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【ピアノ】バッハのフーガを、もう少しカンタンに考えてみよう。

「フーガをもっとカンタンに、効率よく練習するためには、こういう考えもできるのでは・・・?」

私がこの間、久しぶりにバッハの平均律とフーガを弾いて、感じたことをシェアしたいと思います。
抽象的な表現が多いですが、お読み頂けたら嬉しいです。

本当に大切なこと

平均律とフーガ、全然見てないなー、ちょっと見てみるかーと、何氣に昔弾いた曲をパラパラと弾いていたんですよね。
その時はきっちりパートを分けてという細かいことをせずに、両手で全部大まかに弾いていただけなんですけど。

その時に、「まず全体」という考えが思い浮かびました。

フーガを練習する際の、一つの考え方として、
「まず全体、それから部分」という捉え方をしてみるといいんじゃないかと思ったのです。


昔は、各声部を分解して、把握して、「全パートを聴けなければいけない!そうじゃないと弾けたとは言えない!!」という観念、そうでなければという思いがありました。

まるで聖徳太子のように一度に何人もの話が聞けるかのように・・・

でも人間は、機械じゃない、AIじゃないんだから、そんなこと、実際には無理ですね。
そしてそんなガチガチの頭のままでフーガを弾いても、逆に音が聞けなくなってしまう。


そうではなくて、全体性をもっと大切にして、曲全体のハーモニー、響き、雰囲気、など、全体を大きく聴くというか、「全体で一つ」という認識をして、あとは要所要所でバランスを考えていく、という感じ。

細かな微調整は、後からいくらだってできます。

そもそもフーガって、各声部の絡み合いの妙で一つの音楽を作っているのだから、「より全体のバランス」に氣を配ったほうがカンタンだし、私はそっちの方が本質的なんじゃないかって思いました。


で、部分練習として、要所要所の主旋律を見極め、重要なところ、主張がある箇所とそうじゃない箇所のバランスを見極めながら(聴き分けながら)弾いていく。

その際、もう「主旋律は今、どのパートが受け持っているのか」というのも、もはや分からないままでもいいと思います。
だって、例えば今、主旋律は三声が受け持ってる、とか、そんなの進んでいくうちに、複雑になってきて、分からなくなるじゃないですか。


大事なのは「パートを把握できている」のではなく、「適切な表現ができていること」だと思うから。

実際の演奏でどういう音が出せているか、の方が重要なんだから。
だからもっと感覚的に捉えていいんじゃないかとも思いました。


・・・どうでしょう?


こうして考えて(感じて)みると、ちょっとは、バッハのフーガがとっつきやすいものになると、思いませんか?

で、全体を意識すると、おのずと、部分的なものも、見えてくるんです。


(で、突き詰めると、部分と全体は実は分かれてなかったということに氣付くという・・・おっと、話が逸れそうなのでここでやめておきます)

真面目腐った考え方

私も昔はいちいちパートごとに練習していて、それから全体を合わせる、ということを「徹底しないと」ダメだと思っていましたし、そういう練習が正しいと思ってきたし、それが間違いだとは、思いません。


でも、いざやるとなると、なんだかやる氣が出ない、邪魔くさい。
そして、実際にはそんな練習もまともにしていませんでしたが(笑)


何よりこれは、効率が悪い悪い。と、今思う本音。


もちろん、「このパートはどういう旋律を出しているんだろう」という「確認作業としての声部の練習」というのはありますが、それも、最終的には曲としてのまとまりを作っていくための一作業なんですね。

だから、練習方法も、多くの方が(多分)されている、

・各パートを分けて練習、その後まとめる、、、

という「部分→全体」という捉え方を逆にして、まず全体の雰囲気とかハーモニー感とか、より全体性、一体感を感じて、それから部分を調整というほうが早いし、感覚的にもラクな氣がします。

それを○小節ごととか、キリのいいところで小分けにして練習する。


きっとこの方が、ややこしさが抜けてアタマが柔らかくなる感覚があるし(私はそうでした)、「聴かなきゃ!」とガチガチになっているより、逆に聴けてくるというパラドックスが起きてくるはずです。

そして、曲そのものの美しさを感じやすくなると思うのです。

またまたしつこい文章になってしまったけど、大切なのは「バランス」、そして「シンプルさ、簡潔さ」なので、複雑に考えることを一旦手放し、全体性に目を向けて弾いてみると・・・

ア~ラ、こんなに簡単に弾けちゃうの?

なんか、むずかしく考えすぎていたかもしれない・・・

ということに、なるかもしれません。


・・ただ、そこからバランスを考え、より完成度を上げていくために、つまりより立体的な演奏に仕上げるためには、それだけ聴ける耳を養う必要があるので、そこは修練が必要になってきます。
そこで・・・

より立体的な演奏にするために

フーガをシンプルに捉えなおしたところで、この後必要になるのは、
より完成度を上げていくために、どうすればいいか、なのですが、私は前からフーガについては「縦の響きを意識する」ということを考えていたことがありました。

そしたら、とある個人ピアニストさんのサイトで、全く同じことを言われていたので、ああ、私の見解は間違っていなかった、と嬉しく思ったことがあります。

音楽は、基本メロディーと伴奏、で流れていく、つまり横の流れというか、楽譜も、左から右に、音が「流れて」いきますよね。
だからあまり縦の響きというのは意識されることは少ないと思うんですが、フーガの場合は、横プラス「縦の響き、縦の意識」がとても大切になってくるんですよね。


フーガは伴奏とメロディーという役割がはっきり分かれていない、というかそういう概念?がない音楽なので、横の流れだけだと片手落ちというか、何が言いたいのか分からないような、ぼんやりした音楽になってしまいます。


ただ、私が言いたいのは、「フーガだからと言って難しく考えすぎずに、もっとシンプルに捉えよう」ということ。
そうすることで見えてくるもの、感じるものがあるかもしれないよ、ということなのです。

そして前述した「要所要所での主旋律を見極め、重要なところ、主張がある箇所とそうじゃない箇所のバランスを見極めながら(聴き分けながら)弾いていく」という部分練習を取り入れていく。


そしてそれが、自然と「縦の響き」に繋がってくる、立体感のある演奏に繋がってくると私は感じます。

(縦の意識で弾くにはどうしたらいいの?ということについては、「縦の響きをただ意識してください」としか言えないので、こうすれば縦の響きができるよ!という方法は言えないのですが、やっぱりここでも、それを聴ける耳を養う、ということになると思います)

(でも、意識することで、そういう耳も自然に育っていくんだと思います)


最後に

「物事はシンプルに考えた方が上手くいきます」

これは角聖子さんの本での言葉。(音楽の友社「ピアノ力をつける!~これなら弾ける、必ず続く~」より)

フーガの練習にも、この言葉は大いに役立つと思いました。
シンプルイズベスト、ですね。

そして最後に、私の先生が昔、フーガについて面白いことを言われたのを覚えていますので、この言葉を紹介して、記事を閉じたいと思います。



「三声も四声もいっぺんに聴けるわけがない。いかに聴いてるフリして弾くかやで。」



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