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『北北西に雲と往け』を読んで

5月中旬、祖母を亡くしてすぐのことである。私は自分の心の修復に躍起になっていた。早くこの心の痛みを何とかしなければ、私は祖母を亡くした悲しみや苦しみにこの先しばらく浸ることになってしまいそうで、大学の単位が危機に面しており早く健康な精神状態にならなければと焦っていた。
幼少期、亡くなった祖母からクリスマスプレゼントやお年玉の代わりとして本が贈られた。学生時代の趣味が読書だった私は、病んだ精神状態を慰める手段として読書以外の方法を思いつかなかった。

一口に本と言っても、沢山のジャンルがある。私は学生時代からよくエッセイを手に取り、人生の指針としていたので、エッセイを調べて本屋に赴いた。本が陳列されている棚を見て好きな作者の本を探しているうちに、「今の自分に、活字の本を読む気力は果たして残っているだろうか」と思い始めた。私は鬱状態になると活字を目で追い、内容を理解することが難しくなる。当時もそんな状況だったが、なんとしても1冊、私の心を軽くする本を買って帰りたいという何かにしがみつきたい気持ちから、その本屋の滞在時間は1時間を超えた。1時間を超えて、漫画という選択肢を考えた。主に絵を見て状況理解がしやすいし、1冊があまり長くないので読みやすいだろうと考えた。

この状況で出会った本が、『北北西に雲と往け』だ。

帯に書いてあるあらすじを読んで、一気に興味が湧いた。中でも一番私の心を震わせたことが、この話に出てくる車の車種がジムニーであることだ。私は今、人生を歩んでくるうちに拾い集めたいくつかの小さな夢を持っていて、そのうちの1つが「自分の貯金でジムニーを買う」なのだ。その他にも「平屋を買う」「親の手を離れる」「大学を無事卒業する」など平凡とも思えるような小さな夢がある。それらの夢を叶えて私の人生はようやく形になる。誰の人生もそんな夢というか目標をかなえ続けることで成り立つのかもしれないけれど、同じ骨組の人生なんて誰も歩んでいないと思うのだ。これからの人生、何が起こるかもどんな思想を持ち歩くかもわからないが、この本だけはこれからも人生の指針だと思う。

絶望のどん底にいた私にこの本をめぐり合わせてくれて、もう一度夢に向かって生活を続けようと考えさせてくれた作者には感謝し、また尊敬しているのだ。


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