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kintone hive 2022 fukuokaに登壇した話
先日、kintone hive 2022 fukuokaに登壇した。
サイボウズのkintoneを使って、保育業務改善に取り組んでいる実践事例を発表したのである。
具体的な登壇内容は、後日ということで、登壇が決まってから登壇するまでの、私の過酷な日々をお伝えしよう。
登壇理由
そもそも、なぜ登壇したのか。
話せば長いのだが、簡単に説明すると・・・
昨今、保育業界には多くのICTシステムが乱立している。
高齢者(おじい・おばあ)の送り迎えが多い地域での保育ニーズを捉えた時、高度に作り込まれた既存のICTシステムでは、デジタル弱者への寄り添いという視点が欠けてしまう。
そこで、デジタル弱者にも寄り添った、「アナログとデジタルの融合」を求めて、kintoneを使った保育業務改善システムを構築したという話。
とにかく、自分のkintone保育業務改善の事例を、他の人に知らせたい、共有したい、という一心だった。
登壇が決まる
kitone hive 2022という事例発表会があると知り、とくによく分からないまま、九州・沖縄大会へ応募。
エントリー後、ありがたいことに登壇が決まった。
プロフィール用の写真や、企業ロゴなどを慌ただしく準備した。
スティーブジョブズ?!
登壇の打合せで、サイボウズの担当者に思いがけない条件を告げられる。
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「スティーブ・ジョブズみたいにプレゼンして下さいね」
Apple社の新製品発表で、フランクに話しながらも聴衆を熱狂させる、あの伝説のプレゼンを目標とすることを告げられたのである。
もちろん、ジョブズのプレゼンをYouTubeで見たことがあるし、ジョブズのプレゼン本も読んだことはある。
「凄い」という感想以外、思いつかない、雲の上の偉人の話である。
偉人ジョブズの何を参考にすればいいのか。
はて、と思考が立ち止まる。
自分の実践事例を、どうやって17分間のプレゼンとしてまとめ上げ、ジョブズのように発表すればいいのか。
皆目見当がつかなかった。
模索する日々
何か良いヒントが得られるかと思い、プレゼンのやり方の本を何冊も読んでみた。
素晴らしい本ばかりであったが、読んで何となく分かった気分になったものの、自分に照らし合わせた時の具体的なプランが浮かばない。
得意とする文章創作では、文章やプロットが雨のように降ってくる私であるのに、何一つ浮かばない。
真っ白のノートを前にして、仏像のように固まり続ける自分自身がいた。
何もプランが思い浮かばない。
閃かない。もどかしい。
恐ろしいことに、プレゼン資料の締め切りの期日は刻一刻と迫っていた。
焦燥感だけが募る。
年度末の多忙さに苦しめられる
時は3月の最終週。
業務は年度末・年度始めを迎えて、多忙のピークを迎えていた。
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新園児・卒園児・退園児の処理手続き、決算見込み、未収金や未払金の見込み、次年度予算と事業計画と理事会開催、人事労務、次年度行事計画——
保育園において一年で最も忙しいのが、年度末・年度始めなのである。
その時期に登壇資料の作成とは――。
何で登壇しようと思ったんだろう。
自分の見込みの甘さに悔やんだ。
思わず絶望して天を仰ぐ。
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もはや万事休すであった。
気分を変えるためにプレゼンのYouTube動画を沢山見た。
素晴らしいのはよく分かった。
しかし、言っていることは理解できたものの、これを自分のアイデアに照らし合わせると——という段階で思考が停止する。
私のアイデアは一向に閃かない。
本格始動
ふと、以前、何かを学びたいと思い、Udemyというオンライン講座のサイトをチェックしたことを思い出した。
念のため、確認すると、あるではないか!
プレゼン講座がある! 思わず叫ぶ。
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ヒャッホーイ!
