金融安定理事会による暗号資産およびステーブルコインに関する勧告(2023年7月17日)について

今後の暗号資産やステーブルコインに関する世界的な規制の流れを決定づけるハイレベルな方針について、金融安定理事会(FSB)により最終的にとりまとめられ、公表されています。その内容について整理します。

金融安定理事会(FSB、事務局はBIS) による暗号資産に関するグローバルな規制フレームワークについて

FSBの本資料は暗号資産に関して、以下の事項を示すものです

  • 2つの勧告による規制・監督・監視のフレームワークの提示

    1. 暗号資産に関する勧告 [CA (Crypto-Asset) Recommendations] : 暗号資産に関する活動および市場に関し、規制・監督・監視にかかる勧告事項

    2. グローバル・ステーブルコイン(GSC)に関する勧告 [Global StableCoins (GSC) Recommendations] : GSCに関する活動および市場に関し、規制・監督・監視にかかる勧告事項。ただし、この勧告は中央銀行デジタル通貨(CBDCs)を対象外としています。

  • 今後のFSBの動向

    • G20に向けて、FSBとIMFによる共同報告書を提出予定(2023年9月)

    • 2025年までに、FSBは今回の勧告に関する実行状況をレビューする

    • FSBはIMF、世界銀行、標準化団体(SSBs)と共に以下を行う。

      • 勧告および国際基準の実施を促していく

      • 非FSBメンバー国の規制の進捗と課題を把握する

      • 国境を超える課題を監視し対処する

2つの勧告に関して(資料の開示先など)

今回の規制フレームワークの勧告に至る経緯など

  • 2022年2月 : G20がFSBに暗号資産とステーブルコインについて、規制・監督・監視の枠組みを構築するように要請

  • 2022年10月 : FSBが初期バージョンのフレームワークを公表

  • 2023年7月 : 暗号資産に関する勧告とGSCに関する勧告を公表 (本記事の内容)

  • 2023年9月 G20 (予定) : 今回の勧告がIMFとの共同報告書のインプットとなる予定

ハイレベルな勧告におけるフレームワークについて

規制フレームワークを確立するためのアプローチとして以下の3つを原則としています。

  1. 同じ活動・同じリスクには、同じ規制を適用する原則 (“same activity, same risk, same regulation”)

  2. 各法域の当局が国内規制などを適切行えるように、ハイレベルかつフレキシブルなフレームワークとすること

  3. テクノロジーに対して中立であること:経済的機能、金融の安定性に関するリスクをベースに設計を行い、技術については中立であることを求める

暗号資産およびGSCに関する勧告のカバー領域

規制に関する12の原則に分類し、暗号資産およびGSCのカバー領域について取りまとめた表が下記となります。なお、FSBによる昨年の資料(2022年10月)には、既に今回の枠組みが提示されています。

「暗号資産に関する勧告」の概要

  • 勧告1: 規制権限と手段

  • 勧告2: 一般的な規制の枠組みの適用

    • 包括的で、実効性のある規制・監督・監視、「同じ活動、同じリスク、同じ規制」の原則

  • 勧告3 : 国を越えた協力、調整、情報共有

  • 勧告4 : リスク、規模、複雑性などに応じたガバナンスの適用

  • 勧告5: リスク管理

    • AML/CFT、FATFのトラベルルールについても必要

  • 勧告6: データの収集、記録、報告

  • 勧告7: 開示

  • 勧告8: 相互接続と相互依存から生じる金融安定リスクへの対処

  • 勧告9: 複数の機能を有する暗号資産サービスプロバイダーに対する包括的な規制

「グローバル・ステーブルコイン(GSC)に関する勧告」の概要

  • 勧告1: GSCを規制し監督するために当局が準備を行うこと(規制、監督、監査の為)

  • 勧告2: GSCに関する活動と機能を包括的に監視する

  • 勧告3: 国境を越えた協力と調整、情報共有の実施

  • 勧告4: ガバナンス構造と分散型運営に関する包括的なフレームワーク

  • 勧告5: リスク管理 (AML/CFTなどを含む)

  • 勧告6: データの保存とデータへのアクセス

  • 勧告7: GSCの回復と解決

    • 回復、破綻処理、または秩序ある清算を支援するための適切な計画を策定し、GSC のアレンジメント 内の重要な機能および活動の継続を含め、金融システムへの波及を防止すること

  • 勧告8: 包括的で透明な開示

  • 勧告9: 償還の権利、価値の安定化、健全性に関する要件

  • 勧告10: 規制、監督、監視要件への操業開始前からの適合

Appendix

FSBは本件に関して次のような組織と密接に協働している

  • The Basel Committee on Banking Supervision (BCBS)

  • Bank for International Settlements (BIS)’ Committee on Payments and Market Infrastructures (CPMI),

  • International Organization of Securities Commissions (IOSCO)

  • Financial Action Task Force (FATF)

  • IMF

  • World Bank

  • Organization for Economic Cooperation and Development (OECD)

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