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経験的思考と演繹的思考

黒い白鳥と言えば、映画 ブラック・スワン も有名ですが、Nassim Nicholas Taleb(ナシーム・ニコラス・タレブ)氏の著書「THE BLACK SWAN」で、紹介されていた2つのシステムについて紹介しながら感じたことを書いていきたいと思います。


黒い白鳥の話し

はじめに簡単に黒い白鳥の話しをすると、1697年にオーストラリアで黒い白鳥が発見されるまで、白鳥といえば、すべて白いものだ!と信じて疑わなかったそうで、当時は無駄な努力を表す言葉として、「黒い白鳥(ブラックスワン)を探すようなものだ」ということわざもあったそうですが、はじめて黒い白鳥が発見されたとき、今まで数えきれない白鳥を観測して確認してきた当たり前の話が、たった1つの観測結果で完全に覆されたというのが黒い白鳥の話しです。

経験が論理的な思考を超える

黒い白鳥が発見されたことによる人間の反応や行動について、ナシーム・ニコラス・タレブ氏は「ブラック・スワン」の中でこのように語っています。

第一に、異常であること。つまり過去に照らせば、そんなことが起こるかもしれないとはっきり示すものは何もなく、普通に考えられる範囲の外側にあること。
第二に、とても大きな衝撃があること。
そして、第三に、異常であるにもかかわらず、私たち人間は、生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっち上げて道筋をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること。

ブラック・スワン

たしかに、今ままで数えきれない数の白鳥を見てきて、その経験から「白い白鳥しかみたことがない」から、「白い白鳥しかいない」に変わっていったんだろうなと思います。
たしかに積み上げてきた経験を信じることも共感できますし説得力があると感じている自分もいます。

経験的思考と演繹的思考

ではなぜ、このような思考になるのか、ナシーム・ニコラス・タレブ氏はこのような行動になるのは、人間の2つの思考が関係していると語っていて、システム1とシステム2という表現で出てきます。いわゆる経験的思考と演繹的思考によるものになります。

システム1
経験的思考は、苦のない、自動的、素早い、無意識的、平行処理可能、情緒的、そして誤りを犯しやすいシステムで、これを「直感」と読んでいる

システム2
演繹的なシステムであり、私たちが普通、「思考」と言えばこれを指していて、教室で使うのがこのシステムで、努力しないと使えない演繹的、遅い、理論的、順次処理の、漸進的、そして意識的、そんなシステム。経験的思考に比べて誤りを犯しにくいし、どうやって結果にいたったかを自分でもわかるから、間違ったら引き返して状況にあうように修正できる。

ブラック・スワン

システム1の主な特徴は、使っている私たちも使っているのを意識しないこと。つまり、「黒い白鳥がいる証拠はないこと」と「黒い白鳥がいない証拠があること」を取り間違えがえているとだと書籍の中では書かれています。
人は、問題から逃げ出すときには素早く動くシステム1を使うように作られていて、意識する前にすぐさま行動できるようになっているそうです。
これは、神経生物学の世界で、情緒システムの研究 から私たちが危険を認識する前に危険の存在に反応するという習性があるらしく、例えばヘビがいるのを認識する何ミリ秒か前に、まず怖いと感じて反応し始めるのだそうです。すごいですね。たしかに、処理の遅いシステム2で動いていたら、気がつくとヘビにガブっと噛まれているかもしれませんね。

演繹的思考は、意識しないと動かない

誤りを犯しにくいという意味でもシステム2の演繹的思考はとくに仕事での出番は多いと感じていますが、困ったことに人間の性質の問題は、多くの場合、私たちがシステム2をほとんど使えない、あるいは、システム2を使うのを忘れてしまうことにあると、書かれています。改めてシステム2の特徴を並べてみると

システム2:演繹的思考

  • 努力しないと使えない演繹的(一般的な原理や原則などから、個別の事項や派生的な事柄を導き出すさま)

  • 遅い

  • 理論的

  • 順次処理の漸進的、そして意識的

頭に負荷がかかるシステムであることは分かりますし、常に使っていると頭から湯気が出てきそうですよね。
私はエンジニアになってから、さまざまな考え方、マインドを見たり聞いたりしてきましたが、その多くがこのシステム2を使うことにも繋がってくると、ブラック・スワンを読み進めているうちに感じたことでした。

現代社会において重宝するのは演繹的思考か

システム2ばかり話していますが、システム1も非常に重要だと私は考えています。というのも、システム1は苦がない、素早い、平行処理可能というメリットがありますので、そこはうまく活用したいところです。
私が思うにシステム1を使う上で大事なことは経験の質だと考えていて、過去の経験は偶然得たものなのか、システム2の演繹的思考を使った結果から得られたものなのかで、システム1の信頼性がまったく違うと思うからです。
例えば、経験の質が悪いシステム1を使っている人の場合、それはただの昔話しで、あなたの感想ですか?みたいな会話を聞いたことも、一度はあると思います。
一方、経験の質が良いシステム1を使っている人の場合、何気なく出てくる一言がみんなをハッとさせたり、行き詰まった問題を前に進める解決への糸口になったりということも、経験があるかと思いますので、どちらのシステムもバランスよく使って行きたいと思います。

まとめ

エンジニアになって1年半が過ぎたとこで、最近特に感じることは Copilot に聞けば、それなりに動くコードが出来てしまったりしますが、そこで終わってしまうと、システム2を使わないままで、システム1の質は悪いままというのが自分の実感としてあるので、システム2は順次処理で遅いというデメリットはありますが、システム1、2の関係を理解した上で意識的にシステム2を使いながら、日々の仕事をしていけば、きっと1年、2年先の自分が違うものになるのではないかと思います。

最後に

みなさんも、システム2(演繹的思考)を意識して質の高い経験を自分の資産として常に積み上げつつ、無意識に使えるシステム1(経験的思考)の質を上げていきませんか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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aki366 / akihiro okuda
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