心の中で歓喜の雄叫びを上げる。
嬉しさの余り、私の脳内に、年末に聞こえるオーケストラの「歓喜の歌」が再生された。
早速、人気のコースを複数、受講してみる。
本を読んで学ぶのとは大違いであった。
感覚的にプレゼンのノウハウが理解できたのである。
アイデアは天啓のごとく
プレゼンのオンライン講座を見終えた瞬間、プレゼンのイメージが湯水のように沸いてきた。
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天啓だった。
スライドイメージが連続フィルムのように脳内にどんどん映し出される。
脳内のイメージを再現するために、慌てて制作に着手する。
10時間かけて一気に103枚のパワーポイントのスライドを作り上げた。
こうして無事に登壇資料の提出期日には間に合ったのである。
シナリオ作成に着手
次に、完成したスライドをもとに、話す内容をシナリオとして書いていく。
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もちろん、文章創作はお手の物。
当然、すぐにシナリオは完成した。
スライドとシナリオを完成させて、私はご満悦であった。
私の脳内のイメージは、スライドとシナリオで完全再現した。
これ以上、何をしようというのか。
やり遂げた陶酔感に浸っていた。
しかし、その後の事前リハーサルで、一気に地獄に突き落とされるである。
登壇3日前の急ブレーキ
登壇の3日前のことである。
チームとして共にkintoneの保育業務改善に取り組んでいるオフィスシステムプロダクトさんの会社で、登壇の事前リハーサルを行った時の話である。
自信作のスライドとシナリオを披露した私に対し、有能なNさんは、一言。
「分かりやすいですが、セミナー講義を受けているみたいで、単調です」
「ジョブズ風にするには、シナリオを暗記して下さい」
シナリオを読みながら淡々と説明した私に対して、実にストレートで、的確な指摘をしたのである。
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kintone hiveというイベントは、シナリオの内容をなぞって、それらしく話すだけでは、全く手に負えない代物のようであった。
そもそも、「セミナー講義に見えないようにする」とはどういうことなのか。
私はセミナー講師をしたことがない。
それなのに「セミナー講義」ではないものをやるとは、意味が全く分からない。
何一つヒントが思いつかない。見つからない。
藁にもすがる思いで、YouTubeにあるTEDのプレゼン動画を見たが、素晴らしすぎて、ちっとも参考にならない。
TED動画を見て感動して涙をぬぐい、ハッと我に返る。
「違う違う、目的はそこじゃない」
慌てて現実に戻る。
現実は――全く何も進んではいなかった。
私は天を仰いだ。
「だめだこりゃ」いかりや長介風に言いたくもなる。
完全なるお手上げ状態であった。
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4月、年度初めの忙しさはピークに達していた。
しかし、忙しさを理由にしてはならない。
人生は一度きり。
やるなら、本気で、全力でやる。
私の人生のテーマである。
せめて、今回の登壇が「黒歴史」にならないようにしなければならない。
「黒歴史」と思うあたり、若干、心は後ろ向きであった。
登壇2日前の奇跡
登壇の2日前、オフィスシステムプロダクトさんのKさんを保育園に招いて、登壇の打合せをする。
有能なKさんは、私の書いた淡泊なシナリオを、熱意あるシナリオへと変貌させるアドバイスをしてくれた。
「役者が話すセリフのように、感情をのせてください」
役者のセリフ・・・?
