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秋ドラマ 我が家のNo.1決定戦(「無能の鷹」VS「全領域異常解決室」VS「ライオンの隠れ家」)
年末を迎え、秋の新作ドラマが最終回を迎えています。
今季、私の推しているドラマは、金曜深夜のテレビ朝日系「無能の鷹」と水曜夜のフジテレビ系「全領域異常解決室」で、家族の推しは、金曜夜のTBS系「ライオンの隠れ家」でした。
その日の放送が終わった翌日、自分の好きなドラマの面白さを家族に語るということが続きました。
そして、12月20日(金)に「ライオンの隠れ家」が最終回を迎えたことで、この感想戦は一段落を迎えました。
そこで、この3つのドラマを振り返り、「我が家のNo.1秋ドラマ」を決定していきたいと思います。
なお、ここで書かれる内容に対して、異論が多々ありましょうが、あくまでも「我が家のNo.1決定戦」ですので、そこはご容赦お願いいたします。
各ドラマの概要
「無能の鷹」菜々緒演じる圧倒的な"デキる"オーラを放つのに実は衝撃的に無能なOL
主要キャスト:菜々緒(鷹野ツメ子役)、塩野瑛久(鶸田道人役)、井浦新(鳩山樹役)
「全領域異常解決室」藤原竜也演じる超常現象のスペシャリストと広瀬アリス演じる警察官が異常事件に挑むミステリー
主要キャスト:藤原竜也(興玉雅役)、広瀬アリス(雨野小夢役)、小日向文世(宇喜之民生役)
「ライオンの隠れ家」柳楽優弥演じる自閉スペクトラム症の弟と暮らす兄に突如現れた謎の少年
主要キャスト:柳楽優弥(小森洸人役)、坂東龍汰(小森美路人役)、佐藤大空(ライオン役)
各ドラマの魅力:無能の鷹
1. 主人公・鷹野ツメ子のキャラクター性
主人公の鷹野ツメ子を演じた菜々緒さんの演技が、視聴者を魅了しました。前情報まったくなしで第1回を見た私は、菜々緒の初登場シーンが、キラキラしていたので、「菜々緒はできるOLだけど、無能を装って、社内のトラブルを解決していくドラマなんだろう」と予想していました。
その予想が開始4分で見事に裏切られます。入社3か月でホッチキス止めくらいしかできない無能っぷり。「本当に無能な役なのかい!」と思わずテレビに突っ込みそうになりました。
そう、ツメ子は一見「有能そう」に見えるものの、実際には仕事ができない「無能」という設定。しかし、その「無能さ」が逆に奇跡的な結果を生むという展開が斬新でした。菜々緒さんのコミカルかつシリアスな演技が、キャラクターの魅力を最大限に引き出していました。
2. ツボる行動や台詞の数々
主人公の鷹野ツメ子(菜々緒)が発した印象的な行動や台詞は、SNSでトレンド入りしたりしました。私がツボったのは次の行動や台詞たちです。
部長が祝日に間違え出社しパソコンがフリーズ。そこに鷹野も間違って出社。部長は鷹野に「鷹野これなんとかならんか? 」と尋ねる。
すると鷹野は「ああ、これなら」と、自分のデスクへ。鷹野は自分のパソコンをつけ、「数日前から私のパソコンも同じ状態です」と自信満々に言ってのける。フリーズの直し方を知らないどころか数日放置。
「じゃあ、パソコンが動かない間何してたんだ?」と聞く部長に、鷹野は「ずっと画面を眺めていました。空の青に似ているなと」と返す。
この場面、何度見ても笑えます。想像の斜め上をいったシーンで忘れられません。私は現役時代、パソコンのトラブルがあると直しに行く係だったので、「数日前から私のパソコンも同じ状態」という言葉が刺さりまくりました。これを放っておけるメンタルに大笑いでした。
「分からないところを解決すれば難しくなくなるとお思いでしょ。でも駄目です。何が分からないかが、分からない。」
第1話からこの台詞です。この割り切りっぷりが気に入りました。「パソコンがインターネットをやめました」
「インターネットに接続できません」の画面を見て、擬人化したこの台詞。無能ですが、この台詞のセンスが好きすぎます。「恥ずかしながら、画面を見ただけで吐き気がします。ITは私のことが苦手なようです」
自身の無能さを自覚しつつも、明るく受け入れる姿勢が印象的です。主語が自分ではなく、「ITは」というところが好きです。苦手な人がこういう返し方をしてくれると嬉しくなります。「失敗しても覚えてませんから」
腹が立つ言葉です。でも、鷹野が言うと「そうだよなあ」と納得してしまいます。「よく分からないけどすぐクビになったみたい。気付かないまましばらく出社してたけど。」
最終回、鶸田に「アメリカの会社は?」と聞かれて答えた台詞です。すぐクビになったのは分かるけど、「気付かず出社」してたって!本人もそうだが、雇ってる会社もおかしいだろ!
