「来週、指輪見に行こう」と言われ、先に友達と下見した話
彼から3周年記念日にプロポーズすると宣言されて約1ヶ月。
ついに「来週、指輪見に行こうか」と言われた。
嬉しい気持ちと、現実味のなさにそわそわする。
私は元々宝石店の店員からの買取スタッフをしているので、ジュエリーが作られるところから、断捨離で売られるところまでをずっと見ている。
その割に、指輪は1本も持っていない。
指輪をつけない理由はいくつかあって、1つは絵を描く時に邪魔になるから。
あとは、落としたり壊したりしたらどうしよう、と不安に感じる部分が増えるのが嫌だった。
とはいえ、仕事上知識も出会いもあったので、やっぱりちょっとジュエリーにもブランドにも憧れがあるのだ。
ジュエリー耳年増すぎて、こだわりが強く、自分でもとてもややこしい。
彼は、やっぱり王道のダイヤモンド!という方だ。
結婚も、順序を守る古風な一面がある。
指輪も変わり種じゃなくて、一粒のダイヤモンドが誓いにぴったり、と考えていると聞いた。
一方私は、婚約指輪らしい婚約指輪のデザインが、あんまりピンとこない。
そもそも、ダイヤモンドよりもオパールが好き。
全てのものに対して、硬いものより柔らかい雰囲気が好きで、激しいキラキラより優しいマット調のものが好き。
とはいえ、ダイヤモンドは世界的に価値があるとされている人気ジュエリーだ。
宝石の中では別格。
硬度10で世界一硬く、劣化の心配も少ない鉱物。
家族代々受け継げるところも魅力だ。
が。
あくまで「宝石の中では」だ。
そもそも宝石の価格は売る時は下がる。
売る時は買う時の10分の1になれば上々で、ラボダイアの登場で今後は中途半端なダイヤモンドに市場価値はそんなにないと感じる。
代々受け継ぐ、と聞こえはいいけども、買取をしていると「娘が合わないからいらないという」「息子の嫁さんにはあげづらい」なんて声もよく聞く。
親子でも、趣味はあるし、指輪はつける本人が1番見るものだから、好みでなければ無用の長物でしかない。
石よりも、金やプラチナの地金部分の方が高いので、リフォームすると何万もかかる。
そう考えると、「受け継ぐ」は置いといて、「自分が今つけるもの」を選ぶのがジュエリー選びとして1番良いと思うのだ。
ダイヤモンドぼーーん!っていうデザインは、普段使いしづらい。
そして、タンスにしまっているうちに、指の太さが変わって入らなくなることも。
高いお金払ってもらって、つけたい時にはサイズアウトで結局人生で数回しかつけたことない、というのもよくある。
だから、指輪を選ぶなら「本当に今、日常で使うもの」ということに、私は価値があると思う。
そうなってくると、地金のぺったんこのリングが1番私の価値観にフィットするのだ。
その地金のぺったんこのリングは、婚約指輪というより、結婚指輪。
彼が贈りたいと思ってくれているものとは、まるっきりちがう。
婚約指輪は、将来の私たちや、子孫のためじゃなくて、今の私たちにとって価値のあるものがいいと思うのだけど、どう伝えるといいのかわからない。
全部説明しても、「でもやっぱり普通のがいいよ」って言われたので、私が折れるか、彼を折るかの2択みたいになってる。
優しい彼のことだから、私が泣いて暴れたら私の意見のまんま通してくれそうだけど、そんな幼稚な手段はとりたくない。
できることなら、2人ともが納得して選びたいのだ。
高額品だもの。
おばあちゃんに聞いたら
「貰えるものはもらったらいい。ちょっとデザインがなーとか思っても、記念のものなんだから、そんなん言わずに大事にしたらええんよ」
