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自治体システム標準化関連時系列整理
自治体システム標準化とかガバクラがらみの議論がごちゃっとしてきているので、とりあえず目的感を明確にするため時系列の整理をしてみます。
イントロ
地方公共団体情報システム標準化基本方針(令和5年(2023年)9月)にも書かれているように、自治体システム標準化の目的は
(1) 維持管理や制度改正時の改修等において地方公共団体は個別対応を余儀なくされ負担が大きいこと
(2) 情報システムの差異の調整が負担となり、クラウド利用が円滑に進まないこと
(3) 住民サービスを向上させる最適な取組を迅速に全国へ普及させることが難しいこと
です。
第一義としては「自治体の負担軽減(主にシステム維持関係)」であって、標準化単体ではここが一番重要になっています。
続いて「クラウド化推進」だけど、ここは文意からしてもSaaS化推進という意味でのクラウド化であることは自明。
さらに、「取り組みの全国普及」だけど、ここは全国的なサービス展開(DX的な意味合いでのさービス)とみておいて問題ないと思います。
ということで、標準化だけを見るとガバクラやトータルデザインという話は直接その目的ではありません。しかし、基本方針を読み進めればガバクラ対応もトータルデザイン対応も標準化の意義、目的として出てくる。
このあたりが目的感に関する議論をごちゃっとさせるところかなと思いつつ、どこでどう各検討が一体化していくのか時系列に整理してみたい。
時系列整理
まず自治体システム標準化の流れについて以前の記事で整理しているので詳しくはそちらを参照くださいというところで、ポイントは
2018年7月 「自治体戦略2040構想研究会第二次報告」
ここで標準化すべきとなる。理由は職員数減に対応するためで、ほぼ第一義の負担軽減。スマート自治体化の文脈では全国普及も含まれるか。
2019年5月 「スマート自治体研究会報告書」
ここでは全振りで負担軽減の必要性が主張されている。
2019年8月26日 自治体システム等標準化検討会(第1回)
ということで、標準化に向けた作業が始まることとなる。新型コロナより前ですからね。コロナ関係ないですからね。
そして、
2021年5月 標準化法成立
ガバクラが努力義務として標準化と一体なものとなります。
さて、標準化の議論はコロナ前でしたが、コロナ後の議論といえば「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」であります。
標準化やガバメントクラウドの議論とそれまで別筋で議論されていたネットワークとかデータ連携といった議論を全体像としてまとめた最初がこの「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」の第三回資料じゃないかなと思います。いわゆるトータルデザインと公共サービスメッシュです。
2020年9月25日 有識者提出資料 (トータルデザインの方向性)
実はまだガバクラ前の資料なので、資料中は「全国システム(クラウドベース)」といった表現になっています。
さてここで、ガバメントクラウドですが、初出は
2020年11月20日 デジタル改革関連法案ワーキンググループ作業部会 とりまとめ
なのかな、自信ないです。
ただ、この段階ではガバメントクラウドは政府共通PFのイメージで、自治体に関しては
クラウド化については、迅速かつ効率的に進めるため、地方公共団体が利用できるプラットフォームを、国が提供する。その際、国と地方公共団体の役割分担、デジタル庁の関与の在り方を検討する必要がある。また、クラウドサービスの選定基準や選定数、クラウドに構築する共通システムの範囲、クラウ への移行時期等をどのように設定するか、等については、業務の特性や地方公共団体の情報システムの状況によって異なる。これらの検討課題について、標準化・共通化の議論を進めながら、同時に検討し、その結果を踏まえクラウド 化を推進する。
とあるうように、別の議論になっています。
はっきりと出てきたのは
2020年12月25日 デジタル・ガバメント実行計画
政府情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウド サービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境(「(仮称)Gov-Cloud」)を整備し、早期に運用を開始する。
業務改革(BPR)、業務・データの標準化等を前提に、「(仮称)Gov Cloud」を活用して各情報システムを構築することで、情報システムの迅速な構築及び柔軟な拡張、最新のセキュリティ対策、技術革新対応力や可用性の向上、コストの大幅低減といった効果が期待されることから、各府省は、クラウド・バイ・デフォルト原則に基づくクラウドサービスの利用の検討に当たっては、「(仮称)Gov-Cloud」の活用を検討する。