ここでようやく、自分自身の得意分野である劇脚本に思い当たった。
私は縁あって、子ども劇の脚本をこれまで何本か書いたことがある。
脚本を書くことは、本業にしたいくらい、好きなことの一つなのだ。
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そうなのだ。これは劇脚本だ。セリフだ。
プレゼンという、一人芝居だ。
頭の中に一人芝居の劇としてのプレゼンイメージが再構築されていく。
ついに登壇前日
既に登壇前日となっていた。沖縄から飛び立ち、福岡入りする日である。
朝4時に起きて、アドバイスを通りにシナリオを修正する。
壇上で、一人芝居のように話す自分自身をイメージした。
舞台劇のような語りの言葉でシナリオを作り込む。
103枚あったスライドも、86枚に絞り込んだ。
保育園に出勤し、スライドとシナリオを印刷。
スライドとノート、そしてスライドをミニカード式にして、穴をあけ、リングで通して、暗記カード風にする。
午前中の保育園の仕事を終えた後、那覇空港へ向かう。
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飛行機の中でも、搭乗手続きの間にも、ひたすら、スライドとシナリオをにらめっこしていた。
手元の紙を見ながら、ぶつぶつ呟く不審人物。
そばから見れば、追い込まれた受験生状態であった。
シナリオは完全暗記だ。
時間的猶予は無かった。
私の中で緊張感がみなぎっていた。
暗記のために周囲の雑音が耳に入らないくらい集中していた。
移動中の時間を有意義に使い、ひたすらシナリオ暗記。
福岡のホテルに到着するまでに、シナリオはほとんど暗記していた。
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ホテルの部屋に入り、スーツケースを荷解きすることなく、すぐに立ち稽古を開始する。
一通り演じて、時間を確認すると、制限時間の17分をオーバーして20分だった。
これはまずい。
どうにかして時間内に収めないといけない。
言葉が伝わりにくい部分の言い回しを変え、文章を削る。
時間制限内に収めるために、シナリオにどんどんペン入れする。
恥ずかしかったが、プレゼンの様子をスマホのカメラで動画撮影する。
動画を見直して、手振り、動きも、シナリオにどんどん書き込んでいく。
書き上げたシナリオを、自分で演じながら、演出し、書き直す。
これまで、子ども劇の制作を通して、演出と脚本の経験はあったが、自分自身で演じるのは初めてであった。
「主演・演出・脚本」の3つをこなす。
「まるでビートたけしだな!」
と時代感のあるツッコミを入れるあたり、年齢が分かるというもの。
通し稽古を何度も繰り返すが、16分30秒のギリギリであった。
時間制限に間に合わないかもしれない。
こうなったら「しゃべくり漫談」だ。
私の脳内にはウーマンラッシュアワー村本の漫談イメージがあった。
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観客はスライドでビジュアルイメージを受け取る。
それなら、私のしゃべりはイメージの補足だ。
時間が無いのなら、しゃべくり漫談で押し切るしかない。
「ジョブズ風」を目標としていたはずなのに、いつの間にか、「しゃべくり漫談」を目指していた。
後戻りができない。
方向性にふと迷いが生じたが、しょうがなかった。
登壇は明日。
覚悟を決めて、やるしかなかった。
登壇当日
翌朝。登壇当日。
朝4時に起き、立ち稽古を再開する。
稽古を何度も繰り返したお陰で、シナリオも動きも、完全に頭に入り、覚えきっていた。
あとは、本番に頭が真っ白にならないか、ということだけであった。
不安だった。
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もし舞台上で、全ての話が吹き飛んだら・・・
棒立ちで言葉が出て来なかったら・・・
恐ろしいイメージばかりが思い起こされ、私を恐怖で震わせた。
メイクに全くの自信がないため、出張メイクさんを依頼し、ナチュラルメイクを施してもらう。
登壇の服は、現場の感じを出すために、いつも保育園で着ている服を着た。
準備は整った。
私は会場のZepp福岡に向かった。
雨の中、おじいさんを助けるというハプニングがあったが、長すぎるので、別稿に譲ろう。
会場入り、そしてリハーサル
kintone hive 2022 fukuokaの舞台となるZeep福岡に到着した。
会場のレイアウトは完全にkintone hive 仕様に仕上がっていた。
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門外漢である自分自身でさえ、気分をことさらに高揚させる企業イベント。
リアル会場の凄まじい熱量を、会場全体にひしひしと感じた。
