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kintone hive 登壇直前、雨の中でおじいさんを助けた話

朝から大降りの雨であった。​
​私は、Zepp福岡の入っている大型ショッピングセンターの前で、開店を待っていた。​

​ ​降りしきる雨を避けるために、私やその他の客たちは、開店を待ちわびて、店舗前の軒に雨宿りで身を寄せていた。​ ​

大雨だった

背後で、「あっ!」という声が聞こえた。​

​振り返ると、高齢のおじいさんが、仰向けに歩道に倒れているのが見えた。​
倒れたおじいさんを容赦なく雨が濡らしていた。​
そのそばに驚いて立ちすくんでいる通行人の姿も見えた。​

「どうしよう」​
一瞬だけ迷ったが、気づいた時には身体が動いていた。​

​おじいさんのそばに駆け寄る。​
おじいさんは、目を見開いていたが、動かない。​

私はおじいさんのそばで膝をつくようにして屈みこむ。​
肩を強く叩き、おじいさんの耳元で大きな声を出す。​

「聞こえますかー! 救急車を呼びますかー!」​

おじいさんが大きくまばたきをして、少し両腕を動かした。

生きている。​

​通行人の女性が不安そうに私の背後に立っていたが、私がおじいさんにかがみこんで話しかけているのを見て、慌てて傘を差しだし、私とおじいさんの上にさしてくれて、雨をよけてくれた。​

女性の差してくれた傘

地面を叩く雨。​

雨の中でひざまずいた私の長ズボンは、膝から下がびっしょりと濡れていた。​私の足元がどんどん冷えていくのが分かる。

女性は不安げに、「頭は大丈夫なのかしら。打ってないかしら」​
私はおじいさんの頭をそっと持ち上げ、出血の有無を見たが、何も無い。​
雨の中、このまま、おじいさんを放置しておくことはできないことだけは判断できた。​

「身体を起こしますよー!」​

私は大きな声を出して、おじいさんの腕を持ち上げ、私の肩に回した。​
おじいさんはマスクをしていたが、一応、コロナ禍である。
私はおじいさんと身体を密着させることに、一瞬、ためらったが、おじいさんの身体を優先することにした。​
その判断しかなかった。​

「どうなさいましたかー!」​

私が身体を少し持ち上げると、おじいさんは、足元をふらつかせながら、立ち上がる素振りを見せる。​
「病院を退院したばかりで、めまいがして」​
おじいさんは意識もはっきりしている。​

「一歩ずつ、歩きますよー!」​

私はおじいさんの腕を自分の肩に回しながら、おじいさんの歩幅に合わせて、一歩ずつ、建物に向かって歩きだした。​

私とおじいさんの上に、女性が傘を差してくれた。​

ゆっくり歩き、開店した店舗の中におじいさんと一緒に入る。​
ショップ店員が店頭にいるのを見つけて、手を振って呼ぶ。
手短に状況を伝える。​
警備員を呼んでもらい、おじいさんの家族を呼んでもらうなどの手配をしてもらうためだ。​

おじいさんをベンチに座らせて、警備員に引き渡して、私の役目は終了。​

雨の中、歩道にひざまずいたせいで、特にひざ下が、絞れるくらいに雨に濡れている。
​着替えなど、持っているはずもない。
登壇前に、大雨の中、人を助けることになろうとは、事前に想定していなかった。

私は思わず苦笑いした。

イベント登壇前なのに、人を介抱してずぶ濡れになるなんて。
私らしい、と。​
保育現場(人的援助)で働く者の、良い職業病が出た、と思った。
髪の乱れも、濡れたヘアメイクも、ノープロブレム!​​

雨は降っていたが、心の中に虹

私は颯爽と、登壇の会場に向かって歩き出した。

雨に濡れて足元は寒かったが、自然と心は温まっていた。

後日

後から思い返すと、kintone hiveに登壇するときの衣装が、保育現場でいつも着ている服だからこそ、雨の中に飛び出して行き、素早く対応できたのだと感じた。

綺麗に着飾った服だったら、もしかしたら、服を汚してはいけないという理性が働いて、雨の中、飛び出して行けなかった可能性もある。

kintone hive登壇に、現場の服を着て行ったことは、結果として、おじいさんを介抱することにつながったのだとしたら、現場の服を着て登壇したことに、意味はあったのかもしれないと思った。

ちなみに、登壇する頃には服は既に乾いていた。
良かった、良かった。


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