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思わず立ち止まってしまったストリートピアノ

 もしも〜ピアノが〜弾け〜たならぁ〜♪(by 西田敏行)

 ・・・と心の中で歌ってしまう瞬間がある。ストリートピアノをカッコよく弾きこなす人と遭遇したときだ。

 私は5歳から7歳まで、カワイのオルガン教室に通っていた。弾ける楽曲の最高峰は「むすんでひらいて」。
 今でもおそらく身体は覚えていて、ピアノの前に座ればつつがなく演奏できると思うのだが、往来のストリートピアノでそれを披露する勇気はない。たぶん、誰も聴きたくないだろうし(笑)。

 しかし先日、猛者に遭遇した。ストリートピアノで「メリーさんのひつじ」を演奏していたのだ。しかも、オリジナリティを出そうとしたのか、ハ長調からイ短調に移調させて。なんとも陰気臭い、メリーさん。

 実は私も「むすんでひらいて」をイ短調にしてよく弾いていたので、そこはかとなく親近感。その猛者に心の中で、

「メリーさんの柩」

 というタイトルをプレゼントしてさしあげた。誰にも喜ばれないプレゼントだろうけど。

 閑話休題。
 
 流行曲をアレンジしてカッコよく弾いている人に遭遇すると、うおー! とかは思うのだけど、なかなか立ち止まるまでには至らない。

 ところが一度だけ、完全に立ち止まってしまったことがある。

 あれ?
 この曲知ってる・・・何だったかな・・・と思い出す前に、立ち止まった状態で、腕を上げようとしてしまう自分の身体に驚いた。

 ラジオ体操第一やん!!

 さすがに実際、そこで体操はしなかったけど、心の中では

伸びの運動〜

腕を振って足を曲げ伸ばす運動〜

 などとつぶやきまくっていた。ラジオ体操、恐るべし。ここまで身体に染みついていようとは。
 小学校の夏休み、毎朝早起きして通っていたもんなぁ、ラジオ体操。そりゃ染みつくのも無理ないか・・・

 ・・・とか思ってたら、いつの間にか演奏はラジオ体操第二に移っていた。
 ちょ、どんだけ立ち止まっとんねん、私!

 私がはじめてラジオ体操にふれてから、もう半世紀以上になる。その間ずっと、私の体内ではこのピアノ曲が脈々と息づいていたのである。

 ひょっとして、いやひょっとせんでも、名曲なのかも。
 あらためて、ラジオ体操、恐るべし。

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