会場の至る所で徹底的な感染症対策が施され、コロナ禍でのイベント開催はこうするのだ、という登壇者や来場者への安心・安全を打ち出す企業姿勢が現れていると感じた。
登壇直前、舞台上で、本番さながらの事前リハーサルが行われた。
トップバッターだったため、前の人のやり方を見本として見ることが出来ず、戸惑いもあったが、何となく流れをつかむことができた。
モニターを見て、スライドのタイミングを調整する。
緊張したが、覚えてきたシナリオ通りに話すことができた。
私の中では、話せるかどうかより、制限時間内に収まるのか、全てのシナリオの内容をしゃべりきれるか、ということが心配だった。
そして本番
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トップバッターの登壇ながら、思ったよりも、緊張せず、意識もフラットで臨んだ。
驚いたことに、舞台上でしゃべり始めると、頭上に、文字の書かれたテロップが浮かび上がるイメージが見えたのである。
覚えたものをしゃべるというより、頭の上のイメージとして浮かび上がるテロップを読み上げるだけだった。
大丈夫だ。頭の中が真っ白にならない。
これなら、いける。自信が出てくる。
一気に最後までしゃべり続ける。
身振り、手振り、全部、シナリオ通りに演じることができた。
ただ、アドリブで言葉を足した時に、言葉を噛んでしまったのが痛恨の極みであった。
最後に深々と頭を下げたとき、登壇者にしか見えないカウントダウンタイマーのデジタル文字盤は、残り1分弱を示していた。
間に合った。
安堵する。
少々、早口過ぎたか・・・・・・と一抹の不安がよぎったが、気にしないことにした。
時既に遅し。
MCとの質疑応答も、無事に終わり、登壇終了。
Zepp福岡での稀有の登壇体験は、こうして終わったのである。
その後、他の方のプレゼンも拝見し、素晴らしい内容に圧倒されていた。
また、参考になりそうな有意義な事例が数多く紹介された。
様々な業種の方と名刺交換し、情報交換することができた。
保育現場に居たら絶対に得られない、本当に貴重な経験だった。
後日
後日、サイボウズさんから、動画と写真をデータでいただいた。
恥ずかしかったが、自分が登壇する動画を初めて見た。
「思ったよりも、ちゃんと、よくしゃべっているね!」
普段の自分が、そのままに、大舞台で、堂々としゃべっていた。
それにしても、さすがに、もう少し良い服を着ておくんだった!
後悔先に立たず。
嘘偽りのない、誇張も無い。リアルな等身大の自分。
仕方ない、これも人生なのである。
プレゼンは事前準備が一番
プレゼンの常識を、改めて身に染みて感じる。
特に、しゃべる内容を書き起こしたシナリオの重要性は痛感した。
最後まで諦めない
年度末の忙しい中で、全力投球した自分を褒めてやりたい。
時間が無い中で、最後まで諦めずに準備したこと。
登壇前日にシナリオをちゃんと書き上げたこと。
飛行機や移動の間もシナリオ暗記に集中したこと。
時間を惜しんで立ち稽古を何度も繰り返したこと。
自分の努力の全てが結実した登壇だった。
私の中ではやるべきことをやりきった充実感があった。
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今後
Zepp福岡の大舞台での稀有の成功体験は、私に強烈な自信を与えてくれた。
機会があれば、もっと上手に登壇したい、演じたい。
欲が出る。
演じるなら、独り芝居でもいい。
それなら、独り芝居用の劇脚本でも書いてみたい。
——芝居なら、何を演じよう。
気付いたら、「しゃべくり漫談風の独り芝居」の脚本を書くことを前提に色々と考えていた。
kintone hive 2022 fukuoka 登壇を終えて、私は「ジョブズ風」を目指していたことを既に忘れかけていた。
それどころか、「しゃべくり漫談風の独り芝居」をやりたいという、漫談芝居への興味が慧眼するという、想像の斜め上を行く結果となった。
編集後記
偶然にも、保育園のお昼寝時間帯に私が登壇したため、私の登壇のライブ配信を、先生方が見ることができたのは、本当にありがたかった。
感染症対策があちこちに徹底的に施されたイベントで、安心して登壇出来たことは、特に感謝を申し上げたい。
往復に際して感染対策に留意し、渡航後PCR検査も陰性だった。
全ての方のご尽力に心から感謝いたします。
最後に
興味を持たれた方、次回の登壇募集も始まっています。
kintone hive 2023 登壇者 事前エントリー受付中!
稀有の体験を貴方もぜひ!
この記事が、今後、登壇を考えている方への何かの参考になれば幸いです。
・・・本文ここまで・・・
下記は、kintone hive 2022 fukuokaに関する記事です。
ジョイゾーさんの福岡レポート。
キンスキ松井さんの記事。
アスキーさんの記事。