あんたブスね
人から言われた言葉で、生きるのがちょっと楽になった経験は誰しもあるかと思います。そんな言葉の中で、私の心に残っているものを共有していきたいと思います。
まだ20代で夜の街デビューをしたころの話。新しく友達になった人に初めて連れて行ってもらった二丁目のママに言われた言葉。ご挨拶早々に、「…っていうか、あんたブスね~。ブスなんだから呑みなさい。」しかも友達や周りの客も笑っているばかりでフォローなし。えっ、わたしってブスだったの?(松田聖子)「私は中の下くらいのルックスでブスではない」という抵抗も虚しく、即時ブス確定し、その後の私の二丁目人生を決定づけることとなりました。
二丁目には捨てるゴミなし、という格言がありますが、ブスでもクズでも受け入れてくれるのがこの街のいいところ。「奇数の合コンだと必ず余る」「バーが混んでくると徐々に隅に追いやられて最後は酒の空きビンの入った段ボールに片足突っ込んで呑んでいた」「貸した金返せと付き合っているオトコに言ったらうちの床に唾をはかれた」といった過去の悲しい想い出の数々が、ブスの鉄板ネタという形で昇華されていきました。また、ごく稀に、「そんなブスじゃないと思う」という素敵な殿方が現れたことも…。
ブスとは容姿が醜い状態を指しますが、よくよく考えると、それが良いか悪いかの価値判断はあくまで相手の主観によるものなので、その主観で私の存在意義を否定されるべきものではありません。一方で、口に出して笑いにしても出さないで抱え込んでも私の顔の状態自体は変わりません。ブスであることを理由に仕事を与えない等、不当な差別を許すつもりはありませんし、わざわざ人を攻撃する目的で口に出す必要もありませんが、状態と価値判断を切り離して考えるとコンプレックスも楽になりますし、その状態に価値を見出してくれる人や場所を前向きに探していけるようになりました。劇薬でしたが、私の自己肯定感を上げてくれた大切な言葉です。
ちなみにその二丁目のママは破天荒なオカマで現在は消息不明。元気にしていると良いですが…。あと、私の顔が「中の下」なのか「下の上」なのかはいまだに議論になるのですが、あくまで私は「中の下」であると信じています。好きなブランドはマーク・ジェイコブスな小ブスです。
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