【短編】 金髪先生
ものすごく田舎の学校だ。
「私は異世界からやってきた人間だから、日本やこの世界のことはよく知らん」
金髪の女先生は、緑色の瞳で僕たちを真っすぐに見つめながら、教室でそう自己紹介をする。
「生きていくために敵や魔物と戦ってきたから、その体力や格闘術を買われて体育教師になった。それから、この学校には校長と私の二人しか先生がいないから、他にも家庭科や音楽、保健室の先生も私がやる。もちろん、君たちの担任も私だ」
教室にいるのは、中学三年生の僕と、小学三年生の僕の妹のみき、そして隣に住んでいる中学一年生のさっちゃんのたった三人。
「ねえ、先生は彼氏とかいるんですか?」
妹のみきが突然手を上げて、全く空気を読まない質問をした。
「彼氏とは、物語の中のロマンスのことか? 私はこれまで、敵や魔物と戦うだけの日々だったから、そういった……」
実は、金髪の女先生は僕の家に下宿していて、すでに三年前から知っていた。
「今日はエヴァンジェリンが学校の先生になった日だから、お赤飯を炊いたよ」
僕の祖母はそう笑顔で言いながら、鯛の塩焼きや、茶碗蒸しなどのお祝いの料理をちゃぶ台に並べようとするが、ちゃぶ台が小さすぎて置く場所がない。
「お婆ちゃんがエヴァちゃんにしてあげられるのは、これぐらいしかないからね」
三年前、エヴァンジェリンを竹藪の中で見つけたのは僕だった。
死んだように動かない彼女を家まで引きずっていき、その後どうしたものかと考えていたら、祖母が現れて彼女を引取った。
祖母は、エヴァンジェリンを不思議な力で生き返らせて、蔵の中で密かに彼女の世話をしていた。
そんな事情を知らない僕の妹は、エヴァンジェリンの存在自体を知らない(隣のさっちゃんは秘密の地下通路で彼女と交流していたみたいだが)。
そういう複雑な状況の中で、エヴァンジェリンは金髪の女先生として僕たちの前に現れたということを、読者諸氏には理解して欲しい。
便宜上、この話を金髪女先生が自己紹介する場面へ強制的に戻します。
「心配するな、私は史上最悪の悪魔だが、今はただの先生だから君たちをちゃんと卒業させてやる」
隣に住むさっちゃんはフフフと笑った。
実は、僕はその三年後にエヴァンジェリンと結婚することになるのだが、その話はすでにアニメ化されているので、動画配信サイトで視聴することができます。
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