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15時の手紙

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ささやかな昨日のできごと。
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#映画

マイフェイバリット・フィルムズ・オブ・2023

今年は映画館で、6本の映画を観た。 どの映画もとても良かったので、備忘録として一言感想とともに順位づけしてみた。 数十年後には、是枝裕和と宮崎駿の新作を同時に映画館で観られたなんてものすごい当たり年だった、と自分自身で回顧するかもしれない。 1位『怪物』(是枝裕和監督) 群像劇と伏線回収と人間洞察がピタリと嵌まり、鑑賞後も引きずって考えさせられる作品に出会えて、今年はもうこの一本で十分と思えてしまった。 鑑賞後にたまたま撮影地の上諏訪に立ち寄る機会があり、聖地巡礼もできた

お金がない楽しさの先へ。映画『PERFECT DAYS』によせて

「お金がない」ことは選べずとも「楽しさ」は選べる、と前回に書いたあと、その続きを考えさせるような映画に、年の瀬になって出会えた。 役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』。 (以下、映画の内容に触れますが、さほどネタバレはありません) 築60年超えの木造アパートで暮らす独居中年の、何も起きない日常をじっくり丁寧に描いている。 夜明けとともに起床し、敷布団をたたみ、植木鉢に水をやり、歯を磨き、髭を剃り、身支度を整え、トイレ清掃の仕事に赴く。玄関を

映画は、光を浴びる時間

10年前に、自宅の一室にシアターを設けた。 壁にスクリーンを提げ、本棚にプロジェクターを据え、スピーカーから音を出す。あとはDVDプレイヤーやインターネットを繋ぎ、横たわれるソファを置けば完成だ。 初めて映像がスクリーンに投射されたときには、ちょっとした感興を覚えた。テレビ画面とは比較にならないサイズ感、光が部屋を横切る物理的な手ざわり、ズンと胸に響くスピーカーの重低音。これはもう「れっきとした映画館」だった。 初期費用として数十万円を投下したけれど、最初の数年で1000本