恋話を聞くたびに、「そんなの意味ないやろ、終わりの先延ばしだ」と思ってたタイプですが、いま初めてその意味を理解しました。

最後のアルコール摂取は8月16日(先週の日曜日)の夜だったので、およそ一週間が経とうとしており、こんなにアルコールを絶ったのはシンガポール移住直前にアニサキスに倒れた2年以上前以来だと思います。

例の油全力投球の食事のせいか、初めての体験が多いことによるアドレナリン量のせいか、今のところはそこまでビール欲は高まっていません。ただ、2週間を終える頃にはものすごい枯渇感に襲われているでしょう。

その軟禁が解除される日、僕は一切の食餌・水分を摂取せずに帰宅し、赤道直下シンガポールのどぎつい太陽の下で30分程度汗をかき、シャワーを浴びて、限界まで身体を枯渇させた状態でキンキンに冷えたビール(この国でもっとも高いビールのひとつ、アサヒスーパードライ)を一気飲みすることを、ここに誓います。

つづく

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