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たびたび生じる騎手のケンカ(イギリス・アイルランド・フランス)

 1月26日(日)にターフフォンテン競馬場で騎手がライバルを鞭で強打した事件は衝撃的だったかもしれない。しかしレース中、それ以外の場面かを問わず、騎手がヒートアップした瞬間はこれだけではない。

 1994年3月、リチャード・ダンウッディとエイドリアン・マグワイアのリーディング争いは沸点に到達した。ダンウッディがわざと走行妨害を行い2週間の騎乗停止処分を受けたのだ。

 ノッティンガムのレースで、マグワイアは単勝1倍台の馬に騎乗してインを抜けようとしたが、ダンウッディにすき間を塞がれ、マグワイアはプラスチック製の内ラチに激突し、あやうく落馬しそうになった。

 ダンウッディはそのまま勝利を収めたが失格となった。裁決委員が最大限の処分を下したため、彼はチェルトナムフェスティバルでの騎乗を断念せざるをえなかった。しかしリーディング争いを諦めるには十分ではなく、ダンウッディは最終的に3勝差をつけてその栄冠を勝ち取った。

 一年後、ダンウッディはユートクシター競馬場でルーク・ハーヴィーに同じ手口を使った。しかし裁決委員はより厳格で、30日間の騎乗停止処分を言い渡した。彼は馬を降りてもケンカをいとわず、アスコットの検量室でミック・フィッツジェラルドと乱闘騒ぎを起こした。

 レース後に不満を爆発させたのはダンウッディだけではない。ティミー・マーフィーとドミニク・エルスワースも2013年に検量室で殴り合いのケンカをしている。

 当初、マーフィーが肩を脱臼して検量室から出てきたとき、この事件は謎に包まれていた。しかしすぐに彼がエルスワースとケンカしたことが明らかになり、9日間の騎乗停止処分を受け、重要なクリスマス開催での騎乗を断念することを余儀なくされた。マーフィーが乱闘を煽ったことが判明し、エルスワースには何の処分も下されなかった。

 2010年には、ソフィー・ドイルとカースティ・ミルクザレクが検量室で取っ組み合いのケンカをして目の周りに青あざを作った。2018年には、ジム・クロウリーがグッドウッドでラウル・デ・シルバとケンカして数針縫う怪我を負った。また1994年にはビヴァリー競馬場でキーレン・ファロンとスチュアート・ウェブスターがレース中のいざこざをうけ、検量室で衝突した。

 2017年にもダリル・ジェイコブがレース後のケンカで問題を起こしている。チェルトナムのハンデキャップハードル競走のあとノエル・ジョージの勝負服をつかんだとして注意を受けたのだ。

 2024年にはアマチュアチャンピオンのパトリック・マリンズがフォーヒーンノヴィースチェイス(G1)のあと、いとこのダニー・マリンズを厳しく叱責した。しかし反省の色を見せたので制裁は免れた。ただ2022年にクリストフ・スミヨンが示したように、謝罪だけではすまないこともある。

 サンクルー競馬場のレース中にスミヨンはロッサ・ライアンに肘鉄を食らわせ落馬させたのだ。ライアンに怪我はなかったが、スミヨンは60日間の騎乗停止処分を受け、アガ・カーン殿下の主戦騎手の座を失った。

 1979年にはドーヴィル競馬場のレース中にレスター・ピゴットがライバルの鞭を「借用する」という悪ふざけをした。ピゴットは2番手を走っていたアラン・ルクーの鞭を盗んで通りすぎた。のちに、ピゴットはルクーがもはや鞭を使う必要がなかったと裁決委員に説明している。そして結果的に3位に降着となった。

By Catherine Macrae

[Racing Post 2025年1月27日「Jockey rows: the times when riding rivalries boiled over」]

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