3. コメディとシリアスの絶妙なバランス
本作は、コメディ要素とシリアスなテーマを絶妙です。鷹野の「無能さ」による笑いを誘うシーンが多い一方で、働くことの意味や、個人の価値について深く考えさせられる場面もありました。
職場での人間関係や、上司や同僚とのやり取りを通じて描かれる「チームの成長」は、ドラマとして面白かったです。
最終回で「部の全員が、鷹野がアメリカから戻ってきた幻を見るシーン」は、感動的なシーンと思わせといて、いきなり完全に現実に戻るといったところなど、最後まで笑わせてくれました。
まとめ:みんな生きてるだけで偉いのでは?
最終回、部のお別れ会に幻として現れる鷹野。
心配して声を掛ける元同僚たち。
鷹野「仕事が出来なくても、みんな生きてるだけで偉いのでは?」
鳩山「…そうだ鷹野。その通りだ。」
雉谷「でもみんながみんな鷹野みたいにはなれないんだよ。」
鷹野「なれますよ。みなさん私より遥に優秀ですから。」
「無能の鷹」は、ユニークなキャラクター設定と予測不能なストーリー展開、そして職場という身近なテーマを通じて、多くの視聴者に笑いと感動を届けた作品です。菜々緒さんの演技力や、コメディとシリアスのバランスが絶妙で、気軽に楽しめる一方で深いメッセージ性も持つドラマでした。
「光る君へ」で立派な一条天皇をやっていた塩野瑛久が、鷹野の気弱な同期としてもう一人の主役を演じていたのも好印象でした。
各ドラマの魅力:全領域異常解決室
1.発想の面白さ
「全領域異常解決室」は、神隠しや狐憑きなど、日本の神話や伝説を基にした超常現象を扱っています。物語は、主人公の雨野小夢(広瀬アリス)が、室長代理の興玉雅(藤原竜也)と共に様々な異常事件に挑む姿を描いています。
最初は、心霊サスペンスかと思い見始めたものの、謎の神「ヒルコ」の正体に迫ることが物語を通しての柱となっていく過程にどんどん引き込まれていきました。
ストーリーが進むごとに、神々が神話の時代からずっと転生を重ねて現代の日本にも存在しているということが明らかになります。
第6話で、興玉が自らを神であると告白し、ヒルコと転生した神々が全面戦争状態であることが明らかになり、物語は大きな転換点を迎えます。
日本神話が大好きな私は、家族の御朱印集めに付き合いながら、「この神社は、どの神様をまつっているのだろうか」という説明書きにいつも興味津々です。神話に出てくる神様たちは、私の中では、特撮ヒーローと同等の存在です。
その神様たちが、神々が神話の時代からずっと転生を重ねて現代の日本にも存在しているという設定は、私に刺さらないはずがありません。神様が、現代において神様同士で戦争をしているって、なんて壮大な試みでしょうか。次はどの神様が出てくるのか、楽しみで仕方ありませんでした。
ミスリードで、誰がヒルコか分からなくするストーリー展開で、毎週楽しみで仕方なくなっていきました。
楽しみにしている人向けにやっている「FODでは、今すぐ来週分を見ることができます」という誘惑に何度負けそうになったことでしょう。
2.個性豊かな登場人物?ではなく神様たち
【全決】メンバー
・興玉神(おきたまのかみ):伊勢神宮(内宮)祭神・人間の善悪を見定める力を持つ神
・天石戸別神(あめのいわとのわけのかみ):「黄泉送り」で、神々を黄泉の国に送ることができる。
・天宇受売命(あめのうずめのみこと):芸能の神・特定の神様を踊りと鈴の音によって呼び出すことができる
・宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ):農耕や食物の神・稲荷神
・豊玉毘売命(とよたまびめのみこと):海神の娘。・水を自在に操る
・猿田毘古神(さるたびこのかみ):交通安全の神・特殊能力は道案内
・少名毘古那神(すくなびこなのかみ):医薬の神
【京都本部】
・火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ):火の神
・大綿津見神(おおわたつみのかみ):海の神
【ゲスト】
・大宜津比売神(おおげつひめのかみ):食物の神
・大物主神(おおものぬしのかみ):国造り
・伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと):鏡を作った神
・建御雷(たけみかづち):国譲りの交渉
・布刀玉命(ふとだまのみこと):祭りを行う司祭者
・市寸島比売命(いちきしまひめのみこと):水を司る神(予知)
・大国主神(おおくにぬしのかみ):国造りの神
・月読命(つくよみのみこと):三貴神の一柱
・建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと):三貴神の一柱
古事記・日本書紀で有名な神々が次々と登場します。ゲームキャラになっている神様も多いですね。
ツクヨミ、スサノオが出てくるだけで、神話好きにはたまりません。こうなると最終決戦にはアマテラスが出てくるかと期待しましたが、そこまではありませんでした。ちょっと残念!
