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不確かなメトロポリタン美術館展-回顧録
3年前メトロポリタン美術館展と福富太郎の眼、展に行ったときの回顧録。
今更書くのもな、と思ったがメモを読むとその時の感情が蘇ってきたのでやっぱり書くことに。
行くまでの経緯はこちら。
船旅で心が洗われたことにより、アートを見るには最高のコンディションとなったわけだ。
コロナ禍ということもあって美術館へは入場制限があるだろうなと思った為、向かう道中で電子当日券を購入した。
天王寺駅を降りて大阪市立美術館へ。人がすごいすごい。お目当てだったドガのピンクと緑もみれた。緑内障であまり視えなくなっている中でもバレリーナたちの舞台袖の高揚感と清々しさを印象的に捉えていて素晴らしかった。
ずっと見たかったドガの踊り子たち(ピンクと緑)が見れた。この時点で私は満たされていた。
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全盛期の作品と比べると優劣をつけられがちな作品だが、私はどちらかというと晩年の作品の方が好きだ。
視力が著しく低下している中で自分の感覚に従って描かれたタッチや色使いに私は惚れ惚れしてしまう。
幼少期から長年バレエを習っていたこともあり、この1枚を見ただけで照明の眩しさとソワソワした踊り子の息遣いが鮮明に思い出される。
でも一番惚れ惚れしたのはノーマークだったエル・グレコの羊飼いの礼拝。真ん中で光る幼いイエスとその周りの人たち。遠くから見えたときの異様さと神秘さに引き寄せられて、近くで見たときの筆のタッチに狂気を感じた。
エル・グレコの作品は実際に生で見たことはなかった。雑誌や画面上で見たときも特に気になることはなかったが、この美術館展で1番衝撃を受けることとなった。
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1つずつゆっくりと展示を楽しみ、次のコーナーに行こうと館内を見回したとき奥の部屋にポツンと照らされたこの絵に目を奪われ、私は立ち止まった。
遠くから見えたその絵はとても神々しかった。
イエスとマリアだけが館内の暗闇に浮かんで釘付けになった。光の神秘主義的な理論がエル・グレコにはあったらしい。
近づいてみると想像に反して、恐ろしく荒々しいタッチで驚愕した。
遠くで見たり近づいて見たり私は大変だった。
だが、これが美術館に足を運びたくなる要因だ。
いつか学問的に美術史を学んでみたい。
添付した絵はプラド美術館所蔵のもので、メトロポリタン美術館のものとは異なる。私が見たのはこの絵だと思うのだが…。
3年前の視覚的記憶というものは不明瞭で、自身に残るものは匂いや感情などの不確かなものばかりである。
回顧録に正確性を求めないほうがいいのかもしれない。
あとはジャン=ジェロームのピュグマリオンとガラテア。天使にお願いして自分の作った彫刻に命を吹き込んでもらう。命が芽生えた瞬間に抱き合う彫刻と師。足はまだ彫刻のまま白く無機質で、抱き合った上半身は熱を帯びてなめらか。ロマンチックで見惚れちゃって目が離せなかった。瞬間的ワンシーンをこんなドラマチックに描けたらいいよなあ。
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【ピグマリオンとガラテア】
ロマンチックがすぎる。この絵を見ただけで短編が書けそうだ。ギリシャ神話は本能的で荒々しくてロマンチックでとても好きだ。
絵画でもミュージカルでもバレエでも、恋に落ちるという瞬間的なシーンはため息が出るほど美しい。
情緒的な人間の感覚は遥か昔から普遍なんだろう。
そういう作品を集めた展示があったら是非とも行きたい。
2時間近くも居座っちゃった。図録買おうと思ったけどレジが長蛇の列で断念。その足で近くのあべのハルカス美術館へ。
思ったより長くなりすぎてしまった。
不明瞭で無益な文章を書き連ねられるのは私の才能らしい。
福富太郎の眼、展。は次の投稿に纏める。
ではでは。