空の神 #2
main game in
First memory 1
『いってらしゃいませ』
ロード中……。
ロード中……。
ロード中……。
読み込みが完了しました。
暗い。
暗い。
とても暗い。
ひたすら黒かった。
暗いと言うより黒い。
そんな途轍もない深さだった。
そんな世界。
そんな何もない世界に突如として、淡く青い光が産まれた。
眩しい。
眩しい。
眩しい。
目が開く。
巨大な青白い四角が目の前で『ロード中……』という文字をひたすらに映し出していた。
ロード中? 何読み込んでんだよこんななんもない場所で。いや、何も無いから読み込んでんのか……とりあえずはよ帰らんと、また旭がうるさいからなぁ……。
……。
いや、待て。待て。待って。先ここはどこ? ココ、doko! 見渡す限り真っ暗だし。
『これじゃあ上か下かもわかん……』
声を発した途端に、物凄い違和感と寒気が全身を襲う。
『こ、声が……』
お、おかしい。自分の声が機械を通したように聞こえる。
抑えきれない困惑を胸にしまい、自分の状況とこの場所について思考を巡らせる。
□■□■
自分のちっぽけな頭で出来る限り脳をフル回転させること数分。
思い出した……確か今日の学校帰りに、春比が入って行った様に見えた路地裏。
そこに入ったらここと同じぐらい真っ暗な空間が広がっていた。自然に考えてここがその真っ暗な空間だろうか。いや、最終的にここがどこだかわかってないんですが。
『さーて、どうすっかなぁ』
自分の置かれた状況の整理が追いつかず頭を悩ませていると後ろから聞き覚えのあるPOP音が耳に届く。
振り返るとさっきまで『ロード中・・・』と書かれた窓のあった場所に、次は『ロードが完了しました』と書かれた窓が表示されていた。
『あ……すっかり忘れてた』
今まで気に止めることもなかったホログラムをまじまじと眺めているとまた軽い音が鳴る。
『ようこそ、チュートリアルへ。只今からゲーム説明をさせて頂きます。』
機械の合成音声が移り変わった青白いホログラムの中の文字を読み上げる。
『は……? おいおい、なんのゲームだよ。急に出てきたと思ったら、コレなんてデスゲーム?』
それにしても、なんだ? この既視感は……。
どこか聞き慣れた機械音声の声はこちらの声に耳を傾けることもなく説明を始める。ボケてんだからなんかリアクションしてくれてもいいんですけどね。
『この世界には様々な……』
機械音声の声が気に食わないのと、この訳もわからない状況が相まって焦りと苛立ちと恐怖で頭がパニックになる。
『いいから出せよ、ここからさぁ! 管理者は? どうなてっんだよ、まったくよ……なぁ? お嬢さんもそんな無視しなくていいんじゃん……あっ! そっか! もしかして俺に惚れちゃった? だ〜からそんな機械音声みたいな声で話してんの? 大丈夫だよ、優しくしてあげる! ……………嘘ですごめんなさい。そんな訳ないですよね? わかってます。 ごめんなさい、だから許して』
□■□■
意味のない言葉を 窓話しかけてから数分。
『なぁ、おい! いい加減にしろよ! いつまで続ける気だよ! 早くここから出せって!』
暗闇の中にずっといる閉塞感や、なんの感覚のなさにとうとう耐えられなくなり、おもいっきり青白く光るそれに拳を叩きつける。拳が画面にあたると同時に、表示が変わる際に幾度となく聞いた軽い音が響く。
急な音に肩をびくつかせながら叩いた場所を確認する。もしかして壊しちゃった……?
『それでは、これにて事前説明を終了させて頂きます。 どうぞ、お気をつけて。 行ってらっしゃいませ』
訳がわからず窓を覗き込むと『説明を終了いたします。 他に聞きたいことはございますか? なければゲームを開始します』と表示された窓の上、『Yes』という新しいPOP UPが表示されていたのを不運にも殴っていた。あ、コレ完全にやらかしたぁ……。
『と、とりあえず……テへペロ』
何も誤魔化せていないのは重々承知である。というか今の言動は痛い。すごく痛い。すごく痛々しい。到底人様に見せられるものではない。……ヤダ! もう嫌だ!帰りたい……本当どうやって帰るんだよ……。
俺の情緒も知らず、足元から徐々に綺麗な石畳が現れ始め、段々と幕が上がるかのように世界が広がっていく。
『あーーーーーー! ごめんなさいい! すいません! ごめんなさい、ゆるさて、も、しないから、ちゃんと話聞くからぁぁあああああああああああああああああああ!』
□■□■
黒い幕が上げられた先にはよく知る、だが実際には存在しないはずの。いや、実在してはならない場所だった。