アイオワ州ウィンターセット
1995年に映画化された「マディソン郡の橋」の舞台となったのがこのウィンターセット(Winterset)。アイオワ州都のデモインから車で約45分、人口約5,000人の小さな集落です。この地域では文字通り屋根のついた屋根付橋が有名で、映画のキーともなったローズマン・ブリッジは米国国家歴史登録財にも指定されたそうです。
マディソン郡の橋は、平たく言うと中年の禁じられた恋の話。周りに何もない場所で平凡な家庭生活を送る四十路の主婦が、夫と子供の留守中に、都会から屋根付橋の取材に来たアラ還ジャーナリストと4日間だけ恋に落ちます。激しい恋に落ちたものの、家庭を捨てる勇気はなくこれまでの生活にお互い戻っていくものの、お互いの死後ローズマン・ブリッジにて散骨されることで結ばれる(?)という展開です。オトナの純愛という見方と、欲求不満ジジババのアバンチュールという見方、賛否両論分かれましたが、小説・映画共に大ヒットした作品です。
アイオワに行ったと周りの友達に言うと必ず「なんで?何しに行ったの?」と聞かれるような場所。行ってみて本当に何もないことを実感しました。6つある屋根付橋は観光地のはずですが、人っ子一人いませんでした。流石に四半世紀も経つと、映画だけで観光客を引っ張るのは難しいのね。
そんな何もないような場所が日常だったら、(たとえ相手が色ボケじいさんであっても)都会から来たジャーナリストと言われれば恋に落ちちゃうよね。しかも出張や旅行で来てる人や逆に自分が行った先の人って、普通より魅力が2割増しくらいになる気がします。ましてやもう二度と会うことがなければ、思い出は自分の中で神格化されて輝き続けるように思います。誰もいないトウモロコシ畑の合間を運転しながらそんなことを考えました。
ダウンタウンが2ブロックほどしかない中、映画にも使用されていたHistoric Northside Caféをおススメしようと思ったら、現在閉業とのこと…。映画では、保守的で意地悪な住人達が、不倫をした女性を口汚く罵る場として描かれていました。異人種のオカマは映画みたいに邪険に扱われないか、若干楽しみにドキドキしながら行きましたが、実際はとてもフレンドリーな接客で、クラシックアメリカンダイナーをオシャレにした感じのレストランでした。なくなってしまい残念です…。
唯一のダウンタウンの目玉としては、キルト美術館。特に興味があるわけではないですが、受付のおばちゃんもフレンドリーで、カラフルで可愛らしいキルトが並ぶ素敵な空間でした。何も起こらない平凡な日常の中、過去の忘れらないアバンチュールを思い出しながら、一針一針怨念を紡いでいくオンナの人生というのも色っぽいかもしれないと思いました。
アイオワは選挙でも共和党基盤が強い州なので、もっと保守的で外国人などを排斥するような土地かと思ったのですが、少なくとも観光客には皆優しく接してくれました。個人レベルでは素朴でいい人が多いのかもしれません。わざわざ米国外から旅行するような場所ではないですが、ニューヨークなどとは違ったアメリカを見てみたいアメリカ通の方にはおススメの場所です。
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