最終回、全決対京都本部の対決シーン。全決の神様の戦隊ポーズ、対するヒノカグツチの腕から炎が吹き上がるシーン、特撮ヒーローものを思わせる演出にわくわく感が止まりませんでした。
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3.予測を超える展開
第6話で、オカルト的ミステリードラマから、壮大なフィクションの世界に転換します。
第7話、いきなり4か月前に戻ります。大宜津比売神が殺され、雨野が
「興玉、報告!」
と叫びます。
「えっ、えっ!何が起こったの?何で呼び捨て?4か月前から知り合い?」
見ているこちらの脳が混乱しました。1回見逃しちゃったのか?と頭をよぎります。こちらの混乱をよそに進んでいくストーリー。
この第7話がエピソード0。これまで何があったのかが明らかになる回です。ここから、物語が急展開。
第8話、人間に絶望した三貴神であるツクヨミの裏切りと死、(この後FNS音楽祭のため1週休み。なんと長かったことか)第9話、興玉のピンチに呼ばれる「荒ぶる神スサノオ」が虐待を受けている子ども、そして、SNSに毒された人間たちの集団自殺が始まる…とストーリーは息をもつかせぬ展開に。
呪符で誰かを乗っ取るという手法で、だれがヒルコか分からないまま、最終回を迎えます。
最終回中盤で、京都本部から火の神(溝端淳平)と海の神(真壁刀義)の登場と、登場する神様も豪華になっていきます。
結局、事件は解決するのですが、ヒルコは登場せず、いくつかの謎を残したまま終了しました。
続編が見たい!!
まとめ:藤原竜也が魅せるの印象的な台詞と展開
興玉が放つ深い意味を持つ台詞は、ドラマの核心を表現していました。「全て知ろうとするなんて人間の傲慢です」という言葉は、現代社会への警鐘として繰り返し語られました。
最終回では、興玉が人間と神の関係について重要な言葉を残しました。
「どんなに愚かでも、人間を守る責務から僕らは逃れられない。何度裏切られても、人間たちを信じ続けるしかないんです」
この台詞は、作品全体のテーマを集約したものとなっています。
藤原竜也演じる興玉の難解な長台詞と説明的なセリフは、まるで詩のように美しく、多くの作品で鍛えられた藤原の演技力によって、説得力のある形で表現され、「さすが藤原竜也」と唸らずにはいられない作品でした。
各ドラマの魅力:ライオンの隠れ家
1.巧みなストーリー展開
謎をちりばめながら、家族の絆を丁寧に描く構成で、サスペンス要素と人間ドラマを見事に融合させています。
謎が徐々に明かされる展開
ライオンと名乗る少年の正体は、実は橘愁人という名前で、小森洸人、美路人の姉である愛生の息子であることが徐々に明らかになっていきます。最初は単なる置き去りにされた子どもかと思われましたが、その背後には虐待や政治的な問題が絡んでいたことが分かります。
毎回、その回の物語が無事解決したと思ったら、最後の数分で別の展開が起こり、次週が待ちきれなくなる演出も見事でした。
第1話からの伏線の回収
第1話から度々登場する「海猫」。 最初は、兄弟の住む海辺の町の象徴として描かれていると思われました。しかし、最終話で、洸人、美路人、ライオンがそれぞれの道へ進むシーンで再び海猫が登場します。 3羽の海猫は、まるで檻から解き放たれたように、それぞれの未来に向かって力強く羽ばたいていきます。
第1話で美路人が「海じゃなくても、ウミネコはウミネコです。どこを飛ぶかはウミネコの自由です。ウミネコだって違う景色見たいときあります」と語った台詞が最終回につながりました。最終回のスタッフクレジットの背景にも、この3羽のウミネコが飛んでいく様子が描かれ、物語の締めくくりを象徴的に表現しています。このウミネコは作品全体を通して重要なキーワードとして何度も映像で登場しました。
2.それぞれの成長を丁寧に描写
洸人は、長年「僕がいなければみっくんは何もできない」という思い込みがありました。でも、ライオンとの出会いを通じて、自分が相手のためと思いながら実は縛っていたことに気づきます。最終的に東京の大学に進学し、本に関わる仕事を目指すという夢を追うことを決意します。特に「美路人の絵を集めた本を出したい」という新たな目標を見つけ出しました。
