通貨を使わない生活
円安が進行している。食品の値上げも相次いでいる。コンビニでパンでも買おうとすれば、気づけば200円近い値札がつく。
ハイパー・インフレーションへの備えについて先日簡潔に綴ったが、今日はまたその続きを考えたい。
「救命胴衣」としての「外貨準備」を推奨したけれど、これはあくまでも最低限度の備えにすぎず、救命胴衣をしているからといって海上に放り出されても「ふつうの暮らし」を保てるわけではない。カタストロフから一命を取りとめたあとには、いったいどんな生活が待っているのか。
それは通貨が機能しない世界である。
極端にいえば、自給自足と物々交換だ。
今からできる備えについて、一つの思考実験としてシミュレートしてみたい。
まずは、家を持つこと。
月々の家賃をオフにするための前提である。
住宅ローンを変動金利で組むと金利が高騰して返済困難になりかねないので、必ず固定金利で組む。あるいは、ローンを組まずに買える価格帯の(地方にある)築古戸建を探す。今は値ごろな中古住宅が山のようにある。
家は、将来的にもインフラが廃れないエリア(拠点病院など主要施設の近辺)で、なるべく水害ハザードマップに支障がない場所を探し、日当たりのよい庭付き戸建(できれば平屋)を買う。
平屋が好ましい理由は、たとえ築古で耐震性が低い家であっても、地震時に二階の荷重によって押し潰されるリスクを軽減できるためだ。
次に、家屋の断熱改修を行う。
二重窓と天井断熱は必須だ(床断熱もできればなおよい)。今ならば助成金も充実している。
屋根には太陽光パネルを載せる。これで電気代の高騰とは無縁のまま家の中の電化製品を使える。さらに電気自動車を使用すれば、ガソリン代の高騰も無縁になる。
そして家庭菜園で、有機野菜を育てる。
生ごみはコンポストで肥料に変えれば、食糧価格や肥料価格の高騰と無縁になる。足りない野菜は近所で物々交換をする。
文化的な生活のために、文字通りカルチャー要素が欠かせない。人はパンのみで生きているのではない。
文化施設(図書館や劇場や美術館)があれば素晴らしいが、家の中でも音楽や映画や読書などにアクセスできる環境を用意しておけるとよい。
もちろんこれで十分なわけではない。
医療費はかかるし、水道費も、服飾費もかかる。食事が自家栽培と物々交換だけで賄えるとも思っていない。物資は闇市で調達する羽目になるかもしれない。
さらに、経費削減で公共サービスが軒並み有料化することも想定すべきで、ごみ回収も公衆トイレも除雪車も実費がかかるようになる。特に重くのしかかるのは医療費で、高騰する上に患者負担割合も増えているはずだ。
その分は、備蓄した外貨を取り崩しながら凌ぐほかないのだろう。
これはあえてエクストリームケースを想定した一案ではあるものの、なにも「危機対応」でなくとも、生活の守り固めとして検討に値するライフスタイルなのかもしれない。
普段からお金を使わない生活を実装しておけば、いざ通貨が暴落しても慌てずに済む。(もっとも、自分は上記のほとんどができていないので、経済危機に対する生活防衛はきわめて脆弱であることが露見したけれど)
しかし、こうして書き記しながら思ったのは、本質的に問われているのは、通貨を失ったとき、われわれは何を守りたいのか、ということなのだろう。
これについては、また後日考えてみたいと思う。