「1億円稼いだ成功者のセミナー」に誘われた体験談 身近なマルチ商法実録

昨日、彼氏とタリーズで休憩していると、隣の席に男性1人と女性2人が座っていた。
男女が隣り合っていて、マルイに売っていそうなフリルの洋服を着た女性と話している構図で、カップルではなさそう。
これは…もしや…!

マルチ商法!!

他人のマルチ現場ほど面白いことはない。(おい)
彼氏と2人で耳をそばだてていた。
端々に「農林水産省が」や大企業などの無駄に大きな単語。
獲物を説得にかかっているのか?とドキドキしながら盗み聞きをしていたが、うまく聞き取れない。(盗み聞きをすな(笑))
そして、男女2人から誘いにかける様子。
最後、「一回ダメもとでよかったら誘ってみますけど」とターゲットらしき女性が、半信半疑のような雰囲気で答えていた。

きっとセミナーだろう。

実は私も、過去にマルチらしき集団に囲まれた経験がある。
2回ほど。
案外、身近にあるのだ。

実例なので、もし今、「これは…マルチだろうか?」と思う現場にいる方や、友人がマルチにはまりそうになっている方は、参考にしてほしい。
手口はワンパターンなことが多いので、知っていれば、うっかりはまって大事な人と疎遠になったり、身を亡ぼすこともないと思う。

「あなたのためを思っている」は絶対疑え

マルチ営業。ねずみ講。
大体構図は決まっている。
首謀者と、信者だ。
「すごく尊敬される才能と人格を持った成功者」がいて、その成功者の教えを伝えようとする信者たちがいる。
その団体の中で、信者は「セミナー」「商品」等を布教して、お金が入れば配当がもらえる。
完全に心酔している信者もいれば、うまい儲け話に乗っかろうという信者もいる。
基本、成功者は講義をするだけで祭り上げられており、勧誘活動にいそしむのは信者だ。

私が最初に出会った信者は、新卒で販売員をしているときのお客様だった。
50代女性で看護師。元々アトピーがある方で、ビタミンや健康について勉強をしているセミナーに通っていると言っていた。
接客をしているうちに、お客様から「食べ物に関する勉強会をしていたりするから、どう?」と誘われた。
私はそのころ、新社会人で生活が乱れて肌もニキビがいっぱい。
「食生活を整えるヒントがあるかもしれない」
と思い、好奇心そそられていくことにした。(ENFPなので)

休日に向かった勉強会はカフェで行われる。
男女3:7ほどで、仕事もバラバラ、年齢は大体50代前後。
中心にいたのも、50代女性で彼女は「日焼け止めだけ塗っている」らしいノーメイクでだが美肌で、「自社開発のビタミンドリンクでアトピーも治る。普通の人でも肌がきれいになる」という、美容系の成功者だった。
その女性が先生役となって、消化やビタミンについての話を30分ほどされた。
消化酵素やビタミンや、当時は結構おもしろいなと思って、しっかり聞いていた。
途中までは大学の授業のような雰囲気で楽しかった。

おかしくなりだしたのは、後半。
講義が終わり、参加者の交流になり始めると、隣に座っていた女性が
「(先生役の女性)さんのおかげで今の私がある」
「本当にこの方に出会ってなかったらと思うと」
大げさすぎるぐらいにほめたたえ始めた。
なにこれ卒業式?
なんて思いながら、ぼんやりしていると、気づけば話は
成功者のセミナー」「1億稼いだ人の話が名古屋で聞ける」
原理原則のセミナー
みたいなトークが始まった。
数名が、「今度の私も行く」「僕も行きます」みたいに口々に言う。
誘われてない飲み会の話でもされているような居心地の悪さがあった。

そして、両サイドに私をこの会につれてきたお客様がしゃがみこんで、目を合わせるようにして、「morinoさんも絶対行った方がいいよ」と言い出す。
隣の感激系女性も「こんな機会二度とないわ」と。

