銀行のウェブアクセシビリティを調査して気づいたこと〜レポート番外編〜
こんにちは。アジケでディレクターをしているアキです。
今回は、昨年10月にアジケが公開した「銀行のウェブアクセシビリティ調査レポート」の番外編をお届けします。
銀行のウェブアクセシビリティ調査レポートとは？
本レポートは、ウェブコンテンツのアクセシビリティに関するガイドラインであるWCAGの達成基準をもとに、アジケが独自に調査を行ったものになります。
アクセシビリティに関する調査結果から、アクセシビリティ対応の進め方に関する提言まで書かれた内容となっているため、是非ご覧ください！
WCAGは、「Web Content Accessibility Guidelines」の省略表記で、ウェブコンテンツのアクセシビリティに関するガイドラインのことです（詳しくはこちら）
この記事で伝えたいこと
WCAGの達成基準をもとに調査を進める中で、WCAGにない観点で気になった点がいくつかありました。
この記事では、本レポートでお伝えしきれなかった気づきや考察についてまとめています。
調査方法
今回の調査は、以下の方法により実施しました。
調査対象：3行のメガバンクと62行の第一地方銀行のWebサイト
対象ページ：TOPページ
調査方法：対象ページを目視で確認
調査期間：2023年8月28日〜9月8日
WCAGの達成基準の観点以外で気になった気づき・考察
トップページに文字サイズ変更や音声読み上げ機能を配置
文字サイズ変更機能は、ページ内の文字サイズを変更できる機能です。
例えば、「小」「中」「大」と書かれたボタンを押すことで文字サイズを切り替えることができます。
音声読み上げ機能は、ページ内のテキストを読み取り、音声を再生する機能です。
この2つの機能、どちらもページ上部に配置されているのをよく見かけますよね。
調査対象のWebサイトの内、文字サイズ変更機能は31%、音声読み取り機能は17%も存在しました。
一見、文字サイズを大きく見る必要がある高齢者や視覚に問題のあるユーザーに配慮した対応として有効なものに見えますが、これらの機能を配置するという観点はWCAGの達成基準には含まれていません。
調べたところ、この対策はアクセシビリティの対応として必ずしも必要ではないことがわかりました。
なぜ必要ないのか？
高齢者や視覚に問題のあるユーザーは音声読み上げソフトや文字拡大ソフトといった支援機能をインストールしたり、ブラウザの設定を行った上で普段からWebサイトを見ており、それぞれのWebページで対応する必要がないためです。Webページ側でこれらの機能を配置する場合、すべてのWebページに反映しなければいけない非効率な対応になります。
これらの機能を実装する前に、支援機能を用いてWebサイトを見られる前提でコンテンツを作ることが大切です。
こちらについては、以下の書籍にも詳しく記載があります。
アクセシビリティに関して大変わかりやすい内容のため、弊社でも参考にしています。
ログイン表記とログオン表記が存在する
こちらはライティングに影響する話ですが、各銀行のインターネットバンキングへのボタンの中で、「ログイン」という表記と「ログオン」という表記の両方が存在することに気づき、改めて調査しました。
調査した結果、調査対象のWebサイトの内、ログオン表記となっているWebサイトは18%存在し、ログイン表記の方が多い結果となりました。
これらの表記について、意味の違いはあるのでしょうか？
調べてみると、「ログイン」と「ログオン」は一般的にはほぼ同義語であり、明確な差異や区別はないことがわかりました。
なお、元々はシステムや製品の違いによって2つの用語が生まれたようです。
歴史的には、インターネット関連やUNIX系システムなどでは「ログイン」という表現が好まれ、米マイクロソフト（Microsoft）社の製品（Windowsなど）では「ログオン」がよく使われてきたため、それらの影響を受けたシステムではそれぞれの表現が用いられる傾向にある。
よって、インターネットバンキングの自身のアカウントにアクセスする場合は、ログイン表記とログオン表記はいずれも正しいことになります。
ただし、利用者にとってどちらの方が意味が通じやすいかは検討した上で使用する必要があると考えます。
また、サービスの中でラベルの表記は統一しましょう。
もし統一されていない場合、ラベル変更は比較的簡単に行えるため、誤解を与えないよう早期に対応しましょう。
ちなみに、「ログイン」⇔「ログアウト」であり「ログオン」⇔「ログオフ」となります。
おわりに
本記事では、「銀行のウェブアクセシビリティ調査レポート」で書ききれなかった内容をお伝えしました。
ご興味が湧いた方は、是非本編のレポートもご参考いただけると幸いです。
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