「ミスをしないためには?」→「ミスしないこと」にフォーカスしないこと!
ミスしてはいけない、に縛られまくった私
ピアノを弾いていて一番気になること、と言われて、大多数の人が答えるであろう「ミスタッチ」。
私が先生に言われたことで、ものすごくインパクトがあり、印象に残っている言葉があります。
そしてこれは、はっきり言ってポジティブな印象ではありませんでした。
私自身、今でも、その言葉に縛られてしまっています。正直言って。
それは、
「2ページの曲であろうが20ページの曲であろうが、絶対に失敗してはいけない」
・・・・・
まあ、その時は無謀にも、ピアノ科のある大学に行きたいとかなんとか、
テキトーな感覚でのたまっていましたので💦(もちろんその当時の実力では行けるはずもなく)
ピアノを本格的に勉強するとなると、趣味でパッパラパーと弾くのとは
わけが違うんだよ!ということを言われたかったのではないかと思うんですけど、
それ以来(?)、私の心の中ではミスをしてはこの言葉が思い浮かび、「ミスをした箇所」だけが私の中で大きくふくらみ、
演奏=ミス
というような図式が出来上がりそうな勢いでもありました。
結局、言葉のプレッシャーに負けてしまったんですね。。
だからこの一件があったからといって練習を一生懸命してミスが少なくなったかというと全然そんなことなくて、相変わらず毎度怒られていたので、全く変わり映えのない演奏でした💦
なので。。。
「ミスしないように弾こうとする」と。。
=「ミスすることに意識が向いてしまう」
=頭の中は「ミス・失敗」でいっぱいに。(ここ、気づきにくいので要注意!)
=結果、ミス連発。さらに、音そのものもきれいなものではない。(ミスに気を取られて音をよく聴けないため、陥りやすい)
これは自分が練習していて、ものすごーく実感したことなのですが。。
ミスしないように気をつけていると、こういうループにはまっていることが、判明しました。。
「ミスタッチを気にする気持ち」を、他の要素にむけること。フォーカスを変えること。
ミスタッチはいったん置いておいて、、私が個人的に一番大事に考えている「音の流れ」に意識を向ける。そしてできれば、音の「美しさ」にも、同時に意識するようにして。
一口に美しさといっても、「ここではどういう音が一番ふさわしいだろう、大きさは?響きは?色に例えると?…etc」というように、音の質や性格を考えていく。
そうすると、さっきまで「ミスタッチしないこと」を第一にしていた演奏からは、まったく違うといってもいい、生き生きとした音が、聞こえてくると思います。意識一つで、変わっていきます。
音に血が通うとでもいうか。
とはいえ、やっぱりミスは、気になります。いくら綺麗事を言っても、です。私も、本当に、めちゃくちゃ気になります。
最初は、難しいと感じるかもしれません。
しかし、少しずつでも、意識してもらうと、何かが違ってくるんじゃないかと思います。
もちろん、きちんと音をつかむ練習をしたうえでのことは、大前提ですが、
「ミスをしないことを一番の目標としない」
ということが大事かもしれないです。そして、できるだけ気持ちに余裕を持ってみる。
フィギュアスケートの浅田真央さんを指導していた佐藤コーチ(下の名前は忘れた)が、こんなことをおっしゃっていたそうで、すごく印象に残った言葉があります。それは、
「ジャンプは全体の一要素に過ぎない」・・・・
ああ、、、
やっぱり大事なのは全体とのつながり、関係性だったり、全体としてまとまりがあるか、完成度が高いか、ということを言われたかったんじゃないかと思ったのです。
部分でのミスを気にしすぎて、演技全体としてのまとまり、完成度を忘れるんじゃないよと。
木を見て森を見ずというか。
これは、音楽と通じるものがあるなあと。
確かに、ジャンプでコケたって、他の要素でいくらでも挽回できますし、
見ているほうは「ああ残念だったな」くらいのもので、
やっぱり全体の流れがよかったか、気持ちよく滑っているか、
というところに、見ている人も、気持ちが向いていると思うんです(意識していなくても)。これは、演奏会での聴衆の心理とまったく同じだと思います。
逆にいうと、ミスしないように気にしているな、というのは、そこはかとな~~く、聴いている人にもバレている(!)ということ。
じゃあ、具体的にどうすればいいの?
●練習は念入りに、ていねいにして、ミスしないように練習をする。
(ゆっくりと、自分の無理なく弾けるペースを崩さずに。)
と同時に、
●ミスを気にせず、音楽の流れにフォーカス。その部分にふさわしい
音作りも心がける。
ということを、自分の中で、矛盾なくやっていくことです。
また、ミスをしたからと言って、途中で弾きなおす。。という事は、
あまりオススメしません。「途中で弾きなおすクセ」がついてしまうので。
結果的に、ブツ切れの演奏が当たり前になってしまい、逆にミスの多い演奏になってしまいます。(私はコレ、何十年とやってきてしまいました。経験者は語る、です、、)
気にはなるでしょうが、程度問題もありますが、ミスをしても
それをスルーする、心の余裕も必要です。
そのためにも、全体の流れに意識を向ける。
特に「ここからここまで、ミスしても弾ききる」という
目標を立て、「弾ききる練習」というものを同時にしていくといいと思います。(長くする必要はないです、とりあえず1フレーズ、それでも長ければ2,3音でもいいです)
「あの言葉」からもう20年以上経ちますが、今の私から考えてみると、
少し見方が違っています。
あの先生の言葉は、今も残っているとはいえ、「確かに大事ではあるけれども、それがすべてではない」ということ。
「ミスなく弾けた」というのも、結果論にすべきであって、最初からそこを
目指すのはよくない。という考えに至っています。
「魅力的な演奏」と「ミスのない演奏」は必ずしもイコールではない。
やっぱり目指すべきは「魅力的な演奏」であって、その演奏で何を伝えたいのかを明確にすること、そして聴く人がそれを「受け取ってくれる」というような循環を作ることができれば、すばらしい演奏になるんじゃないかと思います。
(魅力的な演奏とは何ぞや?という話になりますが、ここではその人の思いやそのひとの魅力が聴衆に伝わっている、ということとします。)
また先生は、こうも言っておられました。
「音符なんて何千とあるんだから、少しくらいミスしたって(大丈夫)。」
ということで。。。
「ピアノを弾いているとき、どこにフォーカスを当てていますか」
と言われたときに、
「ミスしないこと」というだけではない、何か個性を感じさせてくれるような答えを持つことが出来たらいいですね!