「仕事もある日だし、無理ですよ」
と私が伝えると、隣の女性が
「そんなの仕事1日くらい休む価値あるよ」
「1億円稼いだ人の成功者の話が聞けるんだから」
と推してきた。
雲行き怪しいどころではない。
脳内で「こいつらヤバイ」警報がゴウゴウと鳴り響いていた。

「いや、名古屋に行くのが無理ですよ。私お金ないんです」
私は、その頃、手取り15万、家賃6万、奨学金2万のなかなかギリギリの生活をしていた。
断り文句のつもりではあったが、ただの事実だ。
そう伝えると、私を誘ったお客様から、まさかの返事が返ってきた。

じゃあ、ご両親に借りるとかできない?

は?
えっこわい!
何言ってるんだこの人!

横にいた女性が
「それをする価値はあるわ。あなたの将来のためを思って言っているの
と言ってきた。
ドン引きしながら、先生役を見ると、こっちをじっと見ながら、静観していた。

私は、NOといえる日本人だ。
「私は、奨学金を返済しなければいけないので」
「借金をこれ以上したくないです。親不孝をしたくありません」
ちょっとイラっとしながら、強く言ったタイミングで、タイムアップだったのか、この会は終了した。

私はそのあとマルチ商法という手口を知った。

誘ってきたお客様は、心酔型の信者で、心の底から先生役の成功者を敬愛していて、私にも「これをした方が絶対いい」と思って薦めてきていた。
これが怖いところ。
誘い方が胡散臭かったから、違和感を感じて退散できたけれど、これでその辺も上手かったらわからない。

周りも、心酔型が何人かいたので、その時は、不信感を感じながらも、周りが一様にセミナーに行くのが当然の空気にちょっと飲まれていた。

もしお金がちょっとでもあって、意思がぼんやりしていたら連れていかれてたかもしれない。

今思い返しても不気味だ。
お金がないことはコンプレックスだったけれど、貧乏がピンチを救う時だってあるのだ。


そのあと、私はその方々と接することはなかった。
誘ってきたお客様は、そのあとも何度も誘ってきたけれど、あの手この手でうやむやにしていた。
私は異動になり、物理的に会えなくなってから縁は切れた。

お客様は、成功者に出会ってから人生が輝きだしたそうなので、一概に悪いとも言えない。
けれど、やっぱり…

胡散臭い!

そもそも「成功者」ってなんなの?
1億円稼いだぐらいで、人生の成功者になれるのか?
大谷翔平やビルゲイツの話が聞けるなら、確かに行く価値あるかもしれないけど。
「おまえだれやねん」だ。

マルチ商法のターゲットは人生に迷える人だ。
社会に入ったばかりで不安いっぱいの新入社員、子離れし始めて自分の人生ってなんだっけ?となる主婦世代、3年ぐらい社会人をしてみて社会を知った気になりこれから転職するかと悩む若手…
孤独、不安のはざまの中にいるときにあらわれる、名前も知らない「成功者」が、自信満々に「絶対に成功する」「セミナー」に誘ってきて、うっかり虜になってしまうのだ。

自分に自信がないときこそ、気を付けた方がいい。
「成功」はただの一瞬の快楽に過ぎない。

・今日もがんばろう♪というポジティブで前向きな気分
⇒セロトニン的幸福:心と体の健康を支えてくれます

・家族や友人、恋人などといて楽しいなと感じる
⇒オキシトシン的幸福:つながりや愛情などをもたらしてくれます。

・目標達成した快感
⇒ドーパミン的幸福:成功や報酬といった快楽です。

健康検定 後援:文部科学省 HPより

割合的には、セロトニンとオキシトシンが幸せを感じる8割以上を占める。そして長持ちする。
「成功や報酬」につられてしまうより、自信がない時こそちゃんと寝て、ご飯を食べて、お風呂に入って、運動する方がかなり効く。

うっかり、マルチ現場に連れていかれたENFPより。

昨日隣の席で勧誘されていたお姉さんも、無事であることを勝手に祈っておこう。

いいなと思ったら応援しよう!