みっくんは、自閉スペクトラム症により変化を苦手としていたましたが、予測不能なライオンとの生活を通じて、徐々に変化に対応できるようになっていきました。アトリエ合宿のプレ体験会に自ら参加するなど、家族以外との関わりにも挑戦するようになりました。さらに、自らの意志でグループホームでの生活を選択するという大きな決断をします。最終回、バスに乗って出かける姿は、その成長の表れで、見ている方も嬉しくなりました。
ライオンは、初めはみっくんとぶつかることも多かったれど、次第に互いを理解し合うようになります。特に、みっくんに対して「僕2つ名前があるの。ライオンは強くなるための名前なんだよ」と、自分の状況を分かりやすく説明できるまでに成長しました。
3.俳優陣の素晴らしい演技
小森家の3人、柳楽優弥演じる献身的な兄・洸人と、坂東龍汰演じる自閉症の弟・美路人、姉の子どもの愁人(ライオン)の佐藤大空のそれぞれの演技が、このドラマの人気を高めた要因の一番と言っていいでしょう。
柳楽は、弟思いの優しい市役所職員を見事に演じています。特に、弟に対する献身的な愛情と時折見せる鬱陶しさという相反する感情をリアルに表現し、兄としての複雑な心情を巧みに描き出しています。
坂東は、自閉スペクトラム症の特性を細部まで丁寧に表現し、表情や目の動き、仕草など、その表現の緻密さが計算され尽くしていました。私は仕事上、多くのASDのお子さんを見てきましたが、台詞回しからパニックになる様子まで、本当によく研究されたことが分かりました。坂東の演技が、このドラマにリアリティをもたせました。ドラマのMVPと言っても過言ではないでしょう。
佐藤はわずか5歳。表情や動きは、子どもらしさを保ちながらも、役柄に求められる深い感情を表現することができています。特に、ライオンの持つ複雑な背景や感情を巧みに演じ分ける姿が印象的です。ライオンが抱える秘密や過去の痛みを感じさせる一方で、時折見せる無邪気な笑顔との対比が、視聴者に強い印象を与えています。感情の起伏が激しいシーンでは、彼の演技が非常にリアルでした。例えば、ライオンが自分の本名に反応する瞬間の演技は、緊張感と驚きを見事に表現しており、心を引き込まれました。
まとめ:洸人の気付きが、見ていたみんなに訴えかける
第10話。
みっくん「お兄ちゃん、ライオン助けます。ライオン会いたいです。」
洸人「ずっと支えているのは僕の方だと思っていた。でも今は、僕が美路人に背中を押されている。」
第11話。
洸人「きっと僕も同じ間違いをしてるのかもしれません。「相手のため」そう言いながら、結局は自分のために相手を縛って、家族だから、家族だからって」「あなたも純粋に愛してきた時があったんじゃないですか。それがどんどん駆け違って。あなたも本当気づいてるんでしょう。」「楽ですよ。気付かないまま終わらせられたら。でも、きっとそれじゃダメなんです。」
ライオンが現れなかったら、そして事件が起きなかったら、気付けなかった家族に対する自分のエゴ。そして、みっくんに伝えます。
洸人「家族への感謝の気持ち、愛する気持ちはしっかり言葉にしなければいけない。」「僕一人ではどうにもできないようなこともみっくんのおかげで乗り越えることができました。僕にとって弟はこの先もずっとずっと自慢の家族です。ありがとう。」
このときのみっくんの表情も素敵でした。
洸人、美路人、ライオン。それぞれに成長がありましたが、呪縛から解き放たれた洸人が一番家族への思いを強めたのではないでしょうか。
サスペンス要素もありましたが、温かい気持ちになるシーンがたくさんあるよいドラマでした。
※刑事役の柿澤勇人が少し間抜けな刑事役で出てました。全領域異常解決室では、ラスボスでシリアスなキャラクター。どちらもいい味を出していました。
さて、我が家のNo.1は?
どのドラマも見応えのあるドラマでした。
その中でも、我が家のNo.1は、最終回の盛り上がり方、謎を残したまま終わり続編を期待させるということで、
全領域異常解決室
に決定させていただきます。
なお、主演男優賞は、感情の動きを見事に表現した
柳楽優弥
主演女優賞は、日頃のキャラをぶち壊し新しい姿を見せてくれた
菜々緒
助演賞は、演技の素晴らしさから
柿澤勇人(全領域異常解決室・ライオンの隠れ家)
坂東龍汰・佐藤大空(ライオンの隠れ家)
に決定させていただきます。
なお、現在、全作品ともNetflixで視聴することができます。