と、寛大すぎる言葉が返ってきた。
ぐさっときた。
そういうゆとりを持ちたい気持ちと、
選べるチャンスがあるなら、身に着けて「やっぱりこれよりあっちがよかった」なんて思わず、心の底から喜んでつけられるものがいいなと思う気持ちと拮抗する。
私は気に入らないものは、そっと着なくなるタイプだ。
つけづらいと思ったら、普通にチャンスが来てもつけないと思う。
タンスの肥やしのために、彼に高額払ってもらうのも気が引けすぎる。
それならむしろいらない。
旅行や家電に使いたい。
そんな悶々とした気持ちを抱えながら、昨日友達と女子会をした。
たまたま近隣に百貨店があったので、街ブラついでに一緒に下見をしに行ってくれることに。
曰く、
「彼本人と行くと、ほしいもの言えないかもしれないから、今のうちに見ておいた方が絶対いいよ」
とのこと。
なるほど。
嬉し恥ずかし、ジュエリーショップをうろうろしてみた。
スタージュエリー、ヴァンドーム青山、agate、ヨンドシーが立ち並ぶショーケースを眺めてみる。
キレイはキレイ。
けどなんとなく、手が伸びない。
次は、思い切ってティファニーに入ってみた。
憧れ半分、デザイン的に「自分じゃないな」と思う気持ち半分のまま、ブライダルコーナーへ。
値段はさっきのブランドたちよりはちょっとお高いが、やっぱりハイジュエリーは魔力がすごい。
惹きつけられる勢いが全然違った。
仕事でティファニーのことは歴史からラインナップから調べていたこともあり、「いいな」と思う深さがほかのブランドよりも濃厚なのも理由にある。
試しにいくつかつけさせてもらった。
https://www.tiffany.co.jp/jewelry/rings/tiffany-harmony-band-ring-GRP08146/
このリボンの形の物がかわいい。
https://www.tiffany.co.jp/jewelry/rings/tiffany-soleste-band-ring-GRP07556/
こっちも素敵だ。
が、お値段45万前後。
彼氏の予算が読めないし、ねだりにくい…
この細さで、ピンクゴールドのジュエリーだったらほかで買えばそれこそ半値で買えるだろう。
(買取店員の悪癖を出すと、グラム数たぶん5グラムもないので、ダイヤ・ブランド代を入れても売るときは10万行ったらいい方だ。売らんけど)
プラス、候補にはないがティファニーといえば、ということでダイヤのリングも試着させてもらった。
さすがというか、ものすごい虹色の輝きで目がくらむ。
指に着けるのも緊張だ。
つけてみるといいな、と思う反面、輝きすぎて「ちょっとしんどい」が湧いてきた。
ずっと肩に力が入るというか…
気分が上がるどころか、心が硬直する感じがした。
やっぱり私はダイヤモンドはいらないな、という気持ちがより強くなってしまった。
でも、ティファニーか、ティファニーっぽいものか、の間の壁は大きい。
やっぱりなんにせよ、なんちゃってより本物がいいに決まってる。
経験として入ってつけてみて、やっぱり満足度は全然違った。
そのまま、ハイブラ巡り。
次はシャネルを眺めて、カルティエへ。
実はカルティエこそ私の大本命だったりする。
世界5大ジュエラーという安心安定の品質と、堅牢なブランド力、男女ともに着けていてもクラシカルで気品があってかっこいい。
なにより、彼がカルティエを身に着けたところを想像すると興奮するからだ!