また、独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(医療、教育、防災等)等 の情報システムについても、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けて、具体的な対応方策や課題等について検討を進める。
と自治体による利用にも言及しています。
標準化法の成立前ではありますが、標準化の作業は一年以上前に始まっております。また、文面からも標準化との一体感はあまり見えません。
じつのところ、
2020年12月25日 デジタル・ガバメント実行計画
で重要なのは、別添1の「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて (国・地方デジタル化指針)」のほうだったりします。
先に述べた「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」の取りまとめです。
ここで
(4)国と地方を通じたデジタル基盤の構築(情報システムの統一・標準化、 クラウド活用の促進等)
⑰ マイナンバー関連システム(マイナンバー管理システム、マイナポータル等)、住基ネット、自治体システム群の政府関係システムを含めたトータルデザイン
「(仮称)Gov-Cloud」の整備、地方公共団体の業務システムの標準化・共通 化 ・「 (仮称)Gov-Cloud」利用、ガバメントネットワーク整備プロジェクト、デジタル庁による統括・監理等により、実現する。
とか、
※ まずは、APIを整備し、できるだけ仕様をそろえていくところからス タートしつつ、制度の見直しに対して合理的なコストで俊敏に対応できるシステムを作っていく。標準化・共通化は、そのための取組である。
とか、まぁ、今いろいろやっていたり議論されていたりすることは一通り出てきます。
とりあえずここで標準化、ガバクラ、公共サービスメッシュをトータルデザインの名のもとでの一体的に整理する考え方は明確になったとみてよいのではないでしょうか。
なお。ガバクラに関しては、この後、第2期政府共通プラットフォームの廃止が決まり、
2021年12月24日 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
各府省庁の情報システムにおけるクラウドサービスの利用の検討に当たっては、原則としてデジタル庁が整備したガバメントクラウドの活用を検討することとし、クラウド化等を進める場合には、情報システム構築の迅速性・柔軟性の向上、可用性を始めとする高いセキュリティの実現、コスト効率の向上など、これにより得られる効果の追求を図る。 既にクラウドサービスを利用している情報システムについては、更改時期等を勘案しつつ、段階的にガバメントクラウドに移行する。
また、独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(健康・医療・介護、教育、防災等)等の情報システムについても順次、ガバメントクラウドの活用に向けた方策や課題等を検討する。
となるわけです。
標準化、ガバクラ、公共サービスメッシュのトータルデザインの名のもとでの一体的議論も改めて明確にされています。
また、アーキテクチャの設計及び実装の全体ロードマップの検討に当たっては、ガバメ ントクラウドの整備や国の業務システムのガバメントクラウドへの移行、地方公共団体基幹業務等システムの統一・標準化のスケジュールなど現行基盤の更改時期等とともに、 地方公共団体等の実務を踏まえて進めることが重要である。具体的には、地方公共団体基幹業務等システムの統一・標準化におけるデータ要件・連携要件の検討に当たり、公共サ ービスメッシュ(仮称)への連携を迅速かつ円滑に行える拡張性を有することとするなど、 基幹業務システムがアーキテクチャ上に円滑に位置付けられるようにしていく。
これらの取組を進めるために、官民の適切な役割分担について整理するとともに、アー キテクチャの設計・運用・管理に係る国や地方公共団体等の間の役割分担を明確化し、国・ 地方公共団体・民間が一体となって、トータルデザインを実現していく。
ちなみに、
2021年9月1日 デジタル庁発足
なので、ざっとまとめると
2018年7月 「自治体戦略2040構想研究会第二次報告」
2019年5月 「スマート自治体研究会報告書」
2019年8月26日 自治体システム等標準化検討会(第1回)
2020年9月25日 マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ(第三回)
2020年11月20日 「デジタル改革関連法案ワーキンググループ作業部会 とりまとめ」
2020年12月25日 「デジタル・ガバメント実行計画」 (マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて)
2021年5月 標準化法成立
2021年9月1日 デジタル庁発足
2021年12月24日 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」