自分が好きなのはヴァンクリやシャネルといった女性向けな柔らかみのあるデザインだったりするが、彼が付けるなら断然カルティエ。
私がお揃いにしても違和感がないのもカルティエ。
30代の彼が付けてても、40・50代の彼が付けていても、興奮する。
結婚指輪にカルティエを身にまとう男、かっこよすぎる…という、そういう気持ちでカルティエが本命というわけだ。
妄想上、最高のカルティエ様にドキドキしながらお邪魔する。
「カルティエがいい」と思いながらも、どのデザインがいいとかはあんまり決めていなかった。
分からないけど、「普通の真っすぐの指輪がいい」と彼が言っていたので、カーブのないものを見ていく。
と、最初に目が留まったのが、かの有名な、THEカルティエの「ミニラブリング」だった。
土偶の目のような、丸に線が入ったデザインで、ブランドとすぐわかる分、私にはちょっと合わなさそう、と思ってそもそも候補にはなかった。
けれど、実物を見てみると思ったよりもシンプルでさりげない。
友達の一押しもあり、試着させてもらうことに。
似合わないだろうな、と思っていたが、つけてみると想像以上に自分の指にしっくり来た。
友人も「え、似合うよ?!」「全然派手じゃない、馴染んでる」と言ってくれた。
全身鏡で見てみても、そもそもパーツとして小さい分、そこまで主張しない。
ピンクゴールドは特に肌なじみがよく、平べったいデザインなので何の引っ掛かりもない。
それでいて、幅3.6cmの太さがちょうどいい。
今は細いリングが好きで、ごついリングは小柄故に合わないのだが、年を重ねるにつれてあまり細いのは違うようになるのは目に見えている。
デザインが入っているのも適度で、逆にデザインがなくてこの太さだとちょっと間延びするような印象がある。
絶妙だ。
これが、カルティエで古来から愛され続ける「ラブリング」か。すごい。
逸品ってこういうことか~~!
確かに、カジュアルもフォーマルもいける。
ワンピースでもジーンズでもスーツでもいける。
エレガントもカジュアルも似合う、ちょうど中間地点にながら、実用性抜群。
品もいい。
ダイヤナシなら20万前後だ。
正直これ一本もらえるなら、もう結婚指輪だけでいいと、やっぱりおもってしまう。
あとは彼がなんというかだ。
彼のお仕事は堅い。
そもそも「ブランド品」と、わかる人にはすぐにわかるものを、良しとするかどうかが不安だ。(ちなみにうちの田舎では言わない限り確実に誰も気づかないだろう)
それなら何もついてないものがいい、となりそうな気もする。
一方で彼の方がブランド好きだ。
案外スッと受け入れられるのだろうか。
プレゼンを先にするべきなのかどうかもわからない。
来週一緒に見に行くときに、気になっていて初めてつけるの、っていうていのほうが、受け入れられたりするのかな。
もし、真っ向から「これはちがうやろ」と言われてしまったら、結構ショックかもしれない。
逆に、私の思い入れが強くなりすぎるほど、彼が「本当はこれがいい」みたいな本心を言えなくなってしまう。
やっぱり、2人とも気に入って選びたい。
なんていう話を友達にしたら、意見はいろいろだ。
「そんなの、言うたら絶対買ってくれるよ」
「私ならもっとでかいダイヤねだるわ」
「ラブリングはちょっと派手だから、堅めの仕事でつけるならどうだろう」
「別にお揃いでなくてもいいんでは?〇〇はそれで、彼はもっとシンプルなので」
「あとは誘導どうするかだね」
「それは婚約指輪でもらって、結婚指輪は結婚指輪で選んだら?」
などなど。
ネット情報を見てみると、「一時期大流行した分、ダサい」みたいなコメントもあったが、
桐谷美玲が旦那様から贈ってもらったお気に入りの1本で、辛口コーデにもあうから重宝している、と言っててやっぱりいいものはいいんだなと思った。
また、安室奈美恵、浜崎あゆみ、桐谷美玲とお揃いは激アツだ。
でもまぁ、どれだけ友達やネットの意見を参考にしたとしても、決めるのは彼と私の2人だから、あんまり関係なかったりもする。
お揃いがいいけれど、「ブランドだけお揃い」なのか「デザインも全部お揃い」なのか「色をお揃い」なのか。
私はカルティエがいいと今は思っているけれど、ただただピンクゴールドがよかっただけで、別にノーブランドでも満足するものにも出会えるかもしれない。
ハイブラジュエリーが好きな友達と見に行くと、特別価値を感じたけれど、彼と2人で見るならまた見えてくるものが違うかもしれない。
どちらにせよ、1人でこれ以上悩むのは無意味。
そうかんがえながら、さっきからやっぱりネットで調べてしまう私は、
案外この「指輪どうしよう~」という幸福な悩みにひたるのを気に入っているんだろう。
こんな優雅な悩み、きっと今だけだろうから、楽しんで